トレヴ、シリュスデゼーグルに一敗を喫す(フランス)【その他】
4月27日のガネー賞(G1)における緊張感あふれる決闘ののち、2013年凱旋門賞(G1)を制した牝馬トレヴ(Treve)がシリュスデゼーグル(Cirrus Des Aigles)に敗れ無敗記録を失うことになった。しかし勝者と敗者のいずれの陣営も世界最高の叩き合いであったと語気を強めた。
英国の競馬ファンは今や、2頭のフランス馬が英仏海峡を越えて遠征し、ロイヤルアスコット開催で再び対戦することを楽しみにしている。
冷静なフランキー・デットーリ(Frankie Dettori)騎手は、トレヴが計画しているプリンスオブウェールズS(G1・6月18日)への出走について、次のように語った。「トレヴは英国でより良い馬場状態で走ることができるでしょうから、最高の結果を出せるでしょう。今回もたった短クビ差で敗れたわけですから」。
コリーヌ・バランド-バルブ(Corine Barande-Barbe)調教師は、ブックメーカーがトレヴをオッズ2-5(1.4倍)の一番人気に推していたにもかかわらず、ガネー賞では2頭が素晴らしい決戦を繰り広げると主張していた。そして、8歳の管理馬シリュスデゼーグルが今回手にした地位について自信を感じ、「“シリュス”は驚くべき馬です。少なくとも今日は世界一だと考えます」と語った。
トレヴ陣営が次の出走レースを明確にしている一方で、“シリュス”陣営は6月7日にエプソム競馬場で施行されるコロネーションカップ(G1・2410m)に気持ちが傾きつつあるが、“シリュス”がそのレースに出走しなければその1週間半後のプリンスオブウェールズSでトレヴと対戦する可能性がある。
バランド-バルブ調教師は、「“シリュス”の次走はコロネーションカップになるかもしれません。そのレースを走ってからロイヤルアスコット開催のプリンスオブウェールズSで走ることはできませんが、夏には7月26日のキングジョージ(G1・2400m)に出走できます。今はただ、このガネー賞の勝利を謳歌したいと思います」と語った。
ブックメーカーのウィリアムヒル社(William Hill)では、トレヴはプリンスオブウェールズSでの単勝オッズは6-4(2.2倍)が付くことが予測されていたものの現時点では2-1(3倍)に落ち着いており、シリュスデゼーグルのオッズは7-2〜9-2(4.5倍〜5.5倍)まで下がっている。
2014年凱旋門賞の単勝オッズが7-2(4.5倍)、ラドブロークス社(Ladbrokes)では5-1(6倍)となったトレヴは無敵のオーラを失ったが、長い年月をかけて凡庸な馬からずっと高貴な馬に昇格した“戦うシリュス”のあだ名を持つ人気馬に敗れたことは、それほど大きな痛手とは言えない。
“シリュス”に騎乗したクリストフ・スミヨン(Christophe Soumillon)騎手は、トレヴのペースメーカーとして出走していたベルドクレシー(Belle De Crecy)を追わず、ジョシュアツリー(Joshua Tree)の後ろの3番手にとどまりうまく勝負した。デットーリ騎手は前半を最後方で待機しトレヴを完全に落ち着かせ、第4コーナーの真ん中あたりで“シリュス”をとらえに行った。
両馬は最後の2ハロン(400 m)でずっと競り合ったが、トレヴはそれまでの5戦と同じように加速することができなかった。
デットーリ騎手は、「誰もチャンピオン馬がこのように負かされるのを見たくありませんので、残念なことです。完璧なレース運びだったのですが、ただ馬場が重すぎました」と語った。
そして、「シリュスデゼーグルは調子が良く、より鍛錬を積んでいて、重馬場を得意としています。トレヴも進化し続けていますが、この馬場状態では末脚を発揮することができません。凱旋門賞は柔らかい馬場でしたが、今回は重馬場でした。しかし、勝馬も強かったことは間違いありません」と付け足した。
クリケット・ヘッド-マアレク(Chriquette Head-Maarek)調教師はデットーリ騎手と話してすぐに、アルシャカブレーシング社(Al Shaqab Racing)のアドバイザーの輪から外れて、トレヴの馬主であるジョアン殿下(Sheikh Joaan Al Thani)と電話で話した。
