経済不況が凱旋門賞に影を落とす(フランス)[その他]
10月3日にロンシャン競馬場で開催された2010年凱旋門賞はここ数年と比べ、明らかにお祭りのような雰囲気を持たず、危機が感じられた。たしかに、ブーローニュの森にある同競馬場のスタンドとテントには4万3,000人の観客がいたが、意気込みや気力、一言で言えば情熱が欠如していた。イギリス人やアイルランド人の観客数は数千人減り、日本人はディープインパクトが出走したときほど来場しなかった。私たちフランス人はと言えば、フランス馬の中から優勝馬が出ることを力説したり熱烈な態度を見せることもなかった。お祭りはどこか寂しさを漂わせていた。
唯一フランスのサポーター全体から賞賛されたゴルディコヴァ(Goldikova)と英国ダービーおよび凱旋門賞の2つのタイトルをものにしイギリス人により熱烈な喝采を受けたワークフォース(Workforce)だけが、栄誉を与えられた。これら2つの最高の瞬間以外は、観客席は感喜に震えることはなく、ビールやシャンパンのグラスが半分空っぽになった状態で置かれているバーのような状態だった。
ヨーロッパ全体において経済状況は悪化しており、それは10月3日のロンシャン競馬場ではっきりと感じられた。ここ数年競馬の熱狂的ファンは馬の祭典とパリの美しい小旅行にためらうことなく出かけたが、今年は彼らは自宅にとどまった。競馬場に駆けつけた者たちは、消費はするにはしたが懐具合と相談しながらであった。
近頃エプソム、アスコット、ワレヘムおよびクラオンの各競馬場においても、重要な開催日程における傾向は似通ったものであった。入場者数の減少、馬券売上げの減少、そして歓喜とくつろぎの減少。競馬は元を辿れば、社会のすべての階級が集まるイベントとして発展したので、経済状況だけではなく各家庭の状態を計るのに最適なバロメーターとして役立つ。
これまでは、シーザスターズ(Sea the Stars)やザルカヴァ(Zarkava)のようなチャンピオンとして素質のある馬の存在も、凱旋門賞の雰囲気を明るくするのに成功してきたのかもしれない。しかし、今シーズンは初めから優勝すると目される馬は存在しなかった。2010年凱旋門賞では確実性のある突出した馬がなかったために、カンテプリュス(Quinte+ 5連単・5連複馬券)を当てれば300万ユーロ(3億6,000万円)のキャリーオーバーを獲得することができたものの、賭事客は慎重だった。PMU(フランス場外馬券発売公社)の売上げは前年の凱旋門賞に比べ12%減少したが、海外で集められた賭金、とりわけ香港での売上げ720万ユーロ(約8億6,400万円)に助けられた。
これまで凱旋門賞の日程は同じ日に地方開催が行われることなく保護されてきたが、凱旋門賞のような看板開催を含む保護された日の売上げは、明らかに減少している。賭事客が毎日3場の賭事を自由に楽しめる現在、彼らは慣れたやり方で賭事を行い、もはやレースとレースの間の30分間を持て余したのである。これは2010年凱旋門賞の教訓の1つである。
By François Hallopé
(1ユーロ=約120円)
[Paris Turf 2010年10月8日「La cirse déteint sur l’Arc」]