競走中の位置取りをバーチャル映像で表示(フランス)[その他]
トラカス(Trakus)は、場内大型映像装置やテレビ画面で全出走馬のスタートからゴールまでの位置取りをリアルタイムで見られるようにするシステムである。 8月2日にドーヴィル競馬場に来場する競馬ファンとエキディア(Equidia; 競馬・馬専門TVチャンネル)の視聴者は、この新技術を目の当たりにし、高く評価するだろう。
競走中の各馬の位置取りを表示し競馬をより良く楽しむためのバーチャル映像を作り出すトラカス・システムの素晴らしい技術が7月3日パリで発表された。この技術は米国で開発された。その映像では、出走馬がそれぞれの馬番のついたカラフルな正方形で表示され、コースでの位置取りに応じて移動する。もはや双眼鏡も要らず、注意深く目を凝らす必要もない。天候も、競馬場の広さも、コースの見通しも、設置カメラの位置や数も、レースを良く見るうえであまり重要ではなくなる。トラカスがあれば、馬が競走しているかぎり目当ての馬を決して見失うことはないだろう。
フランスギャロ(France Galop)の事務総長補佐(競走・用地担当)ティエリー・デレグ(Thierry Delegue)氏は満足げに、「トラカスにより、競馬の見やすさと分りやすさを改善します」と述べた。同氏は、トラカス導入以前にすでにフランス競馬がビデオとデジタル写真の利用、ドーピング防止規制の分野で先進的であったことを強調した後、「トラカスという装置の導入は目新しさの追及だけではなく、戦略的選択です。というのは、トラカスによって伝達される情報の量は膨大だからです。競馬場への来場者減少を反転させ、売上げを伸ばすために、トラカスは必要不可欠です。さらに、このデジタル技術(トラカス)が3D動画環境に親しんでいる若年層のファンを開拓するための最強の切り札となるでしょう。トラカスの映像はテレビ画面、コンピューター画面だけではなく携帯電話の画面にも配信されます」と述べた。
フランスギャロはトラカス導入のために、ドーヴィル競馬場に約40本の受信アンテナ、電話回線、光ファイバー回線を設置した。8月に施行されるレースは全て、ファイバーサンド馬場のレースも芝馬場のレースもトラカスの映像が、場内すべての画面とエキディアで放映されることになる。トラカスについて競馬ファンと競馬関係者の感想を聞くために9月にアンケートが実施される予定である。
トラカスは間違いなく高い評価を得るだろう。
トラカスについてのQ&A
► どのようなシステムか?
発信機(100グラム以下)を各馬のゼッケンの下に入れる。受信アンテナは競馬場のコースに沿って分散して設置されており、瞬時に馬の正確な位置、平均速度、各地点での速度、残りの走行距離の精密情報をデータベースに伝送する。馬群の中の各馬の相対的な位置情報は、異なる角度からの3D映像で全体的または部分的に表示される。横方向で、45度の角度で、前方から後ろに、後方から前に、各々ズームで3Dのイメージで表示される。
► 所要費用は?
ドーヴィル競馬場に関しては、競馬場への機材設置と技術ライセンス取得に50万ユーロ(約8000万円)を支出した。
► 既に設置されている競馬場は?
現在のところ、北米ではデルマー、キーンランド、ウッドバイン、モホークの4競馬場に設置されている。トラカスは、18ヵ月前に商品化され、平地競走にも繋駕競走にも用いられている。
► 今後の普及見込みは?
テスト結果が良好であれば、ドーヴィル競馬場の全ての開催でこの装置が利用されることになる。その後の設置拡大計画はフランスギャロが決定する。その際、特にフランス場外馬券発売公社(Pari Mutuel Urbain)の対象となる競走数が上位の競馬場から優先的に展開することになろう。
繋駕のシュヴァルフランセ(Cheval Francais)はどうするのか。この新技術が競馬ファンとテレビ視聴者の好評を得れば、平地競走ファンと同様に繋駕競走ファンの要望も多くなるだろうから、これは投げかけるに相応しい質問である。
By Francois Hallope
(1ユーロ=約160円)
[Paris Turf 2008年7月4日「Trakus: pour suivre les chevaux a la trace」]