鞍ずれの騎手が馬の頸にしがみついたまま優勝(イギリス)[その他]
百聞は一見に如かず。ロイストン・フレンチ(Royston Ffrench)騎手はドンカスター競馬場の最終レースでサディーク(Sadeek)に騎乗し、危機一髪の状況で優勝した。同騎手は鞍ずれにより、ゴールから50ヤード(約45 m)手前で、バランスを崩し馬の頸にしがみついて、馬体の左側にぶら下がる状態になったが、何とか右脚を騎乗馬の背中に回し、接戦を頭差とクビ差でしのいで制したのである
フレンチ騎手は、信じられないような出来事に興奮した競馬関係者と競馬ファンの拍手喝采を受け、よくやったと背中をポンポンと叩かれながら引き上げて来た。同騎手は、ゴール後のコース上でサディークから飛び降りた時、肋骨を痛め、顔をしかめた。
フレンチ騎手は、「肋骨に少し痛みを感じていますが、そのほかは異常ありません。落馬せずほっとしています。実に危ういところでした。ゴール前2ハロンを過ぎたあたりから鞍が後ろにずれ始め、その後鞍は右に回転し、馬の腹部まで回ってしまいました。私が馬体にしがみついて離れなかったのは生存本能のなせる業です。馬の頸にしがみつくことができたことは幸運でした。すべてのことが一瞬の間に起きたので、実際なにが起こったのかはレースのリプレイを見ないと分かりません」と語った。
サディークを管理するブライアン・スマート(Bryan Smart)調教師は、この劇的な出来事に茫然として信じられないというように頭を横に振った。
同調教師は、「長年競馬に携わってきて、このようなことは見たことがありません。鞍はきつく締められていましたし、馬は胸がい(鞍が後方にずれないように胸前に回した帯革)を着けていました。しかし、馬はたいへん汗をかいており、鞍がずれてしまったのです。ロイストンが落馬してしまったかと思いましたが、どうにか落馬せずにすみました。素晴らしい騎乗でした。鞍ずれがなければ、もちろん難なく勝っていたでしょう」と語った。
フレンチ騎手は検量後、医師によって検査された。そして彼は肋骨の痛みのためにチェスター競馬場の薄暮開催での騎乗を断念することを決定した。
By Tom O’Ryan
[Racing Post 2008年6月29日「Ffrench survives saddle scare」]