バーデンバーデン競馬場理事長のドイツ競馬を救う抜本的計画(ドイツ)[開催・運営]
リーデイングオーナーブリーダーでバーデンバーデン競馬場理事長のアンドレアス・ヤコブス(Andreas Jacobs)氏は、ドイツ全国にある競馬場の半数もが閉場となるかもしれないドイツ競馬の、将来に向けた抜本的な青写真の概要を説明した。
ドイツでファーホフ牧場(Gestut Fahrhof)、英国でニューセルズパーク牧場(Newsells Park Stud)を運営するヤコブスヤコブス氏は、2011年にはパリミューチュエル賭事の売上げが約6,000万ユーロ(約60億円)まで下落しており、危機の近づいている産業を活性化させるためには、インターネット賭事などの分野においてより大きな商業上の革新が必要ではないかと述べた。
サラブレッド競馬への賭けは賭事売上げ総額の約半分であり、15年前に国内の48競馬場(うち繋駕競走の競馬場は9場)で行われていた賭事のレベルの25%にすぎない。
ヤコブス氏は、ほんの3年前に財政不安のために破綻したバーデンバーデン競馬場の復興の立役者である。今でさえ、バーデン大賞の総賞金は1990年代の最高額のわずか3分の1の25万ユーロ(約2,500万円)である。
バーデンバーデン競馬場はドイツの賭事総売上げの約30%を売上げており、ヤコブス氏は窮地に立つ産業の将来を守るために、ジョッキークラブに相当する“ディレクトリウム(Direktorium)”に対して強力な対策を取るように促している。
同氏は、「まず、競馬場が多すぎます。おそらく競馬場の数を半分にするべきです。私たちは優良な競馬場を強化すべきで、あまり経営の良くない競馬場を援助すべきではありません」と語った。
そして、「脆弱な競馬場を援助しすぎています。私は東ドイツの競馬場のことを言っているのですが、ベルリンのホッペガルテン競馬場以外への援助は正当化できません。また私たちの冬季競馬も魅力的なものではありません」と続けた。
ヤコブス氏はグロッセヴォッヘフェスティバルにおいて、この取材を受けた。グロッセヴォッヘフェスティバルはドイツ競馬の最も権威ある開催で、今年は先週の9月2日に、デインドリーム(Danedream)のバーデン大賞2連勝でクライマックスに達した。
同氏は、「私たちは、別の競馬場で社会主義のように安易に資金提供するつもりはありません。バーデンバーデン競馬場の方針は、損益分岐点となる商業的条件の下で競馬場がきちんと経営できることを示すことです。バーデンバーデンの競馬は、単なる利益マシンではなく、よく機能している経営であると考えられています」と語った。
そして、「しかし、他場との深い関わりも必要となります。たとえば、私たちは競馬開催日程をよりうまく調整しなければなりません。時折、同じ日曜日に3場で競馬を開催することがありますが、これは賢明であるとは言えません」と続けた。
ヤコブス氏の見解はドイツ競馬界で議論を呼ぶだろうが、同氏は思い切った行動を起こすことが必要だと主張する。
同氏は次のように説明した。「ドイツ全体で競馬の低迷が続いていました。“ディレクトリウム”は経費削減に専念していたので、限られた改革しかできませんでした」。
「私たちは馬を輸出しています。質の良い馬は西ヨーロッパに、質の悪い馬は東ヨーロッパに輸出されています。ドイツの市場は脆弱なので、活性化させなければなりません」。
ヤコブス氏は、最近制定された法案により、課税を避けるために海外拠点を巧みに利用していたブックメーカーからの収入が増加することを望んでいる。
しかし、ドイツのパリミューチュエル賭事を通じた賭事を促進するいかなる努力も、場外馬券売り場がドイツ全土で約50ヵ所しかなくインターネット賭事も制限されているために、妨げられている。
同氏は、「バーデンバーデン競馬場のようにトップにいるということは、ただ規模が大きいと見られるだけではなく、革新を行う必要があることを意味します。いつも弱い者いじめに見られることは誰も望みませんが、往々にしてドイツ競馬は単なる週末の趣味として運営されることがあります。私たちはもっと、そろばんずくにならなければなりません」と語った。
By Nicholas Godfrey
(1ユーロ=約100円)
[Racing Post 2012年9月5日「Baden-Baden chief’s radical plans to save German racing」]