アスコット競馬場とITVの契約更新難航で広がる懸念(イギリス)[開催・運営]
ブックメーカー・賭事客・スポンサーは、アスコット競馬場がITV(英国の民間テレビ局)との契約を更新する重要性を強調している。彼らは、英国一有名な競馬場がITVとの契約を更新しなければ、競馬界は痛手を被ることになると確信している。
ITVはアスコット競馬場に対して、3年契約を更新するかどうかについての回答を8月31日までに出すよう求めている。その3年契約においてアスコットは英国の他の主要競馬場とは違い、不利な条件を受け入れることになる。
この期限は9月まで引き延ばされそうだが、焦燥感に駆られるITVはアスコットと関わることがなくなっても競馬界との関係を継続するつもりである。ベットフェア社(Betfair)はアスコットの障害シーズンの主なスポンサーの1社である。同社は8月26日、現在アスコットと締結している2つの重要なスポンサー契約を存続させるかどうかは、地上波テレビ放映がどうなるかが鍵になるだろうと主張した。
アスコットがITVとの契約更新(これにより現行契約は2021年~2023年に延長される)を引き延ばしているというニュースへの反応として、ITVの競馬放映と賭事売上げの相互関係についても焦点が当てられている。
競馬場メディアグループ(Racecourse Media Group:RMG)は、英国の主要競馬場の大多数を代表する。同グループは、グランドナショナル・チェルトナムフェスティバル・英ダービー(G1)・英チャンピオンズデーなど最も貴重な競馬祭典の今後のテレビ放映を確実にする構えである(英チャンピオンズデーはアスコット競馬場で開催されるが、同競馬場がテレビ放映に係わる権利の全てを所有しているわけではない)。
競馬場所有会社のアリーナレーシング社(Arena Racing Company:ARC)は、ITVから示された契約内容に95%満足していると考えられている。しかしアスコットを支持して、ARCも契約更新を遅らせるかもしれない。アスコットは無料のITV以外では、有料の競馬専用チャンネルのスカイスポーツレーシング(Sky Sports Racing スカイとARCの共同事業体)で放映を行っている。
ITVは競馬場への放映権料の支払いを全体的に引き上げるつもりだが、現行契約には含まれていない権利料をARCが受け取るための要件を厳しくしようとしている。さらに、「全てのITV放映レース」と「テレビ局にもたらされる競馬日程の商業的価値」についての徹底分析が行われ、その結果としてアスコットに対して不利な条件が突きつけられることになった。
アスコットは、ITVとの契約を継続したいと考えており、現在のITVと交わしている契約以外に地上波のTV放映権の交渉を行うことは検討していないと明らかにしている。しかしITVとの契約内容を却下すれば、アスコットは2020年以降の競馬中継を他の地上波テレビ局に移行させるのに悪戦苦闘し、ロイヤルアスコット開催が移行対象から除外される可能性もある。
アスコットとITVの契約更新を熱望しているのはベットフェア社だろう。同社はアスコットにおいて、アスコットチェイス(G1)とクリスマス前の土曜日の主要レースであるベットフェアエクスチェンジトロフィー(G3)のスポンサーを務めている。
ベットフェア社のバリー・オー(Barry Orr)広報部長はこう語った。「スポンサー契約を評価するとき、非常に多くの世帯で見られているITVでのレース放映が大きな要素となります。それは大きな影響力を持っています。地上波と競馬専門チャンネルの両方でレースが放映されるのが理想的なシナリオであり、私たちが今後願っている展開です」。
「弊社がスポンサーを務めるレースが地上波で放映されるかどうかは、スポンサー契約を継続させる動機に大きな影響を及ぼすでしょう。レースが今後ITVで放映されないのであれば、スポンサー契約を交わすことに魅力がなくなるというのは、誰にでも分かることです」。
コーラル社(Coral)もベットフェア社のようにアスコットとスポンサー契約を交わしている。コーラル社のデヴィッド・スティーヴンス(David Stevens)広報部長は、賭事の観点から次のような意見を述べた。「競馬の地上波放映と競馬賭事売上げ増加には直接的な相互関係があるので、1年を通じてすべての看板開催を放映しているITVとの契約をアスコットが更新するならば、私たちはそれを心から歓迎します。年々視聴者数が増加していることは、競馬が社会に浸透していることやその人気を証明しています」。
「アスコットとITVの現在進行中の交渉について、適切にはコメントできないかもしれません。ただし賭事に関しては、ロイヤルアスコット開催は平地シーズンで最も重要な祭典です。アスコットのトップクラスの平地・障害の開催日程とともに、地上波競馬放映の主要部分を構成しています。その状況がこれからも維持されることを望んでいます」。
競馬賭事客フォーラム(Horseracing Bettors Forum:HBF)のコリン・ホード(Colin Hord)議長はこの見解を支持した。そして、「HBFが最近実施した調査によれば、回答者の33%がテレビ放映されているレースの馬券を一層多く購入していると答えました」と語った。
HBFはツイッターでこのように述べている。「HBFは、アスコットのレースが地上波テレビで放映され続けるために行われているすべての取組みを支持します。ITVによるロイヤルアスコット開催中継が無くなれば、それは全ての競馬ファンにとって大きな打撃となるでしょう。#keepracingfreetoair」
ニューベリ競馬場のCEOジュリアン・シック(Julian Thick)氏は、競馬場メディアグループ(RMG)の理事会において全ての独立競馬場を代表している。同氏は、アスコットはその利益を最優先すべきだが、ITVのレース放映の必要性はどれだけ誇張してもし過ぎることはないと感じている。
同氏はこう語った。「アスコットやチェスターを除く全ての独立競馬場を代表して話すとすれば、ITVが競馬界と我々の競馬場のために行ってきた取組みに満足しています。私たちはこの契約更新がすぐにでも成立することを熱望しています。それにより各方面に確信をもたらし、私たちは良好な関係をさらに深めることができます」。
「これは私たちにとってとても重要なことです。視聴者数は増加しており、土曜開催を中心に私たちが交わしている多くのスポンサー契約をテレビ放映が支えているのを目の当たりにしています。華やかな競馬祭典がなくテレビ放映されるレースに頼っているような競馬場にとっては特に、ITVの放映は商業的観点からも重要です。ITVは私たちのために素晴らしい仕事をしてくれています。このパートナーシップが継続することを望んでいます」。
「同時に、独立競馬場を運営している者として、アスコットなどの独立競馬場がその組織にとって最善のことを達成しなければならないことも理解しています」。
By Lee Mottershead
[Racing Post 2019年8月26日「Ascot warned to expect sponsorship and turnover trouble if parting from ITV」]