鞭使用ルール再検討にデットーリ騎手の違反行為が与える影響(イギリス)[開催・運営]
BHA(英国競馬統轄機構)関係者は、フランキー・デットーリ(Frankie Dettori)騎手が6月15日に優勝したプリンスオブウェールズS(G1)でルール違反を犯したことは、現行の鞭使用ルールが適切ではないということの更なる証拠となったと語った。
リワイルディング(Rewilding)とデットーリ騎手のコンビは、ライアン・ムーア(Ryan Moore)騎手が騎乗していた本命馬のソーユーシンク(So You Think)に対し首差で素晴らしい勝利を収めたが、デットーリ騎手はゴール手前の2ハロン(約400 m)でリワイルディングに24回鞭を入れたことで9日間の騎乗停止処分を科された。なお、ムーア騎手は鞭使用ルールに従い騎乗していた。
(注) 英国の競馬施行規程によると、平地競走の場合、レース全体で16回、最後の2ハロンで13回、最後の1.5ハロンで11回、最後の1ハロンで9回を超えて使用すべきではない、と記されている。
この出来事によって、鞭使用ルール違反の罰則がより厳格であるべきかどうかの議論が再燃している。
特に高額賞金のかかったビッグレースでは、騎手が、騎乗馬の失格はないと知った上で有利になる状況だと思えば、鞭使用ルールに違反するのを抑止する術はないという考え方が広まっている。
4月のグランドナショナルで優勝したジェイソン・マグワイア(Jason Maguire)騎手が5日間の騎乗停止処分を科された際に巻き起こった議論をきっかけに、BHAは鞭使用ルールについての広範囲にわたる見直しを開始していたが、今回のデットーリ騎手の一件は間違いなくその見直しプロセスに組み入れられるだろう。
BHAのスポークスマンであるポール・ストラザース(Paul Struthers)氏は、「競馬における鞭使用法の見直しについて、どのような議論も除外せず、すべてが対象になる、すなわちルールと罰則のいずれも見直し対象とする、と私たちは常に言ってきましたが、その考え方は変わっていません。プリンスオブウェールズSでの出来事が示したのは、現行のルールと罰則がうまく機能していないということです」と語った。
そして次のように続けた。「多くの人々はレース中にそのことに気付きませんでしたし、デットーリ騎手は馬にひどく鞭を入れてはおらず、鞭の使用法で動物福祉の問題はなかったという意見がたくさん寄せられました」。
「しかし、騎手が使う鞭の回数がルールで制限されている事実に変わりはありません。ムーア騎手はルールの範囲内で騎乗し、デットーリ騎手はルールに違反しました」。
一方、 動物愛護団体のホーストラスト(Horse Trust)の政策担当顧問であるポール・ジェプソン(Paul Jepson)氏は、「競馬産業は馬の福祉を最優先事項として考え、馬の福祉に悪影響を及ぼすいかなるテクニックも許可しない、ということを一般の人々に知ってもらわなければなりません」と語った。
デットーリ騎手は昨日(6月16日)コメントしなかったが、代わりにゴドルフィンのレーシングマネージャーであるサイモン・クリスフォード(Simon Crisford)氏は、「デットーリ騎手の騎乗が理想的でなかったことははっきりしていますが、ルールに違反したため過怠金を支払いました。リワイルディングは今日も元気ですし、デットーリ騎手は淡々としています」と語った。
By Graham Green
[Racing Post 2011年6月17日「Dettori case is more evidence for revising whip rules−BHA」]