マルセルブサック優勝馬リリーズキャンドル、吉田勝己氏により購買(フランス)[生産]
世界中の生産界の主要人物がドーヴィルに押し掛けた。このフランスの海辺の町では12月8日(土)、アルカナ社ブリーディングストックセール(Arqana Breeding Stock Sale)の1日目が開催され、陽気なムードが漂っていた。
それは風光明媚な町の中心がクリスマスのデコレーションで装飾されていたからだけではない。マルセルブサック賞(G1)を制したリリーズキャンドル(Lily's Candle)がアルカナ社のセリに再び上場され、ナーヴィックインターナショナル社のエマニュエル・ド・セルー(Emmanuel de Seroux)氏により110万ユーロ(約1億4,300万円)もの高額で落札されたからだ。
リリーズキャンドルがアルカナ社10月1歳セールに上場され、ベルトラン・ブーレズ(Bertrand Bourez)氏により1万5,000ユーロ(約195万円)で購買されたのは、わずか1年ほど前のことだ。同馬はファブリス・ヴェルムラン(Fabrice Vermeulen)調教師に預託され、最初の4戦で2勝を挙げた。
ヴィシー競馬場のリステッド競走を制した後、リリーズキャンドルは凱旋門賞前日のセリに再び上場された。そこで同馬は、マルタン・シュワルツ(Martin Schwartz)氏により39万ユーロ(約5,070万円)で購買された。同氏がその高額投資への大きな見返りを得るのには、24時間もかからなかった。リリーズキャンドルはその翌日、パリロンシャン競馬場でマルセルブサック賞を制したのだ。
リリーズキャンドルは12月8日(土)、"安値で買われた1歳馬"から"100万ユーロ以上の競走馬・将来有望な繁殖牝馬"に変身した。ノーザンファームの吉田勝己氏の代理人であるド・セルー氏が、セリの鑑定台の後方にある満員状態のレストランから、同馬を競り落としたのである。
ド・セルー氏はこう語った。「今後のプランは決まっていません。吉田氏が彼女のキャリアの方向性を決定するのを、私たちは待ちます。来年もレースに出走するように思われますが、このことについては改めて話し合わなければなりません。2歳チャンピオン牝馬決定戦であるマルセルブサック賞で優勝したので、彼女はフランスで最も優秀な2歳牝馬です」。
吉田氏はリリーズキャンドルの母ゴールデンリリー(Golden Lily)の半妹リリサイド(Liliside)を購買しており、優良繁殖牝馬を出すこの牝系によく精通している。
ド・セルー氏はこう付言した。「リリーズキャンドルは吉田氏にとても大きな成功をもたらした牝系に属しています。香港ヴァーズ(G1)に出走するリスグラシューも同じ牝系です。吉田氏は彼女の母リリサイドをフランスで購買しましたので、この牝系にとても精通し、大きな魅力を感じています。彼女はそのうち、日本の生産界において完璧なアウトクロスをもたらす1頭となるでしょう」。
リリーズキャンドル(父スティルヴァンドーム)は、その生産者でトゥルジェヴィル牧場(Elevage de Tourgeville)を営むルプドリー一家(Lepeudry family)の素晴らしい手腕を宣伝する1頭である。この一家は、種付料が比較的安い種牡馬から数々のブラックタイプ勝馬を生産しているのだ。
リリーズキャンドルの現在1歳の半妹(父アメリカンポスト)は、アルカナ社10月1歳セールの木曜日のセッションで最高価格となった。同馬を購買したのは、国際的なサッカー選手のアントワーヌ・グリーズマン氏で、落札価格は23万ユーロ(約2,990万円)だった。
ヴェルムラン調教師のパートナーであるジェレミー・パラ(Jeremy Para)氏はこう語った。「吉田氏のような素晴らしい馬主がリリーズキャンドルを購買して下さったことに満足しています。彼女のおかげで、今年は私たちが調教活動を始めて以来の最高の年となりました。リリーズキャンドルには来年も私たちの厩舎にとどまって欲しいと思っていますが、彼女の今後のキャリアの方向性が決まるまで待たなければなりません」。
By James Thomas
(1ユーロ=約130円)
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[Racing Post 2018年12月9日「Lily's Candle lights up Deauville in latest chapter of rags to riches tale」]