競馬産業に補助金削減と賭事税増税のダブルパンチ(アイルランド)[開催・運営]
10月14日、国の来年度予算が発表された。アイルランドの競馬産業は、政府補助金の削減と賭事税の増税というダブルパンチの荒波に翻弄されている。
関心が集まっていた政府演説の1つとして、ブライアン・レニハン(Brian Lenihan)財務大臣は財政演説を行い、競馬産業が頼みの綱としている競馬・グレイハウンド基金(Horse and Greyhound Fund: HGF)への政府補助金を9.5%削減すると発表した。ホースレーシング・アイルランド(Horse Racing Ireland:HRI)の最高経営責任者ブライアン・カヴァナー(Brian Kavanagh)氏は、これを重大問題と表現した。
加えて、場外馬券発売所における賭事税の税率が2倍になり売上げの2%となった。ある独立ブックメーカー団体のスポークスマンは、この税率引上げで独立ブックメーカーの事業が破綻しかねないと述べた。
カヴァナー氏は、これら2つの措置は競馬産業に長期にわたって悪影響を与えるだろうと語った。
HGFに対する補助金について、削減率9.5%は660万ユーロ(約10億5600万円)に相当する。これにより予算額は2008年の7630万ユーロ(約122億800万円)から、2009年は6970万ユーロ(約111億5200万円)に減少する。
カヴァナー氏は、賞金、施設等整備計画、運営費について再検討が必要になるだろうと述べた。
同氏は、次のように語った。「この大幅削減は深刻な問題です。なぜなら、カラー競馬場やトラモア競馬場の整備および賞金全体について検討しなければならないからです」。
「HGFからHRIへの補助金は、来年2月に交付されます。現在のところ2010年以降については未定です」。
「2009年には施設等整備に5580万ユーロ(約89億2800万円)が利用可能ですが、それ以降はどうなるか何とも言えません。そのような状況で借入金が必要になるとすれば、それは深刻な問題です」。
カヴァナー氏は次のように付言した。「競馬場整備のような長期計画と同様に、賞金、HRI運営費および競馬産業の諸団体への助成金についてかなり見直しをしなければならないでしょう」。
「HRIの財源が大幅に削減されるので、支出の全項目についてゼロから見直さなければなりません」。
もう1つのボディブローは、アイルランドの場外馬券売所における賭事税率が1%から2%に上げられることであり、レニハン氏によれば、その額は1年で4000万ユーロ(約64億円)に上る。
アイルランド・ブックメーカー協会(Irish Bookmakers’ Association)のシャロン・バーン(Sharon Byrne)会長は、この引き上げを悲観し、「最終的にはアイルランドの独立ブックメーカーの事業を破壊しかねません」と語った。
同会長は次のように付言した。「私は、アイルランドの独立ブックメーカー事業の終焉である考えています」。
「数字を検討すれば、独立ブックメーカーがどのような努力をしても利益を得ることは不可能です。まちがいなく彼らは採算の取れない状況に陥るでしょう」。
ウィリアムヒル社(William Hill)のスポークスマンであるデーヴィッド・フッド(David Hood)氏は、次のように語った。「一般大衆は財布が日に日に軽くなっていると感じているのにアイルランド政府が賭事税を増税したのには、驚愕し落胆しています」。
「このことで、アイルランドで大規模な場外馬券発売所を経営し、また特にインターネットおよび電話による賭事事業を経営することが、ほとんど魅力を失ってしまいます。アイルランドの場外馬券発売所の中には、経営困難となり、破綻するものも出てくるでしょう」。
By Brian Fleming
[Racing Post 2008年10月15日「Double budget blow leaves Irish racing in dire straits」]