厩務員と調教厩務員に関する外国人労働者の受入れ制度(イギリス)[その他]
イギリスの調教師たちの代表組織は9月9日、厳格な移住労働者規制の対象外とする職業として調教厩務員が指定されたことを歓迎したが、依然として一部の厩舎では人手不足の問題が残ることを懸念している。
技能労働者不足を調査している移住問題諮問委員会(Migration Advisory Committee: MAC)は、EU域外出身者の就労許可申請を審査するための2段階からなる新たなポイント制を導入する際の特例を勧告した。全国調教師連合会(National Trainers’ Federation: NTF)のルパート・アーノルド(Rupert Arnold)専務理事は、この勧告が厩務員(調教騎乗する者を除く)をその特例としないことに懸念を表明した。
MACは勧告に先立ち、NTFのほかに、文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sport: DCMS)、ならびにマーク・ジョンストン(Mark Johnston)調教師およびデーヴィッド・シムコック(David Simcock)調教師から証言・証拠を徴し検討した。MACは政府に対し、調教騎乗は技能を要する作業であり、EU域内の労働者で人手不足を埋めるのはだんだん難しくなっていると勧告した。
アーノルド氏は、「調教厩務員が例外扱いとなったことを嬉しく思いますが、調教騎乗しない厩務員が技能を要する職業として認められなかったことに落胆しています。これでは人手不足の問題が起きてしまいます」と述べた。
「イギリスには、競走馬の世話に従事する大勢の外国人労働者がいますが、道端で誰彼かまわず引っぱってきてこの仕事をしてもらうことは普通できません。私たちはEU域内からこの仕事に就いてくれる人を探しましたが、うまく行きませんでした」。
EU域外からの調教厩務員は、職業能力評価制度(National Vocational Qualification: NVQ)のレベル3に相当する3年以上の経験があるか英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)の免許を有していれば英国で就労許可を得る資格がある。
アーノルド氏は、「調教厩務員は世界のあらゆる場所、例えばブラジル、インド、パキスタンなどから来ています」と述べ、英国に近い地域から人材を見つけるのが難しい主な理由として次の2つをあげた。
「1つ目は体重の問題です。西欧諸国の人々は身体的により太くより重くなります。2つ目には、彼らはキャリアに対する期待も異なり、一般に馬と一緒に働くことに人生を捧げようとは思わないのです」。
「現役馬の数と開催日数の増加からみて、競馬産業が現在の活動レベルを維持するためには技能スタッフを確保する必要があります。欧州で適切な数の人材を見つけることは不可能になりましたので、域外に求めることが不可欠です」。
全国厩務員協会(National Association of Stable Staff: NASS)のジム・コーネリアス(Jim Cornelius)専務理事は、「NASSは、MACの決定により調教師たちが良好な厩舎労働者を確保し、時間外労働を回避できることを歓迎します」と述べた。
コーネリアス氏は、調教厩務員と厩務員の扱いが異なることを残念として、「厩務員の仕事である競走馬の世話と手入れは、技術を要する作業であり、政府にはそのことを認識してもらわなければなりません」と述べた。
「厩務員の賃金が国の最低賃金を反映しているという事実を見て、MACの考え方が変わったのかもしれません。現行の賃上げ交渉においてNTFが賃金を増額したことは、調教師が厩務員たちの技術を重視していることの現われだと思います」。
アーノルド氏も、技能のある厩務員への給与支給額は国の最低賃金を大きく上回ると述べた。
BHAの最高経営責任者ニック・カワード(Nic Coward)氏もまた、厳格な移住労働者規制において調教厩務員が技能労働者と位置づけられたことを歓迎する一方で、厩務員に対する認識が妥当でないと述べた。
カワード氏は、「MACが調教厩務員に対して“技能労働者が不足している職業”の位置づけをしたことは、大変喜ばしいことですし、大歓迎です。一連の強力な証拠が、英国競馬を支持するために集められました。私たちが経済面だけではなく英国のスポーツおよび文化遺産に貢献していることをDCMSが認識し、支援してくれたことに感謝しています」と語った。
カワード氏は、次のように付言した。「MACの勧告で、厩務員が“技能労働者が不足している職業”と認められなかったことは、依然多くの問題を残しています。私たちは引続き残る諸問題に取組むために関係団体と協力し続けます。また、幅広い人材募集などにより競馬界に人材を集める努力を続けます」。
ロジャー・チャールトン(Roger Charlton)調教師は、「NTFは、調教厩務員の人手不足の問題に関して大いに手を尽くしてくれましたし、私たちの声を聞き入れてくれたように思います。清掃員が不足しているのではなく、有能な調教もできる厩務員を得ることが難しいのです。それが私たちの多くが必要としているところです」と語った。
By David Carr
[Racing Post 2008年9月10日「Grooms not on skilled list in immigration crackdown」]