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2007年01月18日  - No.2 - 1

ニューヨーク州競馬の次期運営者が推薦される(アメリカ)[開催・運営]


 ニューヨーク 州政府の中立的な委員会はエクセルシオール競馬協会(ニューヨーク・ヤンキースの共同経営者とカジノ開発業者から構成されるグループ、Excelsior Racing Associates:以下エクセルシオール)を、今後20年間にわたる3競馬場(アケダクト、ベルモントパーク、サラトガ競馬場)の次期運営者に推薦した。

 今回の決定は、“競馬の将来に関する特別委員会(Ad Hoc Committee on the Future of Racing)”によるものであり拘束力はないが、エクセルシオールがニューヨーク競馬協会(New York Racing Association: NYRA)に優先して3競馬場の運営権を取得すべきであると州知事と州議会に提言している。NYRAは、特別委員会の評価システムにおいて大差をつけられ て3位となった。エンパイア競馬協会(Empire Racing Associates:エンパイア)は、共同経営者にニューヨーク州の馬主・調教師、チャーチル・ダウンズ社(Churchill Downs In.: CDI)およびマグナ・エンターテインメント社(Magna Entertainment Corp.: MEC)を含むが、エクセルシオールに続いて2位に評価された。

 11月21日にニューヨーク州サラトガスプリングス(Saratoga Springs)における終日にわたる会議の後、エクセルシオールは3競馬場の運営者に推薦された。エクセルシオールは、ニューヨーク・ヤンキースの共同 経営者スティーブ・スィンダル(Steve Swindal)氏およびカジノ開発業者リチャード・フィールズ(Richards Fields)氏を含む共同事業体である。ニューヨーク・ヤンキースの筆頭オーナー、ジョージ・スタインブレナー(George Steinbrenner)氏の義理の息子であるスィンダル氏は、エクセルシオールが推薦を受けたことは、「ニューヨーク競馬にとって新たな時代の幕開け である」と述べた。

 しかし、祝杯をあげるのは時期尚早と思われる。特別委員会を設置したニューヨーク州知事のジョージ・パターキ(George Pataki)氏が昨年12月31日に退任したことで、運営権者の最終決定プロセスはいっそう不確実な様相を呈している。同氏の後継者となるニューヨーク 州司法長官のエリオット・スピッツアー(Eliot Spitzer)氏が、特別委員会の評価結果を受け入れるか否か、あるいは評価プロセスをやり直すか否かが疑問だからである。

 スピッツアー氏は今年初め、入札評価のために定められた基準について疑問視した。競馬界にはパターキ氏が任期を終える前に最終決定が下されると予想する人は少ない。

 NYRAは1955年に創設されて以降、3競馬場の運営権を保有していた。NYRAの関係者は、2007年12月31日に現行の運営権が満了しても、NYRAは新たな運営権を取得して競馬場を管理すると力説していた。

 NYRAのチャールズ・ヘイワード(Charles Hayward)理事長は、「我々は運営権獲得のため引き続き活動します」と述べている。特別委員会の評価プロセスは公平であったかどうかを尋ねられた同氏は、それについては言及できないと答えた。

 ヘイワード氏は、NYRAが何故ほぼすべての評価カテゴリーで3位だったのか理解できないと述べた。また、パターキ氏と議会指導者によって任命された特 別委員会について、「今回の決定は、7人の委員が私の意見と異なる意見を持っていることを示しています」と語っている。

 州担当官は、NYRAの州法務当局との論争の数々や最近の破産保護申し立てで、NYRAに対して我慢が出来なくなっていた。

 エクセルシオールは、前払い金とし1億ドル(約115億円)をニューヨーク州に申し出たほか、ビデオゲーム機端末(VLT)の設置がベルモントパーク競 馬場に許可された場合に2億ドル(約230億円)および1年当たりの保証額として750万ドル(約8億6,250万円)を提示した。更にエクセルシオール は、競馬場改修を多々行うことと、競馬関連事業を非営利法人として運営し、カジノ事業を営利目的として行うことを申し出た。エンパイアは、競馬場全体を営 利企業として運営することを提案した。

 エンパイアの担当者は、競馬場の運営権取得に自信を示している一方で、エクセルシオールに多くの非難を浴びせている。エンパイアの名誉会長メリールー・ ホイットニー(Mary Lou Whitney)氏は、「入札委員会は、本当はカジノ事業に関心あり競馬運営経験のない企業よりも競馬産業が劣ると見なしたのです」と述べている。同氏 は、「今回の決定がニューヨーク競馬を破滅させる可能性があります」と付言している。

