コンサイナー、国際化に伴い 英国のせりの見直しを提案(イギリス)[生産]
せりの動向は非常に迅速に変化する。何年もの間せり会場がダービー馬となる馬を吟味して捜す場所だと思われてきたが、不思議なことにここ数年は、続けてオーナーブリーダーがダービーに勝つ形に変わった。
7月セールは、小規模な混合セールの行われた第1日目にチェヴェリーパークスタッド(Cheveley Park Stud)が強力な上場馬を送り込んでいた数年前は、もっと人目を引く出来事だった。その結果として、販売のためにより優れた上場馬を送り込んでくる繁殖牝馬のコンサイナー(販売申込人)は、トップ10の売り手の40%近くを占めていた。
だが今年コンサイナーは、競走馬が中心となっているせりのトップ10の売り手の10%を占めるに過ぎない。
同様に最近までは、最高価格は第1日目の繁殖牝馬のディスパーサル・セール(繋養馬処分セール)で出る傾向にあったが、現在では一連の高額馬は例外なく競走馬の厩舎から上場されており(現役調教馬)、海外で競走させるために購買される。
2010年の7月セールは245人の個人が購買し、少なくとも69頭の上場馬が東アジアおよび中東の国々により購買された。
イタリアは少なくとも10頭の馬を購買し、私の知るところでは、英国で購買した繁殖馬を輸入するための基準が緩和されたインドへ6頭が渡った。過去数年間、私たちはアイルランドのゴフス社(Goffs)のせりで購買された少なくとも100頭の馬がインドに渡るのを見てきたので、これはタタソールズ社(Tattersalls)やドンカスター社(Doncaster)の12月セールにとっては良い前兆である。
私が2010年の7月セールで販売した2頭の繁殖牝馬は、マンデュロ(Manduro)の仔馬を出産したばかりで現在もまた同馬の仔を身ごもっている牝馬と、ホーリーローマンエンペラー(Holy Roman Emperor)の仔を身ごもっている牝馬であり、いずれもインドに渡る。英国は賞金額が不足しているので、多くの馬主は多数の競馬開催国が自国へ輸入しようと希望しているせりに、自身の馬を上場することに熱心である。
さらに大抵の場合、現役馬販売からの収入が非課税になるというもうひとつの動機があることから、多くの抜け目のない馬主が現役牝馬を今シーズンで競走から引退させて、冬の繁殖牝馬セールで、あるいは個人的に庭先で販売するだろうと私は予測する。賞金額が低い現状の中で、下級のブラックタイプレースを勝った牝馬に4歳シーズンや5歳シーズンまで現役を続けさせることにほとんど価値はない。そしてその牝馬の仔馬から利益を得る保証もない。したがって、それらの牝馬を売って非課税の収入を得ることは魅力的な手段の1つである。
ところで話は変わるが、私は最近ブッシュシアター(Bush Theatre)を支援するためにロンドン市内で行われた慈善パーティー『思い出すべきこと(An Affair to Remember)』に光栄にも招待された。そこには多くの競馬関係者も出席していた。
ロイヤルアルバートホール(Royal Albert Hall)の向かいにあるアルバートメモリアル・ウエストローン・ケンジントンガーデンズ(Albert Memorial West Lawn Kensington Gardens)で行われたこのパーティーは、この場所でサラブレッドのせりが行われたらどんなに良いだろうと出席者全員に思わせた。
パーティーの夜は数百人もの裕福な国際人や都会人を惹きつけた。そしてすべてのものが英国の最高のホテルとレストランから目と鼻の先にあった。このことは、サラブレッドを販売するための魅力的なやり方に思えないだろうか?
ニューマーケットには少々失礼になるかもしれないが、ニューマーケットではせり時期にはベッドフォードロッジホテル(Bedford Lodge Hotel)がしばしば満室であるほか、長いせりの1日が終わる頃にはファウンテンチャイニーズレストラン(Fountain Chinese Restaurant)は寿司詰め状態であり、テーブルの確保が難しい。
ロンドンは、わくわくするような馬のせりの開催地を提供するだろう。ケンジントンガーデンズの夜のパーティー会場は、一時的に取り付けられたアンティーク家具(その多くがタタソールズ社の10月セールのブック1に掲載されている上場馬の平均取引価格ほどの値段)で溢れていたが、その雰囲気と古典的なスタイルは、新しい投資家を惹きつけ、既存の購買者を大切にするために必要なものである。
将来像の1つとして、産業が団結して開催し、アルカナ社(Arqana)、ドンカスター社、ゴフス社およびタタソールズ社のような本格的なせり会社のコンサイナーグループすべてを資金援助者として巻き込む形のロンドンでの新しいせりは、国際的なせりに対する大きな関心を呼び起こすだろう。
おそらくこのようなせりはロンドンに限定されるべきではなく、パリやダブリンあたりでも展開しうるだろう。私自身もこうした動きへの支援を働きかけたい1人である。
By Ted Voute
[Racing Post 2010年7月12日「Opening of Indian market and changing times in Britain bring more racing stock to the sales」]