エネイブル、2020年も現役続行(イギリス)[その他]
名牝エネイブル(牝5歳)は、凱旋門賞での悲痛な敗北から立ち直るチャンスを手にするだろう。馬主のカリド・アブドゥラ殿下が、同馬が来年も現役を続けることにゴーサインを出したのだ。
ジョン・ゴスデン調教師が管理するエネイブルは、2017年英オークス(G1)を制し、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1 以下キングジョージ)2勝をその戦績に加えた。同馬が最後に姿を現したのは凱旋門賞(G1 10月6日)である。史上初の同レースの三連覇に挑んだが2着に敗れた。
アブドゥラ殿下のレーシングマネージャーを長年務めるテディ・グリムソープ(Teddy Grimthorpe)氏はこう語った。「エネイブルは凱旋門賞の後も順調ですが、今年はもう出走しません。今後の予定はすべて彼女の状態によって決まるので、現段階では何も発表できません。それでも凱旋門賞は依然として重要なターゲットです」。
ゴスデン調教師は当然興奮しており、こう語った。「彼女は凱旋門賞の後も健康であり、来年も現役を続けることは彼女にとって素晴らしいことです。これはアブドゥラ殿下によるスポーツマンシップに則った前向きな決定です」。
ビッグレースでエネイブルとコンビを組み、同馬の応援団長の一人でもあるフランキー・デットーリ騎手も喜んでいる。
同騎手はこのニュースを歓迎し、「彼女は来年も現役です。待ちきれません。がんばれ、エネイブル」とツイートした。
ブックメーカーのウィリアムヒル社は人気あるエネイブルの来年の凱旋門賞における単勝オッズを11倍としたが、18分も経たずしてそのオッズを8倍に下げざるを得なかった。
ウィリアムヒル社のスポークスマンであるルパート・アダムズ(Rupert Adams)氏は、「なんとファンの多い馬でしょうか。20分も経たずして10万件以上の賭けを受け付けるなんて、記憶にありません」と述べた。
パディパワー社はエネイブルの来年の凱旋門賞での単勝オッズを7倍(17倍から低下)とし、ベットウェイ社とコーラル社も同じオッズをつけている。
コーラル社のデヴィッド・スティーヴンス(David Stevens)氏はこう語った。「エネイブルが6歳シーズンも現役を続けることは平地競馬にとって大きな後押しとなります。彼女は今年の凱旋門賞であと少しのところで敗れましたが、12ヵ月後にこのレースの三勝目を果たすことに7倍のオッズがつけられています。またこの夏に素晴らしい勝利を収めたエクリプスS(G1)を再び優勝することには、その半分の3.5倍のオッズがついています」。
ラドブロークス社はエネイブルの凱旋門賞での単勝オッズを6倍とし、同馬が来年無敗を守ることに11倍のオッズをつけている(ただし2戦以上した場合)。
ジャドモントファームの自家生産馬であるエネイブルは、2016年11月にニューキャッスル競馬場のデビュー戦(オールウェザー馬場)で優勝したが、翌年の初戦で敗れた。
しかし、その後の12戦をすべて制し、サラブレッド史において最も輝かしい戦績の1つを作り出した。
その戦績には、2017年の英国とアイルランドのオークス(G1)での勝利、キングジョージ初優勝、ヨークシャーオークス(G1)での圧勝、シャンティイ競馬場における凱旋門賞初優勝が含まれる。
エネイブルの4歳シーズンは、春に発症した膝の軽傷のために遅れて始まったが、秋には勢いを取り戻して凱旋門賞を連覇し、その翌月にBCターフ(G1)を制して歴史を作った。
確固たる気性と、巨大なエンジンに恵まれたエネイブルは非の打ちどころのない2019年シーズンを送っていた。エクリプスSを制して、キングジョージとヨークシャーオークスでそれぞれ2勝目を挙げ、10月にパリロンシャン競馬場で運命の日を迎えた。
史上初の凱旋門賞三連勝馬となるための挑戦において、単勝1.5倍の1番人気に推されたエネイブルは最高の崇拝者デットーリ騎手を背に、不朽の名馬の地位を獲得するように見えた。しかし、長年のライバルであるヴァルトガイスト(Waldgeist)に終盤で急襲され、多くの人々が望んだハッピーエンドは壊された。
意気消沈したデットーリ騎手は心底がっかりしていた。エネイブルの関係者は彼女の今後の予定について明らかにしなかった。しかし、幅広く尊敬を集めている馬主のアブドゥラ殿下は10月15日に皆が待ち望んだ発表をし、競馬界にまた1つの贈り物をもたらした。殿下は以前、世界最高レーティングを2回獲得したフランケルに4歳シーズンも現役を続けさせていた。
By James Burn
(関連記事)海外競馬ニュース 2019年No.40「デットーリ騎手、凱旋門賞での敗北について胸中を語る(イギリス)」
[Racing Post 2019年10月15日「She'll be back! Enable to race on in 2020 with a third Arc victory the aim」]