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海外競馬情報
2011年06月10日  - No.11 - 1

鞭使用ルールの再検討でルール変更の可能性(イギリス)【開催・運営】


 BHA(英国競馬統轄機構)は現在鞭使用ルールに関する幅広い検討を実施しているが、その中には、4月18日付のレーシングポスト紙上でデヴィッド・アシュフォース(David Ashforth)氏が提案したように、レースにおける鞭使用を安全性確保と進路修正のみに限ることとするかどうかが含まれる予定である。

 BHAの競馬開催運営・規制担当理事であるジェイミー・スティア(Jamie Stier)氏によれば、騎手、調教師、そして王立動物虐待防止協会(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals: RSPCA)が参加し、競馬の鞭使用に関する“理に適ってバランスのとれた方針”を確立するため幅広い再検討が行われている。

 2頭の馬が予後不良となり、優勝馬がレース後に水と酸素が必要となるほどとなった今年のグランドナショナルに関する最近のマスコミ報道があり、さらに、バラブリグス(Ballabriggs)に騎乗したジェイソン・マグワイア(Jason Maguire)騎手が鞭の過剰使用で受けた5日間の騎乗停止処分がクローズアップされることとなり、鞭の役割を制限すべきとの要求が再燃した。

 アシュフォース氏は次のように述べた。「競馬界はより広範な大衆を惹きつけたいと考えているが、大衆は馬が鞭打たれるのを目の当たりにすることを望んでいません。鞭打ちは彼らの競馬に対する魅力を減少させ、次世代の潜在的な競馬ファンを競馬から遠ざけることとなるでしょう」。

 鞭の問題はBHAにおいて定期的に議論されているが、スティア氏は、詳細にわたる再検討においては競馬のイメージだけではなく競馬の良さを守るために、鞭使用をどのように規制すべきか、そして違反に対する罰則が十分に効果的かどうかを検討すると述べた。

 そして次のように語った。「私たちは現在さらにいくつかの観点からこの事柄の再検討に取り掛かっています。私たちは騎手の観点からも検討します。そのために、私たちは騎手についての統計分析を行うつもりです」。

「大部分の騎手はルールを順守し責任を持って鞭を使用しているということを最初に言っておかなければなりません。しかし、ルールを順守していないと思われる騎手がいないということではありません。結局は統計分析がそうした騎手を浮き彫りさせることになります」。

「私たちは必要な抑止効果が働いているかを見極めるために、ルールの効力および罰則も検討します」。

 そして次のように続けた。「私たちはまた、より重要な問題という訳ではありませんが、競馬において鞭使用がどのように規制されることが競馬のためになるのかというより広い問題についても検討するつもりです。私たちは競馬産業のさまざまな部門からの意見と助言を求めていきます。いくつかの部門とはすでに話合いを済ませましたが、プロセスの進行とともにより広範囲にわたる団体と話合いを続けていきます。最終的には、適切な結論が導き出されることを確信しています。もし変更が必要となれば、ルールは変更されることになります」。

 またスティア氏は、「鞭使用を進路修正と安全性確保だけに限定することは、私たちが行った多くの提案のうちの1つです。たぶん私たちはさまざまな力を借りて競馬産業にふさわしいルールを作り出すことができるでしょう。私たちは保守的ではありません。系統立てた方法で検討していく必要があります」と述べた。

 そして次のように付言した。「私たちは現行の罰則だけについて検討している訳ではありません。問題の原因を特定できるか、ルールの範囲内でどこまで騎手の立場にたてるかを見極めたいと思います。また、より効果的な罰則があり得るかどうかについても検討しています。この場合の効果的な罰則とは、必ずしもより重い罰則ということではありません」。

 今回のグランドナショナルの事件を受けて、スティア氏はRSPCAの馬担当コンサルタントであるデヴィッド・マー(David Muir)氏と話し合いを持った。マー氏は、ルールの範囲であれば安全性と進路修正と馬への刺激のために鞭を使用することを認めているが、騎手による鞭使用の違反の多さを懸念している。

 マー氏は、「違反件数は、ルールが全然機能していないことを証明しています。鞭を使用する上で順守すべきルールを尊重しているようには見えない騎手がいます」と語った。

 そして次のように続けた。「もし競馬界以外の誰かが馬に16回鞭を入れれば、逮捕されおそらく起訴されるでしょう。競馬における鞭使用の基準は非常に厳しいものである必要があります」。

「私たちはBHAに対して、より効果的な防止策がとれるかどうかを模索するための包括的な検討を依頼しました」。

 かつて障害騎手として活躍し現在はチャンネル4の評論家であるジョン・フランコム(John Francome)氏は、長年にわたり鞭使用法の変革を支持してきた。

 そして次のように語った。「私は鞭を使用しないほうがよりエキサイティングであると述べてきました。馬が著しくハミ受けを嫌ったり、コースから逸走しようとしたり、コーナーで止まろうとする場合のためだけに、騎手たちは鞭を持つことができるのです」。

「私は、現役の多くの騎手はルール変更が行われることを半ば予期していると考えています。鞭を使わなければ、騎乗により集中できるでしょう」。

「より実力のある騎手が、多くの勝馬に騎乗することになるでしょう。鞭を使って騎乗することは、鞭なしよりも10倍簡単です」。

「3ヵ月以内に人々は、過去を振り返り、鞭使用法についてこの20年間何をしてきたのかときっと尋ねることになると思います」。

By Jon Lees

[Racing Post 2011年4月19日「Whip use review could lead to change in rules」]
 


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