デルマー開催のリーディング調教師の管理馬からステロイド陽性反応(アメリカ)[その他]
カリフォルニア競馬委員会(California Horse Racing Board: CHRB)は、7月1日からハリウッドパーク競馬場とデルマー競馬場で行ったアナボリック・ステロイド(筋肉増強剤)の検査で、418頭のうち38頭が陽性反応を示したと発表した。
検査対象となったアナボリック・ステロイドはボルデノン(boldenone)、ナンドロロン(nandrolone)、スタノゾロール(stanozolol)、テストステロン(testosterone)であり、それぞれ閾値レベル(許容上限値)が設定されている。CHRBのカーク・ブリード(Kirk Breed)専務理事は8月21日、デルマー開催の8月20日までの調教師ランキング首位のジョン・サドラー(John Sadler)調教師の管理馬から18頭が、また同ランキング2位のマイク・ミッチェル(Mike Mitchell)調教師の管理馬から10頭が、ステロイド陽性反応を示したと述べた。
CHRBの調査員は8月18日、デルマー競馬場のサドラー調教師の厩舎を調査した。サドラー調教師に対する懲罰は発表されていない。ブリード氏は、自身が知るかぎりではミッチェル調教師の厩舎は調査されていないと述べた。
8月24日のパシフィッククラシックS(G1)まで、サドラー調教師はデルマー開催で82頭出走させ、25勝を記録した。同調教師は今開催中、5つの重賞・特別競走を制しており、そのなかには8月3日、ブラックマンバ(Black Mamba)によるジョン・C・マビー・ハンデキャップ(G1)優勝が含まれている。
一方、ミッチェル調教師は、同開催に59頭出走させ14勝しており、モンザンテ(Monzante)で7月20日のエディ・リード・ハンデキャップ(G1)を制した。
CHRBのリチャード・シャピロ(Richard Shapiro)委員長は、8月19日に開催されたCHRB薬物委員会で、多くの陽性反応が出たことについて、「私たちの競馬に対する思いは真剣です。是非を判断する能力のある2人の調教師が、競馬産業全体を犠牲にして利己的な行動をしたのは恥ずべきことです」と厳しく非難した。
サドラー調教師ならびに同調教師の弁護士からコメントは取れなかった。ミッチェル調教師もコメントを拒んだ。
ブリード氏は、検査結果についてサドラー調教師ともミッチェル調教師とも話をしていないと述べた。
CHRBは、7月に陽性反応の出た馬のオーナーと調教師には非公式の通知を送付した。薬物検査における陽性反応は第4類薬物違反とされているが、9月4日からは第3類薬物違反となり、調教師には業務停止の罰則が科され、賞金を返却しなければならなくなる。
シャピロ委員長は、「これら調教師の8月の成績が真実を物語っています。9月4日の前と後で異なるのは、単に第3類薬物に該当しないから賞金返却がないという点のみです」と述べた。
CHRBは8月21日に、アナボリック・ステロイドが投与されていた馬を州獣医師の出走制限リストに記載し、少なくとも30日間はそれらの馬を出走禁止にするという新規定により、取締りを強化した。この規定は8月22日に発効した。
シャピロ委員長は、「これはすべての点において道理に適っており、馬、競馬関係者および競馬ファンの利益を守ります」と語った。
北中米競馬委員会協会(Association of Racing Commissioners International: RCI)の理事会もまた、8月20日にボルデノン、ナンドロロン、スタノゾロール、テストステロンを第4類薬物から第3類薬物に格上げする模範規定(案)を満場一致で承認し、アナボリック・ステロイド使用を制限する動きにさらなる一歩を踏み出した。
RCIは、禁止薬物を格上げすることにより、さらに多くの州競馬統括機関が陽性反応馬の関係者に対してより重い罰を与えるようになるだろうと述べた。
RCIの委員会はまた、アルファ・コブラトキシン(Alpha-Cobratoxin)とジコノタイド(ziconotide)を第1類禁止薬物に定め、競走馬に治療目的で使用することも禁止している。
アルファ・コブラトキシンは、数種のコブラの分泌液から分離される神経毒で、神経遮断物質として作用する。2007年、ケンタッキーの裁決委員は、パトリック・ビアンコーヌ(Patrick Biancone)調教師のキーンランド競馬場の厩舎からアルファ・コブラトキシンが発見されたことを受けて、ロッド・スチュアート(Rod Stewart)獣医師に4年間、ビアンコーヌ調教師に1年間の業務停止処分を言い渡した。
ジコノタイドはイモ貝に由来する毒で、ヒトの慢性的な痛みを緩和するために使用される。
デルマー開催のリーディング調教師 | |||
調教師 | 出走頭数 | 優勝数 | 獲得賞金 |
ジョン・サドラー(John Sadler) | 82 | 25 | 1,464,743ドル(約16112万円) |
マイク・ミッチェル(Mike Mitchell) | 59 | 14 | 800,390ドル(約8804万円) |
ジェフ・マリンズ(Jeff Mullins) | 59 | 13 | 478,595ドル(約5265万円) |
ダグ・オニール(Doug O’Neill) | 76 | 13 | 637,061ドル(約7008万円) |
ジェリー・ホーレンドーファー(Jerry Hollendorfer) | 40 | 11 | 421,809ドル(約4640万円) |
ピーター・ミラー(Peter Miller) | 29 | 7 | 234,700ドル(約2582万円) |
バリー・アドラムス(Barry Adrams) | 33 | 7 | 521,471ドル(約5736万円) |
パトリック・ギャラガー(Patrick Gallagher) | 28 | 6 | 472,760ドル(約5200万円) |
クリフォード・サイス(Clifford Sise Jr.) | 23 | 6 | 203,908ドル(約2243万円) |
※8月20日まで 出典:エクイベース社(Equibase Co.) |
By Jeff Lowe
(1ドル=約110円)
[Thoroughbred Times 2008年8月30日「Top Del Mar trainers account for 28 steroid positives」]
南カリフォルニアの2人のリーディング調教師は、彼らの管理馬から禁止薬物の陽性反応が出たとCHRBが発表したことから、カリフォルニア州サラブレッド調教師会(California Thoroughbred Trainers: CTT)の役員を辞任することになった。
CTTはカリフォルニア州の調教師の代表組織として同州が公認する組織である。理事長を務めていたジョン・サドラー調教師は、7月1日から開始した薬物検査で同調教師の管理馬18頭がアナボリック・ステロイドの陽性反応を示したことから、理事長の職を自ら辞することとした。
CTTの理事を辞任するもう1名は、ジェフ・マリンズ(Jeff Mullins)調教師である。8月8日のデルマー競馬場での競走において同調教師の管理馬から許容量を超える重炭酸塩(TCO2)が検出された。
ジャック・カラヴァ(Jack Carava)調教師とクリフォード・サイス(Clifford Sise Jr.)調教師が、暫定の理事を務める。また、理事のジム・キャシディ(Jim Cassidy)調教師が理事長職を代行する。
By Frank Angst
[Thoroughbred Times 2008年9月10日「Sadler, Mullins take leave from leadership positions」]