同調教師もデットーリ騎手と同様に、レース前の48時間にわたって25ミリの雨が降り、開催開始後も激しいにわか雨に少なくとも2回見舞われた馬場状態が大きな敗因であったと確信しており、次のように語った。
「トレヴは休養明けで、勝馬は今シーズンすでに2回重馬場で走っていました。このことが両者の走りの違いを生んだのでしょう」。
「おそらく次走はプリンスオブウェールズSです。トレヴの状態が良ければ、計画を変える理由はありません」。
今回のガネー賞が過酷であったことは、2頭の上がり400m〜200m地点のタイムが12秒43であったのに対し、上がり200mのタイムが13.62秒に減速したことに表れている。
ヘッド-マアレク調教師は次のように付け足した。「トレヴは一敗を喫しましたが、戦争に負けたわけではありません。正直すぎて、苦しいレースを強いられただけです」。
「シリュスデゼーグルは素晴らしい馬で、今シーズンすでに2戦していたことが功を奏しました。速い馬場ではトレヴが有利で、結果的にそのような馬場が絶対必要でした」。
ジェフ・スミス(Jeff Smith)氏が所有するノースキング(Norse King)は健闘し、トレヴに4馬身半差の3着となった。
シリュスデゼーグルの調教師が発した最後の言葉は次のとおりである。「新聞ではランキングがすべてだという論調でしたが、高齢馬がG1競走4勝目を決めるというのもなかなか格好良いものでしょう」。これはブランド-バルブ調教師の少しばかり辛辣な批評だ。
By Scott Burton
高齢馬が制した欧州G1競走
8歳のシリュスデゼーグルはガネー賞を優勝することで、1971年にヨーロッパ・パターン競走委員会(European Pattern Committee)が発足して以来、2000mのG1競走を制した最高齢馬となった。
しかし、欧州最高齢G1勝馬という名誉はいずれも10歳で快挙を成し遂げたヤヴァナズペース(Yavana’s Pace)とアルカザール(Alcazar)が共有する。ヤヴァナズペースは2002年にケルンで2400mのクレディスイスプレイベートバンキングポーカルSを制し、アルカザールは2005年にロンシャン競馬場で3100mのロワイヤルオーク賞を制した。
また、G1競走で年齢が障害にならないことを示した他の著名な例には、1000mのナンソープSを9歳で制したバアミアンパイレート(Bahamian Pirate)、1000mのアベイドロンシャン賞を制した8歳マイベストバレンタイン(My Best Valentine)と4000mのアスコットゴールドカップを制した8歳イエーツ(Yeats)がいる。
By Mark Storey
2014年ガネー賞の結果 | |||
単勝オッズ | 着差 | ||
1着 | シリュスデゼーグル | 33-10(4.3倍) | |
2着 | トレヴ | 2-5(1.4倍) | 短クビ |
3着 | ノースキング | 137-10(14.7倍) | 4馬身1/2 |
勝馬関係者 | |||
馬 主 | ジャン-クロード-アラン・デュプイ(Jean-Claude-Alain Dupouy)氏 | ||
調教師 | コリーヌ・バランド‐バルブ氏 | ||
騎 手 | クリストフ・スミヨン氏 | ||
厩務員 | ゾーエ・ガルグロー(Zoe Gargoulaud)氏 | ||
生産者 |
イヴォン・ルリムザン(Yvon Lelimouzin)氏 ブノワ・デシャン(Benoit Deschamps)氏 |
タイム分析 | |
スタート〜1000m | 1分10秒07 |
上がり1000m〜600m | 25秒32 |
上がり600m〜400m | 12秒69 |
上がり400m〜200m | 12秒43 |
上がり200m | 13秒62 |
レースタイム | 2分14秒13 |
[Racing Post 2014年4月28日「TREVE TRUMPED」]