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海外競馬情報
2009年01月23日  - No.2 - 5

賭事市場開放に船出するロスチャイルド会長の舵取り(フランス 後編)【その他】


 本紙は昨日、エドゥアール・ド・ロスチャイルド(Édouard de Rothschild)会長と会見し、フランスギャロの内部状況、PMUの将来、競馬界の他の指導者たちとの関係について同氏の見解を聴取した。本日は、競馬関係者にとって非常に重要な3つの課題について同会長の見解を問う。

Q (パリテュルフ紙):  パリ地区と地方地区との間の収入源の配分について、バランスを取るのに現在どのような取り組みをされていますか?この夏にアンドレ・ファーブル(Andre Fabre)調教師は自身の厩舎の方針転換を正当化するためにパリ地区の調教の不振に言及したのですが、この意見に賛成ですか?
 
A (ロスチャイルド会長):  パリ地区が地方地区と対立しているという議論はありえません。ナンセンスだし、対立があれば競馬制度に大きな被害をもたらすでしょう。
 ジャン=リュック・ラガルデール(Jean-Luc Lagardere)氏が主導した地方分散化の方針は、顕著な成果を生みました。具体的には、(1) フランス各地に質の高い調教拠点が生まれ、調教センターが著しく発展して、開催日数が増加しましたし、(2) PMUの年間売り上げは過去15年間に50億ユーロ(約6500億円)から90億ユーロ(約1兆1700億円)に増加しました。

 地方分散化の実施から15年経った現在、それを総合的に評価し、教訓を導き出すべき時期に来ています。私は今後数ヵ月にわたってこれに優先的に取り組むつもりです。当然のことですが、地方連合会は各分野の競馬関係者とともにフランスギャロの会員であり、また、その代表者はフランスギャロの運営委員会やその下部組織である平地競走小委員会、障害競走小委員会、地方小委員会のメンバーになっています。そこで地方分散化の評価について議論をお願いするつもりです。しかし私はこれらの会合のほかにも、自らイニシャチブを取って非公式の会合を開き、競馬制度のヴィジョンという本質的な問題について意見交換する努力を惜しまないつもりです。

 地方分散化について、後戻りするのは論外です。しかし、この戦略が15年間有効であったとしても、永続的なものと言えるでしょうか?何事にせよ物事に因われてはいけないのです。既存の仕組みを堅く守って変えないような保守主義は排するべきです。問題を再び取り上げて検討したり、これまでの経験や立場を新たな視点から見直してみることは、挑戦というよりむしろ必要なことなのです。聖域を設けてはいけません。
 
 
Q:  今後数年にわたって、どのような方針を採るお考えですか?2009年の賞金が凍結ないしそれに近い状態になることを想定した場合、どの種類の競走を優先的に援助すべきだとお考えですか?
 
A:  フランス競馬の賞金体系が、賞金の増減にかかわらず、競走馬の出走意欲を全般的にさらに刺激するようなものとなることを望んでいます。フランスギャロには、現状維持的でなく、出走意欲が湧くような競馬番組を編成する義務があります。一部の調教師や競走馬を優遇し他を差別することは論外です。
 変革は慎重に行うべきです。過激な変革はいけません。競馬番組の変革を行う場合、それが生産に対して悪影響を与えないよう留意すべきです。
 
 
Q:  地方の競馬場の閉鎖に関しては、実のところ前向きなのですか?そうであれば、どれぐらいの競馬場が地図から消されることになりますか?これらの競馬場は競馬システムに何の影響も及ぼさない存在なのに、何が問題視されているのですか?“零細”競馬場は平地競走と繋駕競走を混合で施行しています。この問題に関して、繋駕競走の指導者たちも同じ意見ですか?
 
A:  フランスには250も競馬場があります。これは大変な数です。輸送手段が今ほど発達していない頃には長きにわたり、これらの競馬場は地方の競走馬に近傍で出走する機会を与えてきました。
 現在、競馬場の分布を見直すべき時期に来ています。安全性が確保されていない場所で競馬を続けることは認めるべきではありません。専門家不在で人の命を危険に晒し続けている、刑事上の違反とも言える競馬場の運営をこれ以上続けることができるでしょうか?検討すべき機会です。

 安全が最も重要です。フランスの競馬場の分布見直しを、安全基準を満たすことを基本として、慎重かつ果断に進めていきます。他方、競馬場の存在には“国土整備”の側面があることを常に念頭において、維持の可否を判断すべきであり、競馬場の数を減らすことがフランスにおける合理的な国土利用と矛盾してはならないのです。以上の考え方に基づき検討し、維持すべき競馬場を明らかにすることは、賭事市場開放の議論において競馬界の立場を強くし、フランスのパリミューチュエル賭事と競馬界への利益還元を擁護することにつながります。私は今後数ヵ月で、競馬場分布の見直し作業を行うつもりです。これはフランス競馬の信頼性とイメージに関わることです。この作業の実施にあたっては透明性を確保します。現時点では、私は全く先入観を持っておらず、まして確定した方針や、閉鎖する競馬場の目標数は持っていません。私たちは競馬場の閉場の可否を判定する課題に責任をもって取り組みます。
 
 
Q:  パリ市と締結したオートゥイユ競馬場とロンシャン競馬場の賃貸借契約は、フランスギャロにとって有利な取引でしたか?ロンシャン競馬場の改築計画には、発表された4000万ユーロ(約64億円)よりも高い経費が掛かるように思えますが、実際のところどうなのですか?本件について今後どのようなことを予定していますか?
 
A:  本件については、財政的なことが問題なのではなく、当初はオートゥイユ競馬場の閉鎖が問題であったことお忘れですか?ロスチャイルドは障害競走に無関心だと言われていますが、これがそうではない証拠です。
 ロンシャン競馬場の改築については、決定の段階ではなく、研究の段階にあります。おそらく2009年春までに計画案を作成し、その後に投資をするか否か決定されるまでには2年は掛かるでしょう。ロンシャン競馬場の改築について政府の許可を得るためには、微妙な問題もあり、これぐらいの時間がかかるのは止むを得ないでしょう。
 だから、決定を下すのはおそらく2011年春になるでしょう。計画や実行の有無はその時になってみないとわからないでしょう。

 私はいかなる犠牲を払ってもロンシャン競馬場を新しくすべきだなどとは思っていませんし、ロンシャンには象徴性を持たせたいです。賭事市場開放という新しい環境において、それが財源の最高の使い方であるかどうかをよく検討すべきです。ロンシャンはたしかにフランス競馬のショーウィンドーです。課題に取り掛かる方法はいくつかありますし、いくつかのコースについて取り掛かろうと思っています。賭事市場開放は現実のものとなるでしょうし、新しい環境を評価できるようになるでしょう。私の気持ちは、2011年の多事多端な春に向いています。ロンシャンについては、私は実際的、近代的、野心的であるだけでなく理性的な計画を望んでいます。

By Francois Hallope and Patrick Blain
(1ユーロ=約130円)

[Paris Turf 2008年11月23日「《Le programme doit etre incitatif et non alimentaire》」]


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