スティーヴンス騎手、3回目で最後となるかもしれない引退表明(アメリカ)[その他]
実のところ、ゲイリー・スティーヴンス(Gary Stevens)騎手(55歳)はこれまでにすでに2回、引退を発表している。それでも、今回の引退表明は衝撃的である。
すでにベテランであり2回の復帰を果たした殿堂入りジョッキーは11月20日、週末にデルマー競馬場のレース後のパレードで落馬して負った脊髄損傷のため、ただちに引退することを認めた。
このスティーヴンス騎手の引退を最初に伝えたのは、デイリーレーシングフォーム紙である。同騎手は同紙に対し、「初めは首の神経が圧迫されたのかと思っていましたが、11月20日のMRI検査で、椎骨(C-4)が脊髄を圧迫していて、もう1度落馬をすれば大変なことになりかねないことが判明しました」と述べた。
スティーヴンス騎手はその輝かしいキャリアにおいて、膝の怪我、そして股関節の怪我に悩まされ、2回引退している。2005年から2012年までの7年間の騎乗中断期間において、スティーヴンス騎手はTVG・NBCスポーツ・HRTVの解説者を務め、競馬界の最前線に居続けた。2013年の復帰はまさにサクセスストーリーだった。その年のプリークネスS(G1)においてオクスボウ(Oxbow)で番狂わせの勝利を果たし、BCクラシック(G1)においてムーチョマッチョマン(Mucho Macho Man)で感動的な優勝を達成した。
スティーヴンス騎手は、2013年に復帰を発表した時にこう述べていた。「週5日、1日9鞍に騎乗するために復帰したわけではありません。優良馬の育成に協力するという希望を持って復帰しました」。
同騎手はエクリプス賞を4回受賞した名牝ビーホルダー(Beholder 父ヘニーヒューズ)の主戦を務めるなど、高いレベルでの騎乗を続けた。2016年BCディスタフ(G1)では、ビーホルダーに騎乗してそれまで無敗だったソングバード(Songbird)を破り、記憶に残る勝利を果たした。それは同騎手にとって11回目のBC競走優勝となり、初めてのBC競走優勝から26年が経っていた。
そのBCディスタフでの名騎乗から1ヵ月以上経ったとき、スティーヴンス騎手は12月に左股関節置換手術を受ける計画を発表した。同騎手の膝の再建手術を行った医師団が、競馬界の超人を治療する任務を再び負うことになった。手術は成功し、2017年3月に不屈のスティーヴンス騎手はオークローンパーク競馬場で騎乗を再開した。
同騎手は今年、2013年以来最多の62勝を挙げており(11月18日まで)、再び波に乗っていた。10月6日のシャープサムライ(Sharp Samurai)でのシティオブホープマイルS(芝G2 サンタアニタパーク競馬場)優勝が、直近の重賞勝利となっていた。
通算5,187勝のうち、三冠競走9勝を達成している(うちケンタッキーダービー3勝)。獲得賞金は2億5,890万ドル(約297億7,350万円)。優秀な牝馬ウィニングカラーズ(Winning Colors)に騎乗して成し遂げたケンタッキーダービー(G1)初優勝は、歴史的快挙となった。なぜなら、牝馬がこのレースを制したのは史上わずか3回目だったからだ。
スティーヴンス騎手はそのキャリアにおいて、セレナズソング(Serena's Song)、シルバーチャーム、サンダーガルチ(Thunder Gulch)、ポイントギヴン(Point Given)など様々な傑出した馬と出会った。同騎手は1997年に競馬殿堂入りを果たし、1998年に卓越した騎手としてエクリプス賞を受賞した。
By Alicia Wincze Hughes
(1ドル=約115円)
[bloodhorse.com 2018年11月20日「Hall of Famer Stevens Retiring from Riding」]