シンガポールとドバイ、人工馬場を賞賛(国際)[その他]
シンガポールターフクラブ(Singapore Turf Club)の副理事長ソン・ツェ・ミン(Soong Tze Ming)氏は4月13日、英国を拠点とするマーティン・コリンズ(Martin Collins)氏が開発したポリトラック馬場はシンガポールにおいて思ったよりも上手く行ったと述べた。
人工馬場は、アジア競馬会議(Asian Racing Conference)の競馬場施設と馬場技術に関する討論において吟味の対象となった。
シンガポールターフクラブは2シーズン前にポリトラック馬場を敷設して上手く行っているが、この馬場の価値は既に証明済みであったとソン氏は述べた。
同氏は、「統計によればポリトラック馬場はより白熱した競走を提供しています。また馬の故障は、競走においても調教においても大幅に減少しました。シンガポールは競馬の質を積極的に高める手段としてこの決定を行い、賭事客はこの変更をすばやく受け入れました」と説明した。
同氏は次のように付言した。「人々がポリトラック馬場について確信が持てないうちは納得して受け入れるまでの時間が必要でしたが、この馬場が芝に非常に似ていることに気づいた後は、馬券売上げがゆっくりと回復しました。そして今や、以前ダート競走の馬券売上げが芝競走の売上げよりも20%低かったのに比べて、芝競走の馬券売上げとポリトラック競走の馬券売上げの間にほとんど違いはありません」。
なお、新たな賭事客を惹きつけるための広範囲な戦略としては、(1) 可変控除率による賭事収益の改善、(2) 新たな馬券購入方法の促進、(3) カジノ場が与える快適さに対抗するためにクランジ競馬場のグランドスタンドを改装すること、も含んでいる。
人工馬場のテーマに関しては、ドバイ・レーシングクラブ(Dubai Racing Club)のCEOフランク・ガブリエル(Frank Gabriel)氏からも、ナドアルシバ競馬場のダート馬場に替わったメイダン競馬場のタペタの全天候型馬場は、ドバイカーニバルとドバイワールドカップにおいて大成功を収めたと報告があった。
ガブリエル氏は、「私たちは白熱した競走を求めていたので、人工馬場を採用することに決定しました。そして、ドバイのアルクオーツ調教センター(Al Quoz training center)とメイダン競馬場の調教馬場(2009年3月敷設)でタペタ馬場が良好に機能していたのを見て、タペタ馬場を選定しました」と語った。
同氏はこの選定が正しかったことの証明として、ゴールデンシャヒーン(G1 1,200 m)の成功を強調し、「この競走はダートで施行されていたので北米馬にとって有利であり、G1競走としては悪戦苦闘していました。しかし3月に施行された今年の同競走は、7ヵ国から平均レーティング116の馬を惹きつけました。この馬場の変更は、参加国すべてに有益な経験となりました」と説明した。
ガブリエル氏はタペタ馬場を“安全かつ最適な馬場”として賞賛したが、「天候によって馬場状態は変化するので、この馬場を管理するには相当の努力が必要です。朝の調教を行う馬場と夜にレースを行う馬場とを一貫させることが重要です」と付言した。
NTRA(全米サラブレッド競馬協会)の会長であるアレックス・ウォルドロップ(Alex Waldrop)氏も、適切な管理法について、「人工馬場に関する誤解の1つは、メンテナンスに手が掛からないということです。しかし、人工馬場にとって気温が高い時に水撒きをするなど、管理は非常に重要です」と語った。
米国においてカリフォルニア州がダート馬場から人工馬場への変更要請を行ったことについての議論は続いているが、最大の問題は競馬ファンの間で生じている意見の不一致であると、ウォルドロップ会長は次のように述べた。
「競馬場にたまに来るファンは、安全を理由に人工馬場を支持しています。しかし根っからの競馬ファンは、ダート馬場がもたらすと確信している馬場の一貫性を望んでいます。この信念をぐらつかせるまでの道のりは長いです」。
しかしウォルドロップ氏は、議論は人工馬場を拡大するかどうかではなく、伝統的な米国のダート馬場に戻す方向に向かうでしょうと示唆した。
同氏は次のように付言した。「他に人工馬場敷設を要請する州はありませんので、もしカリフォルニア州が州内競馬場にダート馬場への復帰を認めたとしても私は驚きません」。
「人工馬場は経費が障害となっており、経済不況以降はその敷設に以前ほど緊急を要していません。ファンは今や“ダートをより安全にせよ”と言っています」。
By Howard Wright
[Racing Post 2010年4月13日「Singapore and Dubai give thumbs up to synthetics」]