外国馬評価の新方式(アメリカ)[その他]
6月13日のレースからデーリー・レーシング・フォーム(Daily Racing Form: DRF)紙は、外国馬のハンデのつけ方を容易にするために、“レーシング・ポスト・レーティングス(Racing Post Ratings: RPR)”を導入する予定である。
RPRはイギリスのレーシング・ポスト紙(Racing Post)が提供する独自の重要なハンデキャップ・ツールである。このほどDRFはタイムフォーム・レーティングス(Timeform Ratings)に替えてRPRを採用した。イギリス、アイルランド、フランス、ドイツ、イタリア、ドバイ、香港、日本、南アフリカ、オーストラリアでの 出走経験馬については、外国競走成績欄にRPRが使用される。RPRはDRFサイマルキャスト・ウィークリー誌(DRF Simulcast Weekly)の外国競走成績欄においても使用されるだろう。
ロンドンに本社を置くレーシング・ポスト紙は、1985年に設立されたイギリスの代表的な競馬新聞である。同紙のRPRを含む過去の競走成績掲載ページ は、イギリスとアイルランドのベッティングショップの壁に掲示されている。RPRは、レーシング・ポスト紙がヨーロッパで最も広く読まれる競馬紙となるの に一役買ったが、今後、DRF読者もこのレーティングを利用できるようになる。
RPRは、タイムフォーム・レーティングスと同一の基準によるものではなく、全般的に、RPRの方が数ポンド低い。またRPRはベイヤー・スピード・ フィギュアズ(Beyer Speed Figures)とも異なる。それはタイムフォーム・レーティングスのようにハンデキャップのレーティングである。
RPRは多くの要素で決定されるが、最も重要なのはレースの水準、出走馬の質、負担重量である。レースの優勝タイムも一応考慮されるが、これはレースの 水準をはかる一般的な指針として利用されるだけである。忘れてはならないのは、RPRはスピードの数値ではなく、ハンデキャップ・レーティングであるとい うことだ。
すなわちRPRは、ハンデキャップ競走での負担重量を示すことを目的としている。例えば、同じ年齢と性別限定のレースにおいてRPR 120の馬の斤量は、ハンデキャップ競走では117の馬よりも3ポンド多く負担することになるだろう。馬齢重量戦では、性別と年齢による減量が考慮され る。ハンデキャップ競走では、負担重量120ポンドの馬が128ポンドの馬を1馬身差で負かした場合通常、128ポンドの馬のRPRは126〜127に修 正される。
ここに掲載した、レーシング・ポスト紙の主席ハンデキャップ査定担当ポール・カーティス(Paul Curtis)氏が提供した表は、5レベルの競走それぞれの優れた勝馬の典型的なRPRの目安数値である。
もしある馬がこれらより高いレーティングを持つとすれば、その競走能力は傑出しているものと考えられる。最近の例として6月2日のエプソム・ダービー (Epsom Derby G1)に優勝しRPR 130が与えられたオーソライズド(Authorized)が挙げられる。これは2002年のダービー優勝馬ハイシャパラル(High Chaparral)のレーティングと同じであるが、過去10年間に2,400 mのエプソム・ダービーで優勝した大部分の他の馬よりはかなり高い数値である。
オーソライズドのエプソム・ダービーでの勝利に対して与えられたこの高いRPRは、同じく高いレーティングを獲得したハイシャパラルのように、より偉大な業績を上げていくことを期待されたことを意味している。
ハイシャパラルはエプソム・ダービー後、アイルランド・ダービー、アイルランド・チャンピオン・ステークスを勝ち、そしてブリーダーズ・カップ・ターフ に2連勝した。同じことがガリレオ(Galileo)についても言える。同馬はエプソム・ダービー優勝後、アイルランド・ダービー、キング・ジョージVI世 とクイーン・エリザベス・ダイヤモンド・ステークスを制覇した。エプソム・ダービー優勝後、アイルランド・ダービーと凱旋門賞に勝ったシンダー (Sinndar)もエプソム・ダービー優勝で高いRPRを獲得した馬である。
一方で、オース(Oath)やクリスキン(Kris Kin)やノースライト(North Light)などのダービーのパフォーマンスに対するレーティングは、上記のような期待を意味していなかった。実際にこれらの馬のどれもダービー優勝後に 勝鞍は無かった。同様に現役馬のサーパーシー(Sir Percy)の場合も、エプソム・ダービー優勝後3戦して勝鞍は無い。ハイライズ(High-Rise)はエプソム・ダービー優勝後9戦してたった1勝し たのみである。
オーソライズドと比べて、G1のフランス・ダービー(Prix du Jockey Club G1)勝馬、ローマン(Lawman)はたった118という低いRPRだったが、それは同馬がエプソム・ダービー馬とは同一レベルにない馬であることを示唆している。
G1である2000ギニーに優勝して124+のRPRを獲得したコックニーレベル(Cockney Rebel)は、これら2頭の馬の中間に格付けられている。それはこの馬が絶対的に一流になる3歳馬であるということを示している。
優れた優勝馬に対する典型的なレーシング・ポスト・レーティングス(RPR)
競走分類 | 2歳馬 | 3歳馬 | 4歳以上馬 |
G1 | 120 | 125 | 130 |
G2 | 115 | 117 | 120 |
G3 | 105 | 110 | 115 |
リステッド競走 | 95 | 105 | 110 |
未勝利馬競走 | 80 | 85 | ― |
過去10年間のエプソム・ダービー優勝馬のレーシング・ポスト・レーティングス(RPR)
年 | 優勝馬 | RPR | Timeform Ratings(参考) |
2007 | オーソライズド(Authorized) | 130 | |
2006 | サーパーシー(Sir Percy) | 120 | 129 |
2005 | モティヴェイター(Motivator) | 129 | 131 |
2004 | ノースライト(North Light) | 124 | 126 |
2003 | クリスキン(Kris Kin) | 121 | 126 |
2002 | ハイシャパラル(High Chaparral) | 130 | 130 |
2001 | ガリレオ(Galileo) | 127 | 134 |
2000 | シンダー(Sinndar) | 127 | 134 |
1999 | オース(Oath) | 124 | 125 |
1998 | ハイライズ(High-Rise) | 123 | 130 |
By Alan Shuback
[Daily Racing Form 2007年6月13日「New tool for evaluating foreign imports」]