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海外競馬ニュース
2019年04月18日  - No.15 - 1

名牝ウィンクスが33連勝を達成して華やかに現役引退(オーストラリア)[その他]


 完璧な競走馬ウィンクス(牝7歳 父ストリートクライ)が任務を終えるには、うってつけの日だった。

 この日の午後は、かつてないような希望・憧れ・感動が溢れていた。驚異的な牝馬ウィンクスは最後に熟練したレースぶりを見せ、ファンに"さよなら"を告げながら堂々と舞台を去った。

 これまでの名馬の殿堂においてウィンクスはどの地位にあるのか?それは答えのない問いであり、実際誰も知る由もない。

 ただ確実に言えることは、ウィンクスがクイーンエリザベスS(G1)の決勝線を駆け抜けたとき、その華々しい競走生活に封印が押されたということだ。シドニーのランドウィック競馬場にいた人々はそれを証言することだろう。

 長きにわたりウィンクスに携わった人々は、4年間無敗を守った同馬のキャリアの最終章が書き上げられたことを実感して、とめどもなく涙を流した。

 クリス・ウォラー調教師は、同馬が最後のレースを制した直後の感想を聞かれてこう語った。「ホッとしました。世界中の注目を浴びていることを考えると、彼女が負けたら悲惨だったでしょう。しかし勝とうが負けようが、私たちの人生に感動をもたらした偉大な馬であることに変わりありません」。

 ウィンクスが彼らの生活の中心となってから長い月日が経っている。多くの人々は、昨年10月のコックスプレート(G1)で史上初の4連覇を達成したときに同馬は引退すると考えていた。ところが、同馬の関係者が現役続行を決断したことで、ウィンクスは33連勝を挙げることができ、この忘れがたい好天の午後にいっそう輝かしい形で引退できた。

 33連勝のうちの25勝がG1優勝であることが、この信じられないような偉業をさらに驚異的なものにしている。また素晴らしいことに、クイーンエリザベスSで達成されたG1・25勝目は、ウォラー調教師にとってG1・100勝目となった。

 豪州全体がこの結果を見たくてしかたがなかった。スコット・モリソン首相は総選挙のキャンペーンを中断して、ランドウィック競馬場に足を運んだ。この日の入場者数は4万3,833人で、チケットは完売となっていた。

 クイーンエリザベスS発走の90分前に競馬場の厩舎エリアを訪ねると、数百人もの競馬ファンが柵の周りに集まり、すし詰め状態となっていた。誰もが114番馬房にいたウィンクスを一目見たがっていた。

 レースが始まったとき、ウィンクスは9番ゲートから発走した。大外からスタートした同馬は最終コーナーで内に4頭を見ながら外側を回った。しかし決勝線を目にするや否や、断固たる態度で真剣に追い込み始め、日本からの遠征馬クルーガーを引き離して、拍手喝采と大歓声の中を先頭でゴールした。

 長年のライバルであるハートネル(Hartnell)とハッピークラッパー(Happy Clapper)は、3着と4着となった。サー・マーク・トッド(Sir Mark Todd)調教師が手掛けるヒズエミネント(He's Eminent)は8着がやっとだった。

 ウィンクスの偉大さを意味もなく否定しようとする者は、クルーガーに騎乗した世界的に評価の高いトミー・ベリー騎手の言葉を聞くべきだ。「唖然としました。クルーガーのように優れた末脚の馬はめったにいませんが、それでも敗れてしまいました」。

 ウィンクスは2015年5月からどの馬にも先着させず、クルーガーも敗れてしまった。戦いを挑んだ馬はどの馬も、この7歳牝馬に負かされた。ウィンクスは、スキャンダルに繰返し打ちのめされた豪州競馬界に神が与えた恵みであり、常に明るいニュースを提供してきた。

 ボウマン騎手は「ウィンクスは私の人生を挽回してくれました」と述べ、ウィンクスが連勝し続けた期間について、威厳のある態度で話した。同騎手はがんのために友人たちをなくし、昨年妻クリスティーンの兄弟が自ら死を選んだことで、妻とともにトラウマを抱えていた。それらの悲劇を経験した後では、世界一有名な競走馬に騎乗することのプレッシャーは、苦悩というよりもむしろ特権だった。

 ボウマン騎手は、「私たちはこれまで以上の自信を持って、このレースに臨みました。ここまで、まったく素晴らしい道のりを歩んできました。これが最後なんて信じられません」と語った。

 しかしこれが本当の最後であり、ウォラー調教師はウィンクスが見事なキャリアを歩むことを可能にしてくれた全ての人々に惜しみなく敬意を表した。そして、「スタッフは素晴らしい仕事をしました。彼らがその努力にふさわしい称賛を得られることはほとんどありません」と声を詰まらせた。そして、このような瞬間を夢見ることはなかったと述べ、「やるべき仕事をやってきただけです」と語った。

 同調教師はその仕事を見事に成し遂げた。ウィンクスの馬主たちは、そのことにお墨付きを与えている。同馬は今や史上最高賞金1,456万4,743ポンド(約21億1,189万円)を獲得した。

 デビー・ケピティス(Debbie Kepitis)氏は、「ウィンクスは、これまで出会った中で最高に素晴らしい究極の競走馬です。また、彼女を手掛けたのは最高のコーチでした」と語った。一方、ピーター・タイ(Peter Tighe)氏は豪州をはじめ世界中の競馬ファンに感謝の言葉を述べると泣き崩れた。「ウィンクスをとても愛しています。世界中の競馬ファンに心から感謝したいと思います。素晴らしい道のりでした。誰もが私たちと同様にそれを楽しんだことを嬉しく思っています」。

 今や長い旅は終わった。ボウマン騎手がウィンクスに乗ってコースから引上げるとき、観客は拍手喝采し歓声をあげた。ティナ・ターナーの『シンプリーザベスト』がランドウィック競馬場に響きわたり、飛行機が空に「immortal(不滅)」という文字を書いた。

 名声不朽で、長らく無敗を守り、信じられないほど素晴らしい馬。しかしウィンクスは競馬場から去ってしまう。今や母になるときが来た。彼女が忘れられることは決してないだろう。

By Lee Mottershead

(1ポンド=約145円)

[Racing Post 2019年4月13日「The story ends in style as wondermare Winx leaves the stage with yet another win」]


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