サウスウェル競馬場、国際女性デーに女性トップ騎手の手腕を披露(イギリス)[開催・運営]
レイチェル・ブラックモア(Rachael Blackmore)騎手は、昨年のチェルトナムフェスティバルで勝利を挙げた後、性別に関わる質問をされて、「快挙を果たしたのが男性騎手かあるいは女性騎手かを区別しない日がやってきました」と答えた。
それは、サウスウェル競馬場が国際女性デー(3月8日)に開催した女性騎手限定の競馬番組(平地4競走/障害4競走)で繰返し発せられたメッセージである。
ブラックモア騎手はこの日ネース競馬場(アイルランド)で騎乗していたが、ブライオニー・フロスト(Bryony Frost)騎手はサウスウェルのこの開催に参加した。フロスト騎手は昨年のライアンエアーチェイス(G1)をフロドン(Frodon)で制して、ブラックモア騎手よりも1日早く初のチェルトナムフェスティバルG1優勝女性ジョッキーとなっている。
アイルランドと英国の障害競走でそれぞれ女性最多勝を挙げたブラックモア騎手とフロスト騎手は、女性騎手にとってのターニングポイントとも言える2019年シーズンに大活躍した。このシーズンには両騎手の功績に加えて、平地競走でヘイリー・ターナー騎手が32年ぶりにロイヤルアスコット開催で優勝した女性騎手となり(1987年のガイ・ケルウェイ騎手以来)、ホリー・ドイル騎手が女性騎手の年間最多勝となる116勝を挙げた。
いつも熱心なフロスト騎手は、女性の才能を披露するこの開催日において最初の障害2レースを制して、すぐに注目を浴びた。
男性が独占する検量室での経験について、同騎手はこう語った。「そのような環境で成長してきたので、自分が女性であると考えたことがありません。そう考えると10倍つらくなるでしょう。自分が強くて、能力があり、活躍できていることを確信するだけです。チャンスを手にするために努力を重ねるだけです」。
「女性であろうと男性であろうと大した問題ではありません。馬はそんなことを気にしませんから。インタビューで『男性のような腕力がないことについてどう感じますか?』と聞かれたことがありますが、『競馬は腕力がすべてではなく、技術・バランス・リズムが必要です』と答えました」。
フロスト騎手が2勝を挙げた一方で、ドイル騎手は平地の1レース目を制し、これ以上ないほど面白い展開となった。
平地で多くの勝利を重ねるドイル騎手にとって、これは今年の34勝目となった。英国で同騎手よりも多くの勝利を挙げているのは、ベン・カーティス(Ben Curtis)騎手とルーク・モリス(Luke Morris)騎手だけである。ドイル騎手は勝つことへの意欲が強く、ためらいが見られない。
同騎手は「この開催日に参加できて嬉しいです。いつもの開催日と同じように感じました。これまで同様激しいレースをしました。ただ、男性騎手がいないので少し静かに感じます」と述べた。
ちょうど同じ時期に、グレートブリティッシュレーシング社(Great British Racing)は、女性が男性と同じ条件で競うスポーツとしての競馬をプロモートする"ジャストジョッキーズ(#JustJockeys)キャンペーン"を開始している。
【キャンペーン動画】https://www.youtube.com/watch?v=ZK8dQeK_E08
このような女性騎手限定開催(カーライル競馬場でも夏に同様の開催が行われている)がかえって男女の差異を際立たせてしまうと考える人々もいる。しかしBHA(英国競馬統括機構)のアンナマリー・フェルプス会長は、このような取組みを実施する利点はあると信じており、こう語った。
「女性騎手と男性騎手は常に競い合っているので、実施する必要のない開催かもしれません。それでも、国際女性デーにあわせて、競馬にもトップクラスの女性アスリートがいることを披露できる絶好の機会です」。
競馬界の女性の存在感はレース以外でも高まっている。前日の夜に慈善ボクシング大会で勝ったばかりの競馬開催日の司会者アデル・マルレナン(Adele Mulrennan)氏と、チェプストウ競馬場とヘレフォード競馬場の馬場取締委員のリビー・オーフレアティ(Libby O'Flaherty)もこの日のために召集された。
女性アスリートを取り巻く環境はこの10年間で大きく様変わりしており、彼女たちは大活躍している。競馬界もそれに貢献している。このような競馬開催日は、競馬界が現在の状況に満足していないことを示している。
By Andrew Dietz
[Racing Post 2020年3月8日
「Bryony Frost and Hollie Doyle star on unique International Women's Day card」]