インドの"セクレタリアト"、米国でデビュー(アメリカ)[その他]
インドで多くの人々に"セクレタリアト"と呼ばれるサージャントアットアームズ(Serjeant At Arms 父イクティヤール)は2月23日、タンパベイダウンズ競馬場(フロリダ州)における激しい1 1/8マイル(約1800m)の芝のアローワンス競走で2着となり、確かな実績を残した。
インドでステークス競走を16戦14勝したサージャントアットアームズは、これまで賞金67万5,155ドル(約7,089万円)を獲得し、昨年はインドの最優秀マイル馬に選出されている。馬主はクシュロー・ダンジブホイ(Khushroo Dhunjibhoy)氏とヴィスピ・パテル(Vispi Patel)氏である。
ファーガル・リンチ(Fergal Lynch)騎手は、サージャントアットアームズの米国デビュー戦で騎乗するためにメリーランドから駆けつけた。同馬は、最後の直線まで先行馬について内埒沿いを走り、その後、同厩舎のスカラーアスリート(Scholar Athlete)とともに先行馬を内側から交わそうとしたが、昨年8月以来の出走でもあり、わずかに伸びに欠けた。同馬はステークス勝馬4頭を含む6頭立てのこのレースで、スカラーアスリートの¾馬身差の2着となった。
それでも、6ヵ月以上のブランク、やっかいな検疫期間、約1万マイルの輸送を考えると、サージャントアットアームズのタンパベイダウンズでの健闘は見事だった。グラハム・モーション(Graham Motion)調教師は、同馬の頑張りに勇気づけられていた。
モーション調教師はこう語った。「インドから米国への移籍に伴う検疫と輸送は、長くて消耗させられるものであり、本当に骨の折れる体験でした。フェアヒル調教センター(メリーランド州)で彼を受け入れたとき、1ヵ月間で大した調教もできませんでした。リラックスさせ、新しい環境に慣れさせ、輸送による疲労から回復させるだけでした。彼ほどのレベルの馬はもう少し時間を掛けて仕上げたいと思っていました」。
「調教に関してはさすがに優秀で、優良馬が持つ存在感がありました。厩舎スタッフたちは彼のことをとても気に入っており、ちょっとしたファンクラブができたほどです」。
サージェントアットアームズは2017年8月、シーズン最後の出走となったカルナータカマイルチャンピオンシップカップ(インドG2 バンガロール競馬場)での優勝後、米国に移籍することとなった。米国に向けて出発する前にまずインドでの輸出検疫が行われた。シカゴに空輸されてさらに検疫を経たのち、モーション調教師の拠点であるフェアヒル調教センターに到着した。
インドからシカゴまでは約8,000マイルで、そこからフェアヒルまでは733マイル移動しなければならなかった。また新しい環境に慣れ、輸送による疲労から回復した後、サージャントアットアームズは1,000マイル離れたモーション調教師の冬場の拠点であるパームメドウズ調教センター(フロリダ州)に向かった。
フロリダに到着してから、サージャントアットアームズはG1馬リングウィークエンド(Ring Weekend)と一緒に調教を積んだ。モーション調教師はサージャントアットアームズが今後も成長することを確信している。
同調教師はこう語った。「長い輸送、検疫期間、そして8月から走っていないことなど、すべてを考慮すると、素晴しいレースをしたと言えます。私たちのもう1頭の管理馬でこのレースを制したスカラーアスリートは、その能力で苦境を乗り越えてきた馬です。また他にも一流馬が揃っていました。レースの質としてはG3競走に匹敵するでしょう」。
「このレースの後にサージャントアットアームズがどのように成長するかを見守っていきます。しかし今のところ、G2やG3、そしておそらくキーンランド競馬場のアローワンス競走に彼を挑戦させることを模索しています。次の出走は約1ヵ月後になるだろうと思います。今回のレースは約1800mでしたが、彼の適性距離はおそらく1600m~1700mだと考えます。インドから連れ出して、世界に挑戦するチャンスを彼に与えた馬主を称賛したいと思います。今後時がたつにつれて、彼は多くのニュースを提供すると思います。素晴らしい馬です」。
サージェントアットアームズの共同馬主パテル氏は、同馬の米国でのデビュー戦を現地で観戦した。同氏は、米国で出走させるには、他の国々に比べて長距離輸送が必要となると述べ、こう続けた。「欧州や香港などの他の国・地域の一流レースに出走させるには、ほぼ絶えず移動が必要で、いわば拠点を持たないことになってしまうでしょう。インド調教馬への検疫ルールはたいへん厳格です。私たちは彼を国際舞台で戦わせたいのならば、彼にとって何がベストなのかを考えました。そして、拠点と呼べる場所を彼に与えるために、モーション調教師に預託することが最も理に適っていると考えました」。
「サージェントアットアームズが最終的に種牡馬になれるように、米国でいくつかの重賞を勝つことを期待しています。彼の所有権の大半を持つクシュロー・ダンジブホイ氏は、ロイヤルウエスタンインディアターフクラブの会長を8期にわたって務めています」
サージェントアットアームズはインドのナノリスタッドファーム(Nanoli Stud and Agricultural Farms)で生産された。その母ラーイズセレナード(Rahy's Serenade 父ラーイ)は、インドのステークス勝馬6頭を送り出している。その中には、同じく最優秀マイル馬に選ばれたディエゴリヴェラ(Diego Rivera)がいる。
サージェントアットアームズには、ノーザンダンサーの3×5のクロスとヘイルトゥリーズンの5×5のクロスがある。
ケンタッキーで生産されたラーイズセレナードは、1999年キーンランド11月繁殖セールにおいてクリフデンカンパニー(Clifden Company)により8,000ドル(約84万円)で購買された。コンサイナーはウォルマックインターナショナル社(Walmac International)。受胎した状態でアライドフォーシズ(Allied Forces)に売却されて2000年にインドに輸送され、アライズセレナード(Allies Sereade)を出産した。アライズセレナードはインドでステークス競走を2勝し、引退後に繁殖牝馬として3頭のブラックタイプ勝馬を送り出している(訳注:ブラックタイプ競走は、その優勝馬または入着馬の馬名がセリ名簿の血統紹介欄に太字その他の字体で記載されるレース)。
By Doug McCoy
(1ドル=約105円)
[Racing Post 2018年2月27日「Encouraging U.S. Debut for India's 'Secretariat'」]