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海外競馬ニュース
2008年11月20日  - No.46 - 1

厳格な薬物規制が功を奏したブリーダーズカップ(アメリカ)[獣医・診療]


 10月24、25日開催のブリーダーズカップ(Breeders’ Cup World Championships:BC)において、アナボリック・ステロイド(筋肉増強剤)や血液ドーピング剤の陽性あるいは重炭酸塩(TCO2)の許容量超過と判定された馬はいなかった。

 10月31日、ブリーダーズカップ社(Breeders’ Cup Ltd.: BCL)の業務担当上席副社長のパム・ブラッツ=マーフ(Pam Blatz-Murff)氏は、10月24日の出走馬の薬物検査はすべて陰性であり、10月25日の出走馬については追加的な薬物検査が進行中であると述べた。

 「多項目にわたる薬物検査を行う必要があり、大変手間と時間がかかります。グレード競走は日頃行っている検査よりも多くのテストを行わなければなりません」。

 ブラッツ=マーフ氏は、BCLはBC開催前に無作為にエリスロポエチン(EPO)、ダーベポエチンなどの血液ドーピング剤の検査を行ったところ、すべてに陰性であったと述べた。陽性反応が出た場合は、BCへの出走権は剥奪されただろう。

 カリフォルニア競馬委員会(California Horse Racing Board: CHRB)とBCLは、今年初めてアナボリック・ステロイドに対するルールを制定した。このルールは、陽性反応が出た場合の制裁として、出走資格の剥奪および賞金の没収、それに加えて違法行為を行った調教師に1年の業務停止処分を規定している。BCにおいては各レースにおける4着までの入着馬が検査され、さらに少なくとも1頭の馬が無作為に選択され、検査された。

 BCクラシック(G1)の優勝馬レイヴンズパス(Raven’s Pass)を管理する英国のジョン・ゴスデン(John Gosden)調教師は、BC開催に先駆けて、アナボリック・ステロイドの使用を禁止したことが今年のBCへの欧州馬の参戦が増加した理由の1つだろうと語った。欧州ではアナボリック・ステロイドは20年以上も前から禁止されている。

 レイヴンズパスは10月25日の9競走中5競走を制した欧州調教馬のうちの1頭である。

 ゴスデン調教師(故郷の英国に帰る前に1970年代から1980年代にかけて11年間カリフォルニアを拠点としていた)は、次のように語った。「CHRBによって素晴らしいルールが制定されました。そしてこのルールがBCに適用されたのは正当なことです。米国においてはルールが州ごとにまちまちになっています。全米を包括する形でルールを制定できれば良いのですが、なかなか実現できていません」。

 BCへの海外馬参戦を手助けをしたIRB社(International Racing Bureau)の最高経営責任者アラステア・ドナルド(Alastair Donald)氏は、欧州調教馬の成功を評価する上で、アナボリック・ステロイド禁止を引き合いに出した。

 ドナルド氏は次のように語った。「結果を見れば明らかに今までで最高のBCでした。成功の要因として人々は、一連の強豪馬が遠征してきたこと、ダート馬場に代わりにプロライド馬場が使用されたこと、そしてアナボリック・ステロイドを禁止したことを挙げるでしょう。ヨーロッパ勢もこれらの諸点を考慮し参戦する気になったと思います。来年も大挙参戦することでしょう」。

By Jeff Lowe

[thoroughbredtimes.com 2008年11月4日「Breeders’ Cup horses pass steroid, EPO tests」]


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