全米ホースマン共済協会、ブリーダーズカップでのサリックス使用を支持(アメリカ)[その他]
全米ホースマン共済協会(National Horsemen's Benevolent and Protective Association: NHBPA)は2月23日、今年のブリーダーズカップでの競走当日のフロセミド(サリックスあるいはラシックスとも呼ばれる)使用を支持することを投票で決定した。
フロリダ州クリアウォーターでの会議の一環として、NHBPAは90分間にわたる抗出血剤に関する獣医討論会を開催した。フロリダ・ホースマン共済協会(Florida Horsemen's Benevolent and Protective Association)の専務理事であり、NHBPAの薬物委員会の議長を務めるケント・スターリング(Kent Stirling)氏は、2月22日にリーダーズカップ協会(Breeders’ Cup Ltd.: BCL)の理事会が優柔不断であったことで、この投票に拍車が掛かったと語った。
スターリング氏は、「ラシックスについての話し合いは続けるでしょうが、当面は引き続きこれを使用することになるでしょう」と語った。
NHBPAと他の多くの北米のホースマン団体は、競走当日のサリックス使用禁止について明確に反対を表明している。BCLが今年のブリーダーズカップの全レースで薬物投与を認めないことを計画しているにも拘わらず、北米で競走当日のサリックス使用を禁じている競馬統轄機関は存在しない。
BCLは2012年、2歳馬へのサリックス使用を禁止した。2歳馬にサリックスを使用しないと誓約した馬主もいた。
2月23日の討論会では、この課題についての興味深い発言が目立った。スターリング氏はジョッキークラブがサリックス使用の問題を葬り去っていると語り、ジョッキークラブのメンバーでサリックス使用に賛成の馬外科医師ラリー・ブラムラージュ(Larry Bramlage)博士は、ジョッキークラブは昨夏、より広い薬物治療・薬物検査体制を進めるためにサリックス問題から手を引いたと語った。
同博士は、「ジョッキークラブは合意にいたることができないと認識し、サリックス問題を棚上げにしました。これは政治的問題です。賛成派・反対派は法的な議論を戦わせていますが、互いに話し合っていません。怒鳴りつけ合っているだけです。私たちが抱えている最大の問題は、この課題についての話し合い方であり、薬物についての課題そのものではありません」と語った。
討論会では、合法的あるいは治療目的であろうと競走当日の薬物使用に関する世間のイメージについても話し合われた。
同博士は、「競走当日の薬物使用は、大衆が理解できない問題です。アナボリック・ステロイドのようなものです。大衆が競馬産業の薬物の使用の仕方を理解することはないので、話合いを成立させるべきでした。競走当日の薬物使用を撤廃することが唯一大衆の理解が得られることです。世間のイメージは重要です」と付言した。
討論会では、サリックスは運動誘導性肺出血の治療手段として幅広く容認され、この薬物が競走馬の予後不良につながるものではないという肯定論があった。
NHBPAの薬物アドバイザーを務めるケンタッキー大学薬理学者であるトーマス・トービン(Thomas Tobin)博士は、「レース前のサリックス使用に関して、長期にわたる度重なる悪影響を疑う理由はありません」と語った。
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の馬内科の教授であるパメラ・ウィルキンス(Pamela Wilkins)博士は、サリックスがカルシウム不足にさせ骨の強度に影響を与えることはないという研究結果があると述べた。同博士は、サリックスが骨折の原因となり得るという主張に対する反論を展開した。
ブラムラージュ博士は、サリックスが骨折に結びつかない件については同意したが、国際基準では、この薬物使用の良し悪しではなく、競走当日の薬物投与について議論がなされるべきであると述べた。
同博士は北米の競馬界について、「私たちはお互いの主張の中間で折り合わなければなりません。この議論のために沈没してしまわないことを望んでいます」と付言した。
サリックスは多くの国で調教中に使用されているが、競走当日には使用されていない。スターリング氏は、「北米以外で競走当日にサリックスを使用している国はないという主張はありますが、南米の国々ではそれが行なわれています」と語った。
By Tom LaMarra
[bloodhorse.com 2013年2月23日「National HBPA to Breeders' Cup: Keep Salix」]