日本でも見られる母父ピヴォタルの影響(日本)[生産]
宝塚記念(G1 阪神競馬場)では日本の一流種牡馬キングカメハメハを父とするミッキーロケットが優勝したが、その結果は世界のサラブレッドの血統にとって重要な意味を持つ。
ミッキーロケットは、この2200mのレースにおいて終盤で力強く追い込んできた香港馬ワーザーを退け、首差の勝利を果たした。馬主は野田みづき氏。調教師は音無秀孝氏。
2017年1月に日経新春杯(G2 京都競馬場)で優勝し前走の天皇賞(春)(G1 京都競馬場)では4着となっていた同馬は、今回の勝利により、社台SSで供用されているキングカメハメハ(父キングマンボ)の12頭目のG1優勝産駒となった。
キングカメハメハは他にもドゥラメンテ、ロードカナロア、ルーラーシップなどのG1優勝産駒を出しており、これらの馬は今や日本を代表する種牡馬である。また母父(ブルードメアサイアー)として、今年の東京優駿(日本ダービー)優勝馬ワグネリアン(父ディープインパクト 母ミスアンコール)を出している。
日本以外の生産者の強い興味をそそるのは、ミッキーロケットの母父だろう。なぜなら、それはチェヴァリーパークスタッド(Cheveley Park Stud)を代表する種牡馬ピヴォタル(Pivotal)だからだ。
ピヴォタルは母父として以下11頭のG1馬を出しており、ミッキーロケットは12頭目である。
今年欧州において、ピヴォタルを母父とする馬の獲得賞金は320万ポンド(約4億6,400万円)弱である。
ピヴォタルが25歳にしてもなお、現役種牡馬として優良産駒を量産していることは称賛に値する。2018年においては、アデイブ(Addeybb)、ブレアハウス(Blair House)、ライトニングスピア(Lightning Spear)などの産駒が活躍している。
ミッキーロケットの母馬に言及することは、時節柄興味深い。なぜなら、それは2009年のロイヤルアスコット開催のサンドリンガムHを制したマネーキャントバイミーラヴ(マイケル・ベル厩舎)だからだ。
同馬の母サブリアン(Sabreon 父カーリアン)は、コヴェントリーS(当時G3)と仏2000ギニー(G1)を制したランドセール(Landseer)の半姉である。マネーキャントバイミーラヴは、タタソールズ社10月1歳セール・ブック1で指定最低価格の7万5,000ギニー(約1,142万円)に達せず主取となった。しかしこの評価が間違っていたことは後に証明される。同馬はハイトオブファッションS(L)を制し、ナッソーS(G1)で名牝ミッデイ(Midday)の3着となったのだ。
将来有望な繁殖牝馬として購買されて日本に渡ったマネーキャントバイミーラヴは、マイフリヴァ(父スマートストライク)、ピエスドール(父ステイゴールド)などの勝馬を送り出している。
マネーキャントバイミーラヴは、サンドリンガムHを制した繁殖牝馬の活躍を継承している。
2006年サンドリンガムH優勝馬レッドエヴィー(Red Evie)はロッキンジS(G1)も優勝し、繁殖牝馬として凱旋門賞(G1)・BCターフ(G1)優勝牝馬ファウンド(Found)を送り出した。また2007年サンドリンガムH優勝馬バーシバ(Barshiba)は繁殖牝馬として、アラビアンクイーン(Arabian Queen)を送り出した。アラビアンクイーンは英インターナショナルS(G1)で、それまで無敗の5連勝を誇っていたゴールデンホーン(Golden Horn)を負かし、記憶に残る優勝を果たした。
このようなサンドリンガムH優勝馬の活躍は、今年同レース(6月22日)を制したアグロテラ(Agrotera)のオーナーブリーダーであるビヨン・ニールセン(Bjorn Nielsen)氏の耳には心地よい音楽のように響くだろう。
宝塚記念の2着馬ワーザーもまた、世界的な注目を集める血統を持つ。同馬の父はニュージーランドのリーディングサイアーのタヴィストック(Tavistock 父モンジュー)である。キャメロット(Camelot)もモンジューを父とする種牡馬であるが、ロイヤルアスコット開催で2頭の勝馬アーサーキット(Arthur Kitt)とハンティングホーン(Hunting Horn)を送り出して健闘している。
By Martin Stevens
(1ポンド=約145円)
[Racing Post 2018年6月24日「Pivotal's prowess as a broodmare sire spreads to Japan」]