ロイヤルアスコット開催などが中止になった場合の損失、保険により補償(イギリス)[その他]
ロイヤルアスコット開催・グランドナショナル開催・英ダービー開催の全てに、新型コロナウイルスなどの感染症を対象とした保険が掛けられていることが判明し、財政的窮地に立つ競馬界は一息つくことができそうだ。
アスコット競馬場もジョッキークラブ(エイントリーやエプソムなどの競馬場を所有)も、ロイヤルアスコット開催や英ダービー&英オークスがグランドナショナル開催と同じように中止となった場合、いくらかの補償が提供される"大規模イベント特約"に加入している。
4月1日には、今年のウィンブルドン選手権(テニス四大大会の1つ)の中止が発表された。しかし同選手権は、保険の契約内容に"パンデミック(感染症の世界的流行)"が入っているので巨額の損失は免れるようだ。
アスコット競馬場やジョッキークラブは、2001年の口蹄疫による危機や昨年の馬インフルエンザの発生を教訓にして、このような異例の理由による競馬開催の中止への保険補償の強化に努めたようである。
しかしどのような保険補償も、競馬界の屈指の競馬場における競馬中止に伴う関連コスト負担の発生を止めることはできない。
競馬開催日程の大部分を補償することは、経済的に実行不可能である。そのため、競馬場や競馬場所有グループは、今後起こり得ることに身構えている。また、競馬以外のイベントが新型コロナウイルス感染拡大のため中止されていることも状況を悪くしている。
ニューベリ競馬場は3月下旬、深刻な経済的打撃を受ける覚悟はできているとし、出資者に対してこう述べた。「私たちはいつも競馬中止に備えていくつかの開催に保険を掛けています。しかし保険会社は今年1月の契約開始時に、新型コロナウイルス感染拡大により生じた損失について、特別な免責条項を設けていました」。
「その結果、メディア権収入・賭事収入への打撃が見込まれる上に、とりわけ競馬中止が5月以降も続いた場合には、かなりの経済的打撃が私たちに及ぼされると推測します」。
競馬中止がもたらす影響は競馬産業の隅々で感じられており、ニューマーケットを拠点とするデヴィッド・エルスワース(David Elsworth)調教師はこう語った。
「私はとても悲観的なので、自分の考えが間違っていると思いたいのですが、状況はまだ悪化していると感じています。感染者数は増え続けています。感染者数の増加幅が小さくなり、減少が見られるまで、不安は収まりません」。
「感染者数が減少し始めたとしても、感染を抑制する措置を取り続けなければなりません。そのため、競馬中止は予想されているよりもずっと長期化すると考えていますが、それが間違っていることを本当に願っています」。
4月9日現在、英国における新型コロナウイルスの感染者数は6万733人であり、このウイルスによる死者数は7,097人である。
By Lee Mottershead and Jonathan Harding
[Racing Post 2020年3月31日「Ascot and Jockey Club set to be protected by insurance if biggest days are lost」]