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海外競馬ニュース
2019年12月26日  - No.50 - 3

第1回ピトンズカップ、成功を収める(セントルシア)[開催・運営]


 ロイヤルセントルシアターフクラブ(Royal Saint Lucia Turf Club:RSLTC)は12月13日、セントルシア島南部に建設された競馬場で、野心的な国際競馬プログラム"第1回ピトンズカップ"を開催した。にわか雨の後に虹がかかる風景を背に、総賞金15万ドル(約1,650万円)のこのレースを制したのは、テイラーメイド牧場(Taylor Made Farm)の馬である。

 セントルシアの"国家の日"に開催された第1回ピトンズカップは、有名サラブレッドオーナーのチャイナホースクラブ(China Horse Club:CHC)が計画した。同クラブはこの競馬場の周辺において大規模な統合開発を予定している。

 主催者側は今回のイベントが大成功を収めたと捉えている。そして、優勝馬関係者は独特なスリルを味わった。

 テイラーメイド牧場の副社長フランク・テイラー(Frank Taylor)氏は大喜びで、こう語った。「私たちは数年前、カリフォルニアクロームでドバイワールドカップ(G1)を制しましたが、今回はその時と同じぐらい嬉しいです。CHCがここで発展させようとしている競馬を心から支援しようと思います」。

 優勝馬キャスティングクラウンズ(Casting Crowns 牝4歳 父Warrior's Reward)は最後の直線の真ん中で、レース前半から先頭に立っていたカーネルズプライド(Colonel's Pride せん4歳 父Colonel John)を内側から抜き、1800mのこのレースを楽々と制した。

 ピトンズカップは、ペガサスワールドカップ招待S(G1 ガルフストリームパーク競馬場)と同様に、出走枠(全12枠)を購入して馬を出走させるシステムである(訳注:ただし、2020年のペガサスワールドカップにはこのシステムが採用されない)。レース前に出走取消が1頭あり、最終的に走ったのは9頭だった。各出走枠購入者には、この競馬場での最初のレースとなるクールモアヘレンオブザウエストインディーズS[総賞金2万ドル(約220万円)]に出走する3歳未出走馬が割り当てられた。

 このレースの優勝馬は、ファシグ・ティプトン社(Fasig-Tipton Sales)とブルーウォーターセールズ社(Bluewater Sales)の所有馬リーフカップ(Reef Cup せん3歳 父Twirling Candy)である。

 ファシグ・ティプトン社を代表してこの日現地に来ていたテレンス・コリア(Terence Collier)氏はこう語った。「弊社ととても良好な関係にあるクールモアがスポンサーを務め、ここ数年間の得意客であるCHCが計画したこのレースを勝てたことをこの上なく嬉しく思っています」。

 リーフカップを管理するロビー・ヒューイットソン(Robbie Hewetson)調教師は、「ピトンズカップ開催日は30ヵ国以上で放映もしくはライブ配信されました。私の故郷でもこれらのレースを見た人はいるでしょう」と述べた。同調教師は以前、豪州やニュージーランドを拠点としていた。

 ピトンズカップの出走馬はすべて、以前米国を拠点とした競走馬だった。2018年後半に譲渡あるいは調教されて、レースに備えてフロリダでRSLTCに売却された。カール・ブロバーグ(Karl Broberg)氏はこのイベントの代理人として、2018年10月27日のクレーミング競走(約1400m レミントンパーク競馬場)において単勝2.6倍で3着となったキャスティングクラウンズを7,500ドル(約82万5,000円)で購買した。

 ウィンスターファーム(WinStar Farm)の社長兼CEOであり出走枠購入者のエリオット・ウォルデン(Elliott Walden)氏は、所有馬の1頭を出走させることを計画していたが、帰国する際の検疫の問題を解決できなかったため、その枠からCHCの馬を走らせることになった。

