競馬変革プロジェクト、競馬界に我慢を促す(イギリス)[開催・運営]
競馬変革プロジェクト(Racing For Change: RFC)は、些末な仕事にかかわってばかりで競馬が直面している根本的な問題に対応していないとする批判に応え、競馬界に対して、我慢を促すとともにプロジェクトは長期計画であることを思い出すよう求めた。
沈まないまでも大きく損傷していると見なされている競馬産業という船を救うため、より決定的で大胆な行動を求めている批評家たちによって、RFC企画担当理事であるロッド・ストリート(Rod Street)氏とその同僚たちは、沈み行くタイタニック号の上でデッキチェアを並べ変えている船員に例えられた。
競馬の魅力を広げその観客の年齢層の引下げを狙ったこのプロジェクトが立ち上がった2009年には好意的反応の高まりがあったものの、人目を引く進展がなかったことでその高まりはくじかれ、競馬賭事賦課公社(Levy Board)の財源や競馬の体制というような大きな問題が扱われていないというフラストレーションが広がった。
ミドルハムを拠点とするマーク・ジョンストン(Mark Johnston)調教師は、RFCが些細なことをいじくりまわしていると主張し、またウィリアムヒル社(William Hill)のCEOラルフ・トッピング(Ralph Topping)氏は、画期的な独創性が示されないならばこのプロジェクトは崩壊することがあり得ると確信している。
ほとんど毎週のように新しい改革が発表されており、最新の2つは、イングランド観光局(Visit England)の旅行者委員会による競馬場の質評価の実施、および9月における競馬の新規顧客のためのウェブサイトの立上げである。一方で、5月にアスコット競馬場で施行された10進法表示オッズは多くの人々に失敗と見なされ、また“金色の旗”計画は、複合馬券のオッズを独自のものに戻したことで事業が倍増したと主張するブックメーカーのバリー・デニス(Barry Dennis)氏により厳しく非難された。
(訳注:“金色の旗”計画とは、単勝・複勝を組み合わせた複合馬券の標準的なオッズを適用するよう促す顧客憲章に同意した場内ブックメーカーを区別するために金色の旗を掲げさせる計画)
入場料無料週間は、新規顧客を競馬に惹きつける点においては成功であったと見なされているが、チャンネル4の馬券予想の教祖的存在であるジョン・マクリリック(John McCririck)氏は今のところRFCの全体の活動に感心してはおらず、「私はRFCとそれに伴う組織機構にどれぐらいの費用が掛かっているのか知りませんが、おそらく大金が掛かっていることは確かでしょう。まだ成果をほとんど見ていないので、RFCの価値は見い出せません」と語った。
しかし女王陛下のレーシングマネージャーを務めるジョン・ウォレン(John Warren)氏は、RFCに対する否定的な風潮の中で断固として楽観的である。「もし競馬産業が変革の探求を支持する心構えがないのであれば、非常に残念に思います」。
ストリート氏は、全国紙のニュースページに競馬に関する話題を載せるために今年RFCが行った広報活動を誇りに思っている。最新のカウントで、競馬界の著名人に関する1ページあるいは見開きの特集ページで扱われた記事が35件あったが、同氏はこのことがすぐに結果を生むものではないことは認めている。同氏は自身のチームが“5年間のプログラム”に取り組んでいると常に主張してきた。
ストリート氏は、「RFCを立ち上げたときに、私たちはこれが長期戦略であると述べました。そして、多くの伝統の中で現在の形に確立されてきた競馬産業を違った形に改善していくには時間が掛かります。計画の中には、思い通りに行かなかったものも行ったものもあります。必ずしも期待していたようにいかなかったことをすぐに取り上げてあれこれ言う人々がいることは、興味深いことです」と語った。
同氏は次のように付言した。「競馬の体制は利害関係者が多いために、小さな事柄でさえも、進展させるにはストレスのたまるほど時間が掛かります。競馬界が本当に変革を望んでいるのであれば、時には承認よりも許しを求める方針をとらなければならないかもしれません」。
By Graham Green
[Racing Post 2010年8月13日「Racing For Change in plea for patience」]