伝説的な名馬シービスケットの銀メッキされた蹄から採取されたDNAサンプルにより、馬ゲノミクス研究所(Institute for Equine Genomics)の科学者たちは、同馬の競走能力を高めた遺伝子構造の特徴を突きとめることができるようになった。
この研究所のスティーヴン・タマリエロ(Steven Tammariello)所長とそのチームは、カリフォルニア州サラブレッド基金(California Thoroughbred Foundation)に展示されていたシービスケットの2つの蹄を、同馬の馬主チャールズ・ハワード(Charles Howard)氏の曾孫の許可を取って検査した。
タマリエロ所長はウェブサイト(theconversation.com)の記事において、こう述べている。「馬主のハワード氏はシービスケットの死後、蹄は外されて保管されていると語っていました。そのことが私の興味を引き付けました。なぜなら私のチームは以前、古代の骨検体からインタクトな状態のDNAを抽出するのに成功していたからです」。
「シービスケットの蹄にドリルで穴を開けたとき、そこから出てくる粉末はダークブラウンからホワイトに変わりました。つまり、そこにはまだ骨がありました」。
20世紀で最も有名な馬の1頭であるシービスケットは、1938年にピムリコ競馬場で三冠馬ウォーアドミラルとのマッチレースを制したことでよく知られている。
タマリエロ所長はこう続ける。「私たちはシービスケットにステイヤー(長距離馬)によく見られる遺伝子変異があることを発見しました。しかし興味深いのは、その根底にあったのはスプリンター(短距離馬)によく見られる微動遺伝子の変異だったことです」。
「このスタミナとスピードの珍しい組合せは、シービスケットの競走成績に反映されています。彼は約1000m〜2000mの距離で勝利を挙げているのです」。
タマリエロ所長とそのチームはシービスケットの研究を続けるつもりである。そして、1938年米国年度代表馬に輝いた同馬の身体能力や精神力についてより多くの情報を明らかにすることを望んでいる。2003年にはローラ・ヒレンブランド(Laura Hillenbrand)氏の著書をもとに同馬の立身出世を描いた映画『シービスケット』が公開され、アカデミー賞にノミネートされた。
タマリエロ所長はこう付言した。「私たちはシービスケットの遺伝子を調べ続けるつもりです。他の身体的な特徴や、攻撃性・好奇心・調教での集中力などの気質傾向のコントロールにつながる遺伝子について重点的に探りたいです」。
「おそらく、シービスケットにはそれらの行動につながる遺伝子に変異があったのだと思います。そしてそれらの遺伝子は、理想的とは言えない身体的特性にもかかわらず、何としても勝とうとする意欲を彼に与えたのでしょう」。
By Tom Ward
[Racing Post 2018年11月1日「DNA holds the key to understanding Seabiscuit's greatness」]