G1優勝馬マインドユアビスケッツが引退して日本へ(アメリカ)[その他]
チャド・サマーズ(Chad Summers)調教師は11月14日、G1を数回制したマインドユアビスケッツ(Mind Your Biscuits 5歳)の引退を正式に発表した。ニューヨーク州産馬として史上最高賞金を獲得した同馬は、1月に日本に向けて出発し、2019年種付シーズンは社台ファームで供用される。
サマーズ調教師は、BCクラシック(G1 11月3日 チャーチルダウンズ競馬場)で11着となったマインドユアビスケッツ(父ポッセ)にもう1戦させることを考えていた。その候補レースとして、12月1日のシガーマイルH(G1 アケダクト競馬場)と、11月23日のクラークH(G1 チャーチルダウンズ競馬場)が挙がっていた。しかし、BCクラシックの後に初めて行った調教において、栗毛のマインドユアビスケッツは同調教師の期待にこたえるような意気込みを見せなかった。
サマーズ調教師はこう語った。「これらのレースに出走するのであれば、万全な状態で臨まなければなりません。昨年はブリーダーズカップ(BCスプリントで3着)の後、マインドユアビスケッツは疲労からすぐに回復し、スムーズに調教できました。今回も順調に速歩していました。しかし、レース後初めての調教として、明日の追い切りに向けた日常的な調教を行ったのですが、いつものような活気が見られませんでした」。
「私たちの知っている彼ではありませんでした。いずれにせよ、私たちのために走らなければならない義務など彼にはありません。自分勝手ですが、BCクラシックでの精彩を欠くパフォーマンスの埋め合わせをしたいと思っていました。あれが彼の最後のレースとなって欲しくありませんでした。しかし100%の状態でないならば、出走させません」。
マインドユアビスケッツの関係者たちは、トップスプリンターである同馬のキャリアをより立派なものにするために、約2000mのBCクラシックに出走させるという大胆な決断をした。
同馬は、2016年マリブS(G1)を制した後、2017年と2018年のドバイゴールデンシャヒーン(G1)を連勝し、世界最高の短距離馬の1頭と考えられていた。サマーズ調教師はマインドユアビスケッツの最後の追込みが中距離レースを持ちこたえることができると確信し、2018年シーズンの後半においてこのタイプのレースで優勝することを目標としていた。
マインドユアビスケッツは、8月4日のホイットニーS(G1 約1800m)でダイバーシファイ(Diversify)の2着となり、9月29日のルーカスクラシックS(G3 チャーチルダウンズ競馬場)を制して約1800mでの初優勝を果たした。しかしBCクラシックでは、同馬は向こう正面で8・9番手を走り、そこから順位を上げることはなかった。サマーズ調教師は、運動誘導性肺出血(EIPH)を予防するために使用されるラシックス(フロセミドの商品名)の副作用により生じた結果だろうと考える。
同調教師はこう語った。「BCクラシックの結果は、距離が原因だったとは考えていません。彼は、5ハロン(約1000m)を過ぎたところでレースをやめてしまいました。おそらくラシックスの副作用が生じたのだろうと思われます。彼はラシックスを投与されると鈍くなりがちです。ゆっくりと発走し、自らハミを取ることもありませんでした。レース後に馬房へ戻ってきたときは、まるでマラソンを走ったかのように、バケツ2杯半の水を飲み、45分間も呼吸が元の状態にもどりませんでした」。
「2~3日経ってから採血したところ、彼がひどい脱水状態だったことが分かりました。ケンタッキーの獣医師も、ニューヨークの獣医師も、誰も彼に身体的不調を見出すことはできませんでした。そのため、唯一考えられるのは、ラシックスの副作用です。このようなことは以前もありましたが、この薬剤を30回も投与されている彼のような馬には頻繁に起こりえないことです。調教で活発に走り、良い状態でレースに向かったので、それが思いつく唯一の説明です。調教が順調なのにレースでこのような結果になるようなことは一度もありませんでした」。
サマーズ調教師はBCクラシックでの敗北に傷ついていたが、マインドユアビスケッツは、同調教師の私生活も調教師人生も変えた馬だった。
同馬の通算成績は25戦8勝(うちG1 3勝)、2着10回。獲得賞金額は427万9,566ドル(約4億9,215万円)。
By Alicia Wincze Hughes
(1ドル=約115円)
[bloodhorse.com 2018年11月14日「Multiple Grade 1 Winner Mind Your Biscuits Retired」]