クイックピック賭けをめぐる訴えが却下される(アメリカ)[その他]
“クイックピック(quick-picks)”賭け(コンピューターおまかせ馬券)をめぐってサイエンティフィックゲームズ社(Scientific Games: SG)に対して提起されていた訴訟について、連邦地方裁判所は、この種の訴えは判例法で認められていないとし、訴えを却下した。
カリフォルニア州の馬主ジェリー・ジャムゴチアン(Jerry Jamgotchian)氏は8月に集団訴訟を起こし、SGのベットジェッツ(BetJets)馬券販売システムの明らかなプログラムミスに対する損害賠償金として少なくとも500万ドル(約5億5000万円)の支払いを求めていた。
ベットジェッツ馬券販売システムは、本命馬を除いたクイックピック馬券を数ヵ月間にわたり発売していた。この事実が判明したのは、ベイメドウズ競馬場で或る馬券購入者がケンタッキーダービーの1300ドル(約14万3000円)分のクイックピック・スーパーフェクタ(4連単馬券)を購入したが、これらの馬券には同競走で20番ゲートからスタートして優勝したビッグブラウン(Big Brown)の馬券が含まれていなかったことによる。
カリフォルニア州中部を管轄する連邦地方裁判所のジョージ・H・キング(George H. King)裁判官は、10月23日に判決を言い渡した。
公表された裁判記録を読むとキング裁判官の審理内容は次の通りである。? ジャムゴチアン氏の訴えの実体的内容(契約違反、不当利得、過失ある不実表示、詐欺および過失に関する主張)について具体的に言及していない。? 被告SGが主張していた訴え却下の申立て(すなわちカリフォルニア州の判例法では、賭けに負けた者が賭金を取り戻すための訴訟は認められないという主張)を重視している。
ジャムゴチアン氏は、負けた賭金を取り戻すための訴えではないと主張したが、キング裁判官はその主張を認めなかった。同裁判官は、「原告は、馬券の当たり外れは関係ないと主張しているが、原告が的中券を所持しておれば、取引を無効にするよう求めることはないであろうと当裁判所は考える」と判決で述べた。
キング裁判官は、訴えが却下されたことにより、本件は原則として再提起できないことになると判示した。
裁判所の判決に不満なジャムゴチアン氏は、カリフォルニア州競馬委員会(California Horse Racing Board: CHRB)のその後の調査あり方およびSGと和解[福祉施設に20万ドル(約2200万円)寄付]したことを非難した。
同氏は、「本件訴訟における当方の主張は、SGの紛れもない詐欺行為、契約違反であり、カリフォルニア州のすべての馬券購入者をだまそうとしたSGの“たくらみ”に関することであり、賭博には関係ないのに、キング裁判官はそれを理解していない」と電子メールで声明を発表した。
SG側の弁護士は、SGはキング裁判官の判決に満足していると述べた。ロサンゼルスにあるギブソン・ダン&クラッチャー法律事務所(Gibson, Dunn & Crutcher law firm)のセオドア・J・ブトロスJr.(Theodore J. Boutrous Jr.)弁護士は、「本件訴訟におけるSGの主張は競馬ファンの期待に沿うものです。SGは、問題を解決して競馬ファンを保護するため、規制当局と協力し迅速に行動しました。カリフォルニア州法では、この種の訴訟は認められていないことは明らかであり、したがって実体的審理に入る必要はありません(訳注:いわゆる“門前払い判決”)。連邦地方裁判所はそのことを正しく理解してくれました」と述べている。
SGは訴え却下の申立てにおいて、ジャムゴチアン氏の訴えは“裁判を利用した賭けである”と述べ、同氏の訴えは“負けた賭金を取り戻すために法制度を利用しようとする企て以外の何ものでもない”と主張した。SGはまた、本命馬がコンピューターで選ばれないということは、一定の競走では的中時の払戻額が理論上“高まる”ことになると主張した。
今回の判決は、クイックピック馬券に関してSGに提起された訴訟に対する3回目の判決となる。6月にカリフォルニア州で連邦裁判所に提起された訴訟は、7月にCHRBとの和解が発表された後に却下され、またカリフォルニア州裁判所に提起された訴訟は10月23日に原告が訴えを取り下げた。
By Ryan Conley
(1ドル=約110円)
[The Blood-Horse 2008年11月1日「Scientific Games Wins Dismissal of ‘Quick Picks’ Lawsuit」]