2011年に総賞金300万ポンドのチャンピオンズデーを開催(イギリス)【開催・運営】
平地競走シーズン閉幕を最高の競馬開催で飾るために4年間練られていた構想が、英国競馬史上最高額賞金の日程を設けることで結実した。この結果、英国は凱旋門賞およびブリーダーズカップと張り合う呼び物を手に入れることになる。
2011年10月15日にアスコット競馬場で初めて施行される予定の英国チャンピオンズデー(British Champions Day)においては、300万ポンド(約4億2,000万円)以上の賞金総額が提供される。目玉となるチャンピオンSおよびクイーンエリザベス2世Sに は、それぞれ130万ポンド(約1億8,200万円)と100万ポンド(約1億4,000万円)の総賞金が予定されている。
このニュースは、発表が大幅に遅れた2011年競馬開催日程において確認された。2011年の開催日数は1,480日で、より徹底した削減が各方面から要求されていたにも拘わらず2010年の開催日数から23日だけの減少となっている。
アスコット競馬場とニューマーケット競馬場は、チャンピオンズデーのプログラムの改革を可能にするために、日程表において2つの変更を行うことに合意し た。そして、当初この計画の実現を頓挫させようとしていたフランスの競馬統轄機関およびヨーロッパ・パターン競走委員会(European Pattern Committee: EPC)も9月23日、チャンピオンズデーの施行を承認した。
2011年の2000ギニー競走と1000ギニー競走は、チャンピオンズデーにクライマックスを迎えるスプリント、マイル、中距離、牝馬、長距離の5分野、7競走からなるシリーズ競走の出発点となる。
アスコット競馬場が3歳馬と古馬を対象とした最高級のレースを施行する一方で、ニューマーケット競馬場では、チャンピオンズデーの1週間前の10月8日 に、デューハーストSとミドルパークSを目玉とする“フューチャーチャンピオンズデー”と称される開催が行われ、新たな有力馬が出走するだろう。さらに ニューマーケット競馬場のケンブリッジシャーデーは、2011年から1週間繰り上げられて9月24日に開催され、その空いた日はアスコット競馬場が埋める 形でレースを施行する。
発表では、今回のチャンピオンズデー開催は、英国の平地競走プログラムに関する最大の見直しであり、このことは、競馬変革プロジェクト(Racing For Change: RFC)もより幅広い観客を競馬に集めるために不可欠と考えていた、と結論付けられている。
チャンピオンズデー開催は、凱旋門賞との間に3週間の間隔をあけるよう主張したフランスギャロ(France Galop)からの干渉をどうにか切り抜けた。英国が計画をそのまま推し進める意志を明らかにしたため、9月23日、フランスギャロはチャンピオンズデー を支持する他のEPCメンバー国と同調することに落ち着いた。
英国チャンピオンズシリーズ(British Champions Series)のCEOに指名された、RFCのプレミアリゼーション(プレミア開催でメリハリを付けること)構想のアドバイザーであるカール・オリ バー(Karl Oliver)氏は、「英国競馬は世界一ですが、私たちは大衆からの注目を獲得するため新しく大きな土台を競馬に与える必要があります」と述べた。
同氏は次のように続けた。「英国の史上最高額賞金を提供するチャンピオンズデーは、超一流の英国馬と海外馬を世界一の競馬場に惹きつけるチャンスとなります。それは、英国競馬にふさわしい秋のクライマックスとなり得ます」。
「また、より幅の広い観客を競馬に参加させるために、シリーズ構成を採用することで平地競走シーズン全体を通じて最良のレースを際立たせることができます」。
チャンピオンズシリーズの開催競馬場で交わされている地上波テレビ放映の契約は、チャンピオンズデーには適用されないが、アスコット競馬場の昔からの放 映パートナーであるBBCおよびチャンネル4との間で予備的な議論はすでに行われており、いずれのテレビ局も興味を示している。またスポンサーシップも模 索されている。
伝統主義者は、1877年から施行されているチャンピオンSのような歴史的なレースが、長年の開催地から、より多くの入場者を収容することができロンド ンに近いアスコット競馬場に移ることに憤慨している。しかし、ニューマーケット競馬場の経営担当理事であるスティーブン・ウォリス(Stephen Wallis)氏は、同競馬場もフィリーズマイルとロイヤルロッジSの両方を手に入れたことでいくつかの利益を得たと確信している。
