ケンタッキーダービーが無い場合の経済的打撃は4億ドル（アメリカ）[開催・運営]

　ケンタッキーダービー（G1）は"スポーツにおける最高の2分間（Greatest Two Minutes in Sport）"と呼ばれているが、ケンタッキー州ルイビルでは2週間にわたる祝祭"ケンタッキーダービーフェスティバル（Kentucky Derby Festival：KDF）"が行われる。毎年恒例の北米最大の花火ショーでスタートし、ケンタッキーダービーで閉幕するこの祝祭は町に著しい好景気をもたらす。

　昨年のケンタッキーダービーのシーズンにルイビルにもたらされた直接的な経済効果は約3億7,300万ドル（約391億6,500万円）であり、今年は4億1,000万ドル（約430億5,000万円）と予測されていた。毎年この地域に利益をもたらす観光振興の推進力としては他のイベントをはるかに超えるものである。

　しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により世界中で様々なイベントが中止・延期を余儀なくされ、今年の春は混乱に陥っている。そのため、チャーチルダウンズ競馬場は5月2日（土）に予定されていた第146回ケンタッキーダービーを9月5日（土）に延期した。

　ルイビルに観光客は訪れなくなった。ホテルの客室2万1,000室［ルイビル観光局（Louisville Tourism）は、1泊500ドル～3,000ドル（約5万2,500～31万5,000円 3泊パッケージが最も人気がある）の部屋を調査した］やレストラン・小売店などのビジネスは、米国中でソーシャルディスタンス措置が取られていることで、ほぼ空っぽになっている。

　ルイビル観光局の販売コミュニケーション担当部長であるステイシー・イエーツ（Stacey Yates）氏は、こう語った。「ケンタッキーダービー開催週において、どれほど需要が高く、どれほど大きい収益がもたらされるかを知るには、宿泊料に注目するだけで十分です。昔から、多くのレストランと小売店がこの時期を"第二の休暇シーズン"と呼んでいました。ケータリング業者から