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海外競馬ニュース
2008年08月07日  - No.31 - 3

窮地に立たされている障害競走(オーストラリア)[その他]


 最近オーストラリアでは、障害競走中に馬の死亡事故が多発していることから、障害競走の禁止を求める声が再び強まり、その将来が脅かされている。

 穴馬デリンジャー(Derringer)が優勝した6月28日のフレミントン競馬場のグランドナショナル・ハードルでは、出走馬13頭のうち完走できたのはたった4頭だけであった。

 悲惨なこのレースにおいて、出走馬2頭が予後不良となり、最後から2頭目は騎手が落馬し気絶したため競走中止(失格)となった。

 最近注目を集めたこの大惨事により、オーストラリアにおけるこの4ヵ月の死亡頭数は合計10頭に上り、近年障害競走に対して一般市民の間でくすぶっていた敵意に火がついた。

 ヴィクトリア州競馬大臣ロブ・フルズ(Rob Hulls)氏は、新聞に“大虐殺の日”と書かれた事を考慮すれば障害競走の再検討は急を要する案件であると述べた。

 フルズ氏は、この問題に関して揺るぎない意見を持っており、「もし死亡事故が障害競走のやむを得ない副産物だと考える人がいるならば、その人は騎手や馬の安全にほとんど配慮していない事になります」と述べた。

 オーストラリア障害競走協会(Australian Jumps Racing Association: AJRA)は、7月5日に施行される国内最高賞金の障害競走グランドナショナル・スティープルの前に、障害競走に対する敵意を和らげるための安全計画を発表する予定である。

 AJRAが発表した声明には、「障害競走が非難に晒されています。これは控えめな表現です。障害競走の支持者は今こそ立ち上がり意見を述べるべきです」と記されている。

 長い伝統にもかかわらず、今やオーストラリアの障害競走と平地競走との関係は非常に希薄である。また、イギリスやアイルランドの障害競走よりも障害物はずっと小さいのが特徴となっている。

 強い影響力のある動物愛護団体の反対がありながらも、ヴィクトリア州と南オーストラリア州の2州では依然として障害競走の施行を許可している。

 2005年の統計によれば、障害競走はイギリスで3300レース、アイルランドで1400レース施行されたのに比べて、オーストラリアでは全体で140レースしか施行されていない。

 けれどもオーストラリアはいまだに障害のスター馬を輩出することがある。顕著な例は、初期に英国のマイケル・スタウト(Sir Michael Stoute)調教師により調教されたせん馬カラジ(Karasi)で、今年引退する前にエリック・マスグローブ(Eric Musgrove)調教師の管理のもと、中山グランドジャンプ(J-G1)を3年連続で制した。

 しかし、障害競走が相対的に地味なものであり、伝えられるところによれば賭事客にも不人気とあれば、冬の平地競走の中断期間に開催される障害競走は衆目の的になり、7月5日のグランドナショナル・スティープルをとりまく雰囲気は懸念と強い嫌悪感に満ちたものとなる。

 報道によれば、アニマルズ・オーストラリア(Animals Australia)の常任理事グレニス・オオグジェス(Glenys Oogjes)氏はフルズ競馬大臣に、彼女が“野蛮なスポーツ”と称する障害競走を中止するよう訴えた。

 オオグジェス氏は、「高い死亡率だけではなく、馬は驚くべき確率で転倒し怪我しています。障害競走は平地競走より10ないし20倍危険です。不運な犠牲馬を安楽死させるとき観客から隠蔽するために用いる緑色の覆いが見ものになっているのは残念な事です」と語った。

 同氏は、最近では2002年と2005年になされた安全見直しでは、主に移動可能な小枝柵ハードルなどの障害物について修正が行われたが、所期の安全効果をあげなかったと主張した。

 オオグジェス氏は、「障害競走は、騎手と馬に対して死亡と怪我のリスクに晒しています。フルズ大臣に選択肢は2つに1つです。これらの競走により生じた継続的な大虐殺の責任を認めるか、この“スポーツ”と呼ばれている障害競走を終わらせるために権力を行使するかいずれかです」と述べた。

 AJRAは6月30日、トップ調教師とトップ騎手の数人を招聘し、障害競走の将来のために安全性を向上させる詳細な提案を練り上げた。

 提案には、馬の速度を落とすための追加障害の導入および騎手と馬の能力の定期的な検査が盛り込まれている。

 AJRAのロドニー・レイ(Rodney Rae)会長は、「私たちは競馬統括機関レーシング・ヴィクトリア社(Racing Victoria)に早急にこれらの安全に関する提案を実施するように要請しました。大臣と会談し説明する必要があります。大臣は馬の安全が脅かされているこの大変深刻な時期に、安全性を向上させることが最優先事項である事を理解するでしょう」と語った。

By Nicholas Godfrey

[Racing Post 2008年7月2日「Australian jump racing under threat」]


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