ニューヨーク州は競馬場をオーバーホールか?(アメリカ)[開催・運営]
ニューヨーク州の当局者は、州の競馬場の大胆な改革(オーバーホール)を検討している。これは、おそらくアケダクト競馬場を閉鎖し、サラトガ競馬場の運営 権をニューヨーク競馬協会(New York Racing Association: NYRA)に与え、ベルモントパーク競馬場の運営権は別の団体に与えることを目指しているようだ。
この案は、州当局者がエリオット・スピッツアー(Eliot Spitzer)ニューヨーク州知事と検討中のものである。上記の3競馬場の運営権(NYRAが現在保持している)の入札で希望4団体からの提案を審査する過程で、この案が出てきたのだ。
この問題に通じている2人の当局者は匿名を条件に、「州政府は1〜2週間前からアケダクト競馬場、ベルモントパーク競馬場、サラトガ競馬場に関する現在 の入札プロセスを終了させる案を検討し始めました」と述べた。しかし、検討中のオーバーホールのために、州が入札をやり直すかどうかは定かでない。
当局者によると、新たな案を考える原動力となったのは、MGMミラージュ社(MGM Mirage)がアケダクト競馬場にスロットマシーン・カジノを開設する商談から最近撤退したことである。同社は数年前、NYRAとカジノ運営契約に調印 していたが、カジノ運営から撤退したことにより、当局者はNYRAが州南部のアケダクト競馬場とベルモント競馬場を運営し続けることに意味があるのかどう かを検討せざるをえなくなった。
当局者は、検討中の新たな構想は3つの主な計画を内容としていると述べている。
第1に、クイーンズ地区にある敷地面積192エーカー(約76.8ヘクタール)のアケダクト競馬場は、さまざまな目的の不動産開発計画に適しているの で、これを閉鎖して売却することである。消息筋は、同競馬場の売却益の一部でNYRAの多額の債務を一部返済できると考えている。
第2に、ベルモントパーク競馬場に冬季開催用の設備を施すこと。これにより、現在アケダクト競馬場が行っている冬季開催をベルモントパーク競馬場に移すことができる。再開発後のベルモントパーク競馬場の呼び物は、カジノとその他の娯楽施設になりそうである。
現在の入札の結果どの団体が落札するか定かでなく、しかもその団体が1競馬場だけの買収に興味を持つかどうかも定かではない。NYRAのほかに、3競馬 場の運営権の入札に参加したのは、エンパイア競馬協会(Empire Racing Associates)、エクセルシオール競馬協会(Excelsior Racing Associates)およびキャピタルプレイ(Capital Play)である。
しかし、当局者によると、ニューヨーク州はベルモントパーク競馬場の運営を引き受ける団体と随意契約を結んで運営権を付与することも検討している。
第3は、毎年夏に行われるサラトガ開催をNYRAに運営させることにより、ニューヨーク競馬にNYRAとその指導者をつなぎとめることである。ただし、これが3競馬場に関するNYRAの土地所有権問題が解決できるかどうかは定かではない。
サラトガ競馬場の運営のために、NYRAに他の企業とパートナーシップ関係を締結させることも検討されている。当局者は、この方法によってNYRAを批 判する者の懸念を鎮めることができると述べている。批判者は、NYRAの法律問題と現在の財務状況を考えると、NYRAはニューヨーク競馬界に存在し続け るべきでないと考えている。
ニューヨーク州の競馬産業のこのような競馬場のオーバーホール案をもとにして、ニューヨーク州議会が、2007年会期の終了する6月末までに問題を解決 することは困難だろう。ただし、それまでに問題が決着しない場合、競馬場運営権の問題を処理するために立法者が今年後半に再び会期を開くこともありうる。
競馬場運営問題が決着しない場合、州政府と州議会の当局者は12月31日に満了するNYRAの競馬場運営権をもう1年間延長することを排除していない。 その間に、競馬場運営権と州のサラブレッド産業の構造ならびに場外馬券発売公社やカジノ業界とサラブレッド産業との関係が議論される。州政府と州議会の当 局者は12月31日に満了するNYRAの競馬場運営権をもう1年間延長することを排除しないかもしれない。
By Tom Precious
〔bloodhorse.com 2007年5月23日 「New York Officials Considering Overhaul of Racetrack Industry」〕