所有馬の負けに賭け、処分された馬主の主張にBHAが強く反論 (イギリス)[その他]
BHA(英国競馬統括機構)のポール・ロイ(Paul Roy)会長は、プロの賭事客ハリー・フィンドレー(Harry Findlay)氏が、預託している調教師の管理馬のうち他の馬主が所有する馬に対して負ける方に賭けたことについて、同氏が特例的な扱いを受けることは決してないと述べた。
チェルトナムゴールドカップ(G1)の勝馬デンマン(Denman)の共有馬主であるフィンドレー氏は、2008年と2009年に行われた2つのレースにおいて、ベットフェア社(Betfair)を通して、自身の所有馬であるガリブルゴードン(Gullible Gordon)が負ける方に賭けたために6月11日に6ヵ月間の職務停止処分を受けた事に対して、申し立てを行った。
いずれのレースにおいても勝つ方への賭けが上回っていた。しかしフィンドレー氏は、自身が“技術的に違反した”と表現する行為を認めたことを受けて課された罰則の厳しさに衝撃を受けた。競馬界の実力者たちもこの処分を非難し、6月15日にはチャンピオントレーナーであるポール・ニコラス(Paul Nicholls)調教師がその増え続ける抗議者リストに名を連ねた。
BHA懲戒委員会の決定に対して上訴することを表明しているフィンドレー氏は、レーシングポスト紙宛の書簡の中で、BHAのロイ会長とCEOのニック・カワード(Nic Coward)氏を名指しで批判することによりさらに議論を煽り、この2人が見せた“敬意の欠如”に抗議するため、彼らが今の地位にとどまっている限り英国で所有馬を走らせないと表明した。
これに対し、普通ならばBHAは上訴された懲戒処分についてのコメントは控えるが、ロイ会長は、6月15日に発表されたフィンドレー氏の長い声明は“多くの誤解”に基づいて出されたものであると説明する必要に駆られた。
フィンドレー氏の声明は、懲戒委員会がBHAから独立していることを強調し、馬主の所有馬への賭けの取締りは、負ける方だけではなく勝つ方に賭けた場合にも行われるべきであり、さもなければルールはしり抜けになってしまうと主張した。
フィンドレー氏がBHAおよびベットフェア社と良好な関係にあるため、負け馬への賭けに関して同氏が特例として扱われていたという同氏の主張に対して、ロイ氏は断固として反論し、次のように述べた。
「BHAはフィンドレー氏に、所有馬と同厩舎の馬に対して負ける方に賭けることを許可したことはけっしてありません。2008年11月24日の会合においてフィンドレー氏は、自身の母親の名前で登録されている馬も含めて所有馬に対して負ける方に賭けることは、施行規程に違反するという説明を受けたはずです」。
「フィンドレー氏はまた、“馬主は現役馬を有している場合にはいかなる馬に対しても負ける方への賭けは控えなければならない”という馬主の行動規範についてもくぎを刺されたはずです。同氏は警告を受け入れ、所有馬に対しても、その同厩舎の馬に対しても負ける方に賭けることはしないと確約しました」。
フィンドレー氏の声明はまた、BHAの法令遵守・免許課の課長であるオリバー・コドリントン(Oliver Codrington)氏が、フィンドレー氏は欠席していた先週の聴聞会において、懲戒委員会に対して多くの減刑要素を喚起していたことを指摘している。
ロイ会長は次のように続けた。「フィンドレー氏は、このケースの結果には個人的な感情がかかわっていたと示唆していますが、この示唆はまったく間違っています。施行規程はすべての人々にとって同等に適用されます」。
「競馬界全体よりも偉大な人物などいません。競馬界全体の利益のために取締義務を実行するのがBHAの役割です」。
一方、フィンドレー氏と非常にうまく関係を築いてきたニコラス調教師は、「競馬界の多くの人々がフィンドレー氏への罰則に明らかに反対している中で、関係する馬の調教師としてその議論に重みを加えたいと思います」と述べ、フィンドレー氏の立場を支持した。
同調教師は次のように付言した。「馬主となって8年間経ち、フィンドレー氏の公正さと誠実さは、厩舎地域では当たり前のことだと思われています。同氏はガリブルゴードンが負ける方に賭けましたが、2回のレースとも明らかに勝たせたかったのです」。
「フィンドレー氏は私にちなんで所有馬に“真実はここに(Herecomesthetruth)”と名づけていますが、彼自身にちなんでそう名づけることもできたでしょう」。
By Graham Green
[Racing Post 2010年6月16日「BHA denies Findlay’s claim he was given special dispensation」]