アロゲート、僚馬コレクテッドに敗れる(アメリカ)[その他]
マーティン・ガルシア(Martin Garcia)騎手は6月24日、冗談とすぐに分かるようなコメントをしたが、多くの人々には、それは冒涜的な発言として捉えられた。
6月24日、コレクテッド(Collected)はプリシジョニストS(G3 サンタアニタ競馬場 約1700m)で2着馬に14馬身差をつけて圧勝した。同馬に騎乗したガルシア騎手は、コレクテッド(牡4歳 父シティジップ)は1¼マイル(約2000m)をこなせるとボブ・バファート調教師に進言した。
ガルシア騎手はサンタアニタ競馬場のウィナーズサークルで、満面の笑みを浮かべ、「コレクテッドは1¼マイル(約2000m)でも通用すると思います。しかし、コレクテッドがアロゲートを負かすかもしれないので、バファート調教師はコレクテッドの路線変更を望んでいないかもしれません」と語っていた。
8月19日、総賞金100万ドルのパシフィッククラシック(G1デルマー競馬場)が終了したとき、そのコメントの裏にはただの冗談以上のものがあったかもしれないと思われた。
パシフィッククラシック(約2000m)のゴールまでの1ハロン(約200m)は、同厩馬同士の一騎打ちとなった。単勝1.6倍の1番人気アロゲート(ジャドモントファーム所有)は、先頭を走るコレクテッド(スピードウェイステーブル所有)のペースに乗って、ずっと3番手につけていた。サンディエゴH(G2)で芦毛のアロゲートを負かして番狂わせを演出したアクセラレイト(Accelerate)もこのレースに出走し、2番手につけていた。
しかし、コレクテッドはアクセラレイトを最後の直線に入るときに引き離した。そして、マイク・スミス騎手を背にアロゲートが新たに2番手となった。その後、アロゲートはこれまで幾度となくやってきたように終盤で追い上げたが、僚馬を差すことができなかった。コレクテッドとガルシア騎手は先頭でゴールを駆け抜け、大きなガッツポーズで勝利に酔いしれた。勝ち時計2分00秒70、2着のアロゲートとの着差は½馬身。
コレクテッドの2ハロン毎のタイムは、23秒76、47秒19、1分11秒06で、道中アクセラレイトよりも½馬身先を走っていたが、ガルシア騎手は最終段階ではアロゲートの存在を感じたと語った。
ガルシア騎手は笑いながらこう語った。「背後から大きな動物が現れるのが感じられました。それはまるで、小型車を運転している時に、後ろから大型車に迫られるようなものです。私はその気配を感じながら、先にゴールできることを祈っていました」。
スミス騎手はスタートからゴールまで、アロゲートをレースに集中させた。ゲートを出ると好位置に付けるように同馬に合図を送り、これは初めてのことだが、向こう正面からホームストレッチまでずっと両手を使って同馬を追い続けた。
向こう正面では、コレクテッドとアクセラレイトが勢いよく先行したので、アロゲートはサンディエゴHでの失敗を繰り返してしまうのではないかと思われた。しかし、スミス騎手は最終コーナーを回ってからもアロゲートを追い続けた。サンディエゴHよりも距離が長いので、アロゲートは強くなっていたと言える。ただ、残り1ハロンの地点でのコレクテッドとの2½馬身差は完全には縮められなかった。
スミス騎手はこう語った。「アロゲートの調子が少しでも改善されたのであれば、私たちは満足です。前回よりずっと良かったのですが、ただ何か物足りませんでした」。
バファート調教師はこう語った。「アロゲートは今日、少なくとも戦おうとしていました。着実に良化していますが、サンディエゴHに出走させたことが、彼のやる気をやや削いだように思います。彼をBCクラシック(G1)に出走させることに問題はないと考えています。ただ、コレクテッドがフレッシュな状態でこのレースに臨んだように、アロゲートも心機一転して参戦する必要があると思います。コレクテッドも優秀な馬です」。
コレクテッドの馬主スピードウェイステーブル(Speedway Stable)のオーナーであるピーター・フルーア(Peter Fluor)氏は、パシフィッククラシックで優勝したことに満足していたが、アロゲートがコレクテッドに追いつけなかったことを知ってさらに喜んだ。
同氏は次のように語った。「理想的な流れは、コレクテッドが優勝してアロゲートも健闘するというものでした。レース前にボブに対し、"私は、あなたがワンツーフィニッシュを決めることを望んでいますが、自分の馬に1番となって欲しいです"と言っていました」。
バファート調教師はレース後に「アロゲートはまだ世界最強馬だと思いますか?」と聞かれ、ためらうことなくこう語った。
「アロゲートは依然として世界最強馬だと思います。彼のことを本当に誇りに思っています。最終的に確固たるパフォーマンスを見せました」。
アクセラレイトは、2着のアロゲートに3 ¾馬身差の3着となり、4着のカーリンロード(Curlin Road)を6½馬身差で退けた。それに、5着ハードエーシズ(Hard Aces)、6着ロイヤルアルバートホール(Royal Albert Hall)、7着ドンウォース(Donworth)が続いた。
アクセラレイトに騎乗したビクター・エスピノーザ騎手は、「アクセラレイトは今日、コレクテッドとアロゲートから圧力を掛けられましたが、勇敢に走りました」と語った。
G1初優勝を果たしたコレクテッドは、通算成績を11戦8勝とし、獲得賞金額は120万ドル(約1億3,200万円)に上った。2017年はこれまでサンタナマイル(L)、カリフォルニアンS(G2)、プリシジョニストSなどを制し、4戦無敗である。ケンタッキーのラニーミードファーム(Runnymede Farm)とピーター・キャラハン(Peter Callahan)氏によって生産されたコレクテッドは、母を英国産馬ヘレナベイ(Helena Bay 父ヨハネスブルク)とする。スピードウェイステーブルは、2015年オカラブリーダーズセール社(Ocala Breeders' Sale: OBS)3月2歳調教セールにおいて、コレクテッドを17万ドル(約1,870万円)で購買した。
バファート調教師は、パシフィックマイルとBCクラシック(11月4日 デルマー競馬場)の間のレースでコレクテッドを使う可能性を残している。一方、アロゲートについては「BCクラシックに向けて調教するつもりです」と語った。
By Jeremy Balan
(1ドル=約110円)
[bloodhorse.com 2017年8月19日「Collected Outlasts Arrogate in Pacific Classic」]