困難な状況にある調教師のデモ(フランス)[開催・運営]
2014年12月12日にドーヴィル競馬場において、約100人のホースマンが不満を表明した。これはマチュー・ブータン(Mathieu Boutin)調教師、サンドリーヌ・タルー(Sandrine Tarrou)調教師、コリーヌ・バランド-バルブ(Corine Barande-Barbe)調教師の呼びかけに応じたものであり、今回はメッセージを送り競馬開催を1時間半遅らせることでデモ参加者たちは満足した。
自称“怒った調教師”たちは、この日のレースを1時間半遅れで施行させることを午後1時直前に挙手で決定したが、統轄機関からのより良い返事を求めてそこに留まり、不満を表明し続けた。(訳注:この日は予定されていた9レース中7レースが施行され2レースが翌日に延期された。デモ参加者は“怒った調教師(Les entraîneurs en colère)”というロゴの入ったTシャツを着用していた。)
イール-ド-フランス地方の2つの調教センター(シャンティイとメゾンラフィット)で活動する多数の調教師やその他の地方のホースマンが駆けつけ、ブータン調教師とタルー調教師を囲んでいた。ただバランド-バルブ調教師はシリュスデゼーグル(Cirrus des Aigles)が香港カップ(G1)に出走するため香港にいた。
調教師は危機に晒されている
このデモの代表者であるブータン調教師は、この行動の重要性を説明するために、カナルプリュス(Canal+)、フランス3レジオン(France 3 regions)、エキディア(Equidia)などのメディアの取材に応じた。
「早急に状況を認識しなければ体制全体が崩壊するでしょう。いつも競走数を増やす措置が採られてきたために、私たち競馬従事者は精根尽きています。競走数・開催時間の増加に対応するために日常経費が激増している上に、資金的制約が加えられることにより、すでに経営危機に瀕しています。フランスギャロ(France Galop)の取締役会が準備している2015年賞金再分配計画は、私たちの財源をさらに引下げることになるので納得することができません。おまけに調教師たちの口を封じ、議論から締め出そうとしています。誰が選挙前に選挙法を修正することを支持するでしょうか?バナナ共和国(訳注:政治的に不安定な中南米の小国の侮蔑的表現)のような酷いやり方です」。
今後について
このデモが調教師の将来に警鐘を鳴らすことができたと“怒った調教師”たちが満足しているのであれば、“伝統的な調教師”たちが不在であったことを残念に思うだけだ。彼らは競馬界を象徴し、“怒った調教師”たちの要求((1) 賞金額の1%引上げ、(2) 現行の馬主手当制度の維持、(3) 現行の選挙法の維持、(4) 各地域における福祉計画の実施、(5) 真の経済的振興策の研究)にもっと重みを与えることができる。タルー調教師は、「その場にいなかったものの、アラン・ド・ロワイエ-デュプレ(Alain de Royer-Dupre)調教師、ミケル・デルザングル(Mikel Delzangles)調教師、ニコラ・クレマン(Nicolas Clement)調教師、パスカル・バリー(Pascal Barry)調教師など多くの“伝統的な調教師”が書面において団結を表明しました」と主張した。他のホースマン(生産者、馬主、騎手)もフランスギャロの幹部との初めての会合が決裂した次の日にこの団結に加わった。ティエリ・ジャルネ(Thierry Jarnet)氏(2013年と2014年の凱旋門賞勝利騎手)は唯一デモに参加した騎手で、「皆が過酷な状況にいます。競馬界は悪い方向に向かっており、ホースマンの主張に私たちの支持を示すことは重要なことで、今こそ抵抗すべきときです」と語った。[ただし、この週の前半に調教師協会(Association des Entraîneurs)のクリケット・ヘッド-マアレク(Criquette Head-Maarek)会長がこのデモ行動に賛成しないという声明を出していた。]
2015年予算案の可決が行われる12月22日が次の区切りであり、その日はすぐにやって来る。ブータン調教師とその同僚は次のように予告した。「次は競馬開催を遅らせることだけでは満足しません。私たちの基本姿勢は示しました。警鐘は鳴らされました」。
フランスギャロのティエリ・ドゥレグ(Thierry Delègue)事務総長のコメント
ドーヴィル競馬場にいたフランスギャロのドゥレグ事務総長は、前日にフランスギャロ本部で開かれ、結論の出なかった“怒った調教師”との会合について言及した。
「多くの点に触れられていることから、会合の前半は礼儀正しいものでした。そのうち、被選挙資格の変更の可能性が取り沙汰されました。この会合に出席した代表者たちはフランスギャロ理事会でこの件が却下されることを望んでいました。しかし、会長は一方的決定を下すことはできないと述べ、代表者たちはこの件が却下されなかったことで競馬開催の中断を決定しました。対話は開かれており、この件は採択されたわけではないので12月22日のフランスギャロ理事会でももちろん話し合われるだろうと私たちは述べました。今後数週間、誰とでも会合を行う準備があります」。
そしてドゥレグ事務総長は、ホースマンが起こした行動についての考えを表明した。「多くのホースマンが困難な状況にあることを認識しています。彼らの労働環境の改善に向け積極的対応を試みることは、フランスギャロの大きな関心の1つです。2015年予算は3,800万ユーロ(約51億3,000万円)減少する可能性がありますが、賞金額は2014年と同水準に維持することを決定しました。できるかぎりホースマンを支援することに私たちが関心を持っている証しです」。
By Francis Fougeray
(1ユーロ=約135円)
[Paris Turf 2014年12月13日「Les entraineurs en colere tirent le signal d’alarme」]