アロゲート、第1回ペガサスワールドカップを完全制覇(アメリカ)[その他]
アロゲート(Arrogate)は1月26日(木)、ペガサスワールドカップ(G1)のスクーリングのためにガルフストリームパーク競馬場のパドックに来た。その直後、ボブ・バファート(Bob Baffert)調教師はマイク・スミス(Mike Smith)騎手と手短に話し、別れ際に「しくじるなよ」と声を掛けた。
バファート調教師は、南カリフォルニアが雨続きでも、アロゲートはそこで調教すべきだと分かっていた。週前半には、アロゲートは史上最高賞金額を誇るこのレースに添えられる"立派なサクランボ"だと語っていた。
そしてアロゲートはレースに挑み、この1,200万ドル(約13億8,000万円)のサンデーには立派なサクランボが添えられた。最後の直線を圧倒的な勢いで走り抜け、2着馬に4馬身3/4差をつけて優勝したのだ。最大のライバルであったカリフォルニアクローム(California Chrome)は精彩を欠き、右膝に故障を発症して勝負から退いた。
ペガサスワールドカップは12頭立てだったが、これまで実現したことのない世界最強馬2頭のマッチレースになると予想されていた。しかし、現役最後のレースとなるカリフォルニアクロームは、アロゲートに29馬身1/2差をつけられて9着に終わる。アロゲートがカリフォルニアクロームを負かした2016年BCクラシック(G1)の結果は今一度確認され、誰もがアロゲートをヒーローとして認めた。
バファート調教師は、「アロゲートは卓越した馬です。驚異的な完歩で走ります」と語った。
ゴールまでまだ3ハロン(約600m)以上ある地点で、アロゲートはその完歩で走り、苦しむカリフォルニアクロームを砂ぼこりの中に置き去りにした。ペースメーカーのノーブルバード(Noble Bird)からリードを奪った時には、勝者はすでに明らかとなり、着差と勝ち時計だけが残された問題となった。ガルフストリームパーク競馬場の1周分である1⅛マイル(約1800m)をアロゲートは1分47秒61で走った。馬場は「良」とされていた。 (訳注:後日、複数の関係者からの「もっと速かった」との指摘を受けて再調査が実施され、勝ち時計は1分46秒83に修正された)
2着はシャーマンゴースト(Shaman Ghost)、その3馬身1/2差の3着はネオリシック(Neolithic)となった。4着キーンアイス(Keen Ice)、5着ウォーストーリー(War Story)、6着ノーブルバード、7着ゼンパーフォルティス(Semper Fortis)、8着ブレーキングラッキー(Breaking Lucky)、9着カリフォルニアクローム、10着プレイヤーフォーリリーフ(Prayer for Relief)、11着ウォーエンヴォイ(War Envoy)、12着エラゴン(Eragon)。
アロゲートには単勝オッズ4-5(1.8倍)が付き、6-5(2.2倍)のカリフォルニアクロームを押さえて1番人気となっていた。
アロゲートはBCクラシック以来の出走だった。同馬の調教は、レース近くになってサンタアニタ競馬場の速い馬場で行うことができたが、カリフォルニア州はこの冬、雨天続きのため、臨機応変に対応しなければならないこともあった。朝調教のときにゆっくりとしたペースでしか走れないことも多かったが、いつもの場所で調教したことでこのレースに向けて鍛え上げることができ、普段の調教スケジュールをこなすことができた。
バファート調教師は、「暴風雨などで最悪の条件でしたが、サンタアニタには最高の馬場管理者がいます」とデニス・ムーア(Dennis Moore)氏を引合いに出し、「調教が可能となるように誰もが懸命に働いていました」と語った。
そして、「アロゲートはずっとぬかるみで調教されており、乾いた馬場を走るのは1ヵ月ぶりでした」と付言した。
アロゲートは1月24日(火)にガルフストリームパーク競馬場に到着した。それとは対照的に、カリフォルニアクロームはペガサスワールドカップの3週間前にカリフォルニアを出発し、同競馬場に到着してからは順調に調教を積んできた。しかし、レース中に何か不具合が生じたのは明らかだった。残り800mを切ったところで仕掛けるためにビクター・エスピノーザ(Victor Espinoza)騎手が合図を送っても同馬は無反応だった。その理由は馬房に戻ってきた時にはっきりした。
カリフォルニアクロームは落着きを取り戻したときに右膝に不快感を示し始め、膝に腫脹の兆候である水ぶくれが確認されたと、アート・シャーマン(Art Sherman)調教師は述べた。
カリフォルニアクロームは1月29日(日)朝にケンタッキーに空輸され、テイラーメイドファーム(Taylor Made Farm)で種牡馬入りする予定である。シャーマン調教師はこう語った。「カリフォルニアクロームの状態が土曜夜に悪化しないかぎりそのフライトに乗せるつもりです。著名な獣医師ラリー・ブラムリッジ(Larry Bramlage)博士の診察を受ける予定です。そして、最悪の場合は膝に骨片があるかもしれません。もしそうなら、関節鏡視下手術でそれを取り除くことになるでしょう」。
27戦していたカリフォルニアクロームにとってペガサスワールドカップは現役最後のレースとなった。昨年4月にデビューしたアロゲートはまだキャリアを始めたばかりで、このレースは7戦目であった。1月21日のエクリプス賞授賞式で2016年の年度代表馬のタイトルはアロゲートではなくカリフォルニアクロームに授与されたが、アロゲートはIFHAのロンジンワールドベストホースランキングでトップに輝いた。2017年はアロゲートが年度代表馬の大本命となるに違いない。現在、同馬と比肩する馬はいない。
アロゲートは、デビュー戦で敗北した以外は6連勝を果たしている。トラヴァースS、BCクラシック、そしてペガサスワールドカップと立て続けにG1優勝を達成し、今回700万ドル(約8億500万円)の優勝賞金を得て獲得賞金額は1,100万ドル(約12億6,500万円)を超えた。
4歳のアロゲートはアンブライドルズソング産駒であり、カリド・アブドゥラ(Khalid Abdullah)殿下のジャドモントファーム(Juddmonte Farms)に所有されている。
ジャドモントファームのマネージャーであるギャレット・オールーク(Garrett O'Rourke)氏は、「アロゲートはどんどん強くなります」と語った。
バファート調教師はペガサスワールドカップの前に、2017年後半に万全な状態で挑ませたいので、アロゲートをレース後は休養させると語っていた。アロゲートの現在の1番の目標は、BCクラシックの連勝である。バイエルン(Bayern)、アメリカンファラオ(American Pharoah)、アロゲートでこのレースを3連勝しているバファート調教師は、決して「しくじらない」だろう。
By Jay Privman
(1ドル=約115円)
[Daily Racing Form 2017年1月28日「Arrogate dominates Pegasus World Cup」]