同氏は、「閉幕開催がアスコットで行われるべきであると競馬産業が決定した以上、私たちは競馬産業を助けるために、またニューマーケットが敗者となった り弱体化したりすることのないよう、あらゆることをしなければならないと考えており、まさにそれを遂行したと思います」と語った。
そして次のように続けた。「私たちがチャンピオンズデーを手放すかどうかについて様々な角度から議論を行いました。ニューマーケットで開催されるべきで あると言う人が非常に多くいることは分かっており、私たちは彼らがなぜそう述べるのか理解しています。しかし、英国チャンピオンズデーの目標が何である か、またそのシリーズはどのようなものであるかを示したことで、私たちは、開催日程の変更の実現に貢献でき、また人々が畏れたほどの損害はニューマーケッ トに与えなかっただろうと感じています」。
「私たちニューマーケットは、依然として非常に強力な競馬番組を有しています。シリーズが開始されるのはニューマーケットであり、ステップレースが5つ あります。また、英国で施行される2歳馬のG1競走5レースのうち4レースがニューマーケットで開催され、そのうちロックフェルSとロイヤルロッジSは、 最高峰の2歳馬重賞です」。
By Jon Lees
2011年競馬開催日程は、プレミア開催を重視した日程
BHA(英国競馬統轄機構)のCEOニック・カワード(Nic Coward)氏は9月23日、2011年競馬開催日程を発表する機会を捉えて、賦課金収入の展望において明るい雲をさがし出そうと努めた。
そして次のように語った。「開催日程を作成するに当たって、私たちは、競馬場の利益と地域のコミュニティーに対する重要性、そしてあらゆる抜け穴を利用する賭事業者により減少を余儀なくされている現在の賦課金収入について、特に念入りに検討を行いました」。
「私たちは同時に、競馬場と競馬関係者が持続可能な将来を見出せるよう公正な収入を競馬界に与える2011年4月からの賦課金計画を、今後数ヵ月の間に競馬界は目の当たりにできると確信しています」。
「競馬界は、現行の賦課金制度を通じて得られるべき資金を逸しています」。
「もし私たちが、重要な顧客、つまり競馬場来場者、賭事客に対して相応しい商品を提供するとともに、競馬界の人々が競馬を軌道に乗せるための努力に対して公正な収入を得られるようにできるのであれば、賦課金制度の欠陥の問題に本気で取り組まなければなりません」。
カワード氏は次のように付け足した。「私たちは開催日程、競馬番組および資金調達へのアプローチを変更しました」。
「私たちは、開催日程とレースの差別化を図るという点で大きく前進しました。英国チャンピオンズシリーズおよび英国チャンピオンズデーと同様に、私たちは国内外から大きな興味を呼ぶフェスティバル開催に加えて、週末におけるプレミア開催を呼び物とするでしょう」。
カワード氏は、BHAは開催日程への新しいアプローチを採用するために、競馬産業に挑んだと語った。
そして次のように付言した。「2011年は、資金援助を受ける開催日がここ数年で最も少ないものとなるでしょう。私たちは新しいプロセスを先導し、このことによって、競馬関係者と競馬場が初めて交渉し、開催日程と賞金に関して合意に至りました」。
ホースメングループ(Horsemen's Group)は、2011年の追加の開催日程に関連する賞金契約を結んだ競馬場と団体の名前を明らかにした。そして結果的には、規制と公正確保のための競 馬賭事賦課公社(Levy Board)からの助成金が受け取れるBHA主催の日程枠に対して、200以上の申請が寄せられた。
合計129の開催日程が契約可能となり、そのうち123の申請は受け入れられた。
ホースメングループは、ジョッキークラブ競馬場社(Jockey Club Racecourses)、アリーナレジャー社(Arena Leisure)およびノーザンレーシング社(Northern Racing)と契約を締結し、また同時にバンガー、カートメル、チェスター、フォスラス、レスター、ラドロウ、マッセルバーグ、パース、ソールズベ リー、ストラットフォード、トーントンおよびウェザビーのような独立した競馬場とも契約を交わした。
9月24日の声明によれば、300万ポンド(約4億2,000万円)を超える追加的な賞金が創出された。
By Howard Wright
(1ポンド=約140円)
[Racing Post 2010年9月24日「£3M Champions Day」]