性別が不明瞭な馬に関する問題(イギリス)[その他]
南アフリカの陸上選手であるキャスター・セメンヤ(Caster Semenya)のケースと同じように性別に関する議論の中心となっている競走馬がいるが、BHA(英国競馬統轄機構)は、その馬名の公表をしないとしている。
この非常に珍しい事例は、問題となっている牝馬が繁殖入りの準備にあたり検査された際明らかとなった。牝馬限定未勝利レースなどを2勝したが、この馬は2011年の2歳シーズン中遺伝子的には完全に牡馬であったことが検査で分かった。
この種のものとしては、英国の競走馬で最初の事例であると考えられている。関連する施行規程は見直される結果となったが、BHAはこの馬名と調教師名の公表を控えている。
セメンヤ選手は、2009年世界選手権の800m走で優勝した後に性別検査を受けたあと、1年間競技への不参加を余儀なくされていた。しかし、彼女はその後、競技への出場を許可され、昨年のロンドン・オリンピックで銀メダルを獲得した。
競馬界の性別に関する事案の詳細は公表されないままだが、各調教師は、調教師会からの“性別が不明瞭な馬”という見出しの最新ニュースレターで注意を促されている。
その通知書には次のように記されている。「馬主または調教師は馬の目に見える性別の特徴とその遺伝子構造/内部器官とが矛盾することに気付いた場合、レーシングカレンダーオフィス(Racing Calendar Office)に通知しなければならないという要件を、BHAは施行規程(C)17Aと(E)87に追加した」。
「ある調教師の管理する牝馬が2勝した後に、繁殖牝馬として売却されるために獣医検査を受けた際、遺伝子的には完全に牡馬であることがわかり、この売却は不成立に終わったが、このことが要件追加の理由である」。
「その結果、この馬は牝馬限定を除くハンデ戦とセックスアローワンス(牝馬に対しての減量)のない特別のステークス競走に限り出走できることが決定された」。
この馬が再び競走するかどうかは分からないが、BHAのスポークスマンであるロビン・マウンジー(Robin Mounsey)氏は、「この馬の牝馬限定未勝利での勝利がはく奪されることはないでしょう」と語った。
そして次のように続けた。「この出来事は、この馬がレースを勝ってから1年以上経つまで表面化せず、異議申し立ての時期はとっくに過ぎ去りました。この過ちはまったく意識せずに犯されたもので、失格を検討する理由は見当たりません」。
全国調教師連合会(National Trainers' Federation)のCEOルパート・アーノルド(Rupert Arnold)氏は、次のように語った。「英国ではこれまでこの1つの事例しかありません。この馬の調教師はBHAに通知し、どのレースにこの馬を出走させることができるか尋ね、それに対しBHAが決定を下しました。見た目は牝馬でしたが、二通りの解釈ができ、紛らわしいので、セックスアローワンスのあるレースには出走できないことが決定されました」。
By Graham Green
[Racing Post 2013年4月4日「Questions over gender of fillies’ maiden winner」]