 同氏は、「申し上げにくいですが、私はエクセルシオールならばNYRAのほうがまだましだと思います」と述べている。

 特別委員会のメンバーのひとりは、エンパイアの共同経営者−主にCDIとMEC−がニューヨーク州以外でも競馬関連で多くの事業にかかわっていることに 深刻な懸念を表明している。特別委員会メンバーの民主党員で、州下院競馬委員会の委員長も務める州議会議員のゲーリ―・プリットロー(Gary Pretlow)氏は、「私は、ニューヨーク州の企業がニューヨーク州のために競馬場を運営してほしいと思いますし、1つの企業がアメリカのあらゆる主要 競馬場を支配することは不快に感じます。MECとCDIが関与すれば、このような事態になるでしょう」と述べている。同氏は、「エンパイアは多くの利害関 係の中にあり、その内ニューヨークの影響力は6%に満たないため、ニューヨーク競馬の利益よりも自分たちの利益を優先すると考えられます」と述べた。

 同氏は、現知事または次期知事が特別委員会が選定した以外の事業体を選ぶことは期待できないと言う。同氏はまた、2006年中に新たな競馬場運営者を最終決定するためには、州競馬法の変更に関して行うべきことが多すぎると述べている。

 特別委員会による評価は、アケダクト競馬場にVLTカジノを開設して競馬場を運営することと、ベルモントパーク競馬場にカジノを設置することという2つ の重要な項目に基づいて行われた。アケダクト競馬場VLTについては、エクセルシオールはエンパイアの93ポイント対して94.6ポイントを獲得した。 NYRAは、76.5ポイントの評価でエンパイアに負けた。ベルモント競馬場VLTについては、エクセルシオールはエンパイアの92.75ポイント対して 97ポイントを獲得した。NYRAは、76.5ポイントで3位であった。

 選定プロセスに関与した担当者によると、提示された金額および非営利・営利の事業モデルに加えて、エクセルシオールはさまざまなポストに充てるべき優秀 な人材の詳細なマネージメント計画も提示した。エクセルシオールはまた、従業員年金制度に対するNYRAの約5,000万ドル(約57億5,000万円) の負債を肩代わりすることを約束しており、また労働組合との紛争を避けるために可能な限り多くのNYRA従業員を継続雇用すると述べている。エクセルシ オールの担当者によると、エクセルシオールはさらに、競馬場施設の改修への1億ドル(約115億円)を超える資金提供を提案しており、これはほかの2者に 比較してはるかに多い金額である。

 アルバニー・ロー・スクール(Albany Law School)の競馬シンクタンク代表ベネット・リーブマン(Bennett Liebman)氏は、今回行われた拘束力のない推薦は、「3競馬場の運営権を巡ってエクセルシオールを優位な立場に立たせるのは確実ですが、これはとり わけエクセルシオールが特別委員会の議会側メンバーから極めて強力な支援を得ていると考えられるからです」と述べている。議会の支援に加えて、エクセルシ オールの共同経営者の1人、フィールズ(Fields)氏は、スピッツアー氏と緊密な政治的関係を持っている。

 エクセルシオールのその他の共同経営者には、ニューヨーク市の大手不動産開発業者ティッシュマン・スペイヤー・プロパティーズ(Tishman Speyer Properties)が含まれている。ニューヨーク州競馬・賭事委員会(New York State Racing and Wagering Board)の元会長で、上院多数党リーダーのジョセフ・ブルーノ(Joseph Bruno)氏の熱心な支持者であるジェリー・ビリンスキー(Jerry Bilinski)氏、競馬の殿堂入りをしている元騎手ジェリー・ベイリー(Jerry Bailey)氏および元ニューヨーク州共和党会長ウイリアム・パワーズ(William Powers)氏もエクセルシオールを支持している。

 エンパイアの広報担当ロバート・ベラフィオレ(Robert Bellafiore)氏は、エンパイア・グループは運営権を巡ってエクセルシオールと「互角に争っている」と述べている。同氏は、「我々は、競馬場運営 者の選定プロセスにおける本当の意思決定者、すなわち行政部と議会との折衝に集中します」と付言している。

 

By Tom Precious


〔The Blood-Horse 2006年12月2日「Excelsior Racing Associates Selected for New York Franchise」〕


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