 キャスティングクラウンズはデオン・ヴィサー(Deon Visser)調教師が管理し、中国人ジョッキーのチン・ヨン(Qin Yong)騎手が騎乗した。

 RSLTCの競馬場内には、厩舎が6棟並ぶエリアがあり、どのような馬スポーツでも使えるように設計されている。ピトンズカップ開催日では、観客は仮設テントでレースを観戦した。恒久的スタンドの建設が計画されており、周辺の開発が進めば、ホテルやその他の設備も建設される予定である。RSLTCは2020年に少なくとも毎月、1日当たりの賞金がカリブ海諸島で最高となる開催日を施行するという仮スケジュールを発表した。

 ピトンズカップ開催日はIFHA(国際競馬統括機関連盟)の薬物ガイドラインに準じ、RSLTCの監視下で実施された。スポンサーやパートナーには、クールモア、ファシグ・ティプトン社、キーンランド協会、オカラブリーダーズセールズ社が含まれている。エリザベス女王の生産アドバイザーであるジョン・ウォレン(John Warren)氏も出席していた。

 会場から溢れるほど多数の観客が集まっていた。

 セントルシアのアレン・シャスネ首相はこう語った。「VIPエリアを3倍の広さにしなければなりませんでしたが、それでも人が溢れてしまいました。野外で観戦した人々は私たちが予想した以上に多かったです。初めてのイベントにこれほど大勢の観客が集まったことは、これまでありませんでした」。

 ピトンズカップには国際的な出走馬が集まり、この記念すべきレースを見るために競馬関係者が世界中から集まった。地元の関係者もCHCもセントルシアの新たな経済発展と観光振興の始まりとしてこの機会を歓迎した。

 セントルシアには数々の高級豪華リゾートと国際空港があるが、インフラが不足しており、海外からの投資を引き付けるためのインセンティブを必要としている。

 "カリブ海パール統合開発"の裏の立役者であるCHCの創設者テオ・アー・キン(Teo Ah Khing)氏にとって、この競馬場は最初の具体化した計画である。カリブ海パール統合計画は、さらなるスポーツ施設、住宅地、その他数々の構造物の建設を予定している。それらすべては、投資・道路整備・その他の都市開発を促進するだろう。

 ピトンズカップ開催日の前夜には、ウェルカムパーティー、そして遠く離れた中国やマレーシアなどから200人以上が参加した"投資セミナー"が開催された。その参加者の多くはテオ氏の知合いである富裕層の人々だった。シャスネ首相はセミナーで演説を行い、全体的な開発努力へのRSLTCの貢献を称賛した。

 シャスネ首相はこう語った。「競馬場はゴルフコースのようなものです。住宅地の開発を促進する役割を担います。私たちが必要としてきた、この島に注目を集めるためのエキサイティングな場を作り出します」。

 「今夜ここに来ている人々をご覧ください。欧州、カナダ、米国からの参加者もいます。競馬は私たちが見たこともないような産業になるでしょう。今回具体化したこのプロジェクトの基本計画を自ら作成したテオ氏には、先見の明があります」。

 このプロジェクトには、馬産業従事者を養成するためのアカデミーも含まれている。厩務員のための最初のクラスは、ピトンズカップに向けた準備作業だった。RSLTCの専務理事でCHCの副社長であるエデン・ハリントン(Eden Harrington)氏は、この学校はカリブ諸国の若者たちにチャンスを与えるだろうと述べた。

 同氏はこう語った。「往々にしてこれらの若者たちは人生で成功するために必要な教育を受けられません。この学校は彼らに、セントルシアに来て、将来の基盤を築き、良い市民になるチャンスを与えます。これは彼らの将来に対する投資であり、また、私たちのためでもあります」。

By Bob Kieckhefer

(1ドル=約110円)

 (関連記事)海外競馬ニュース 2019年No.42「チャイナホースクラブのセントルシアにおける競馬場開発(セントルシア)

[bloodhorse.com 2019年12月13日「Taylor Made's Casting Crowns Wins Inaugural Pitons Cup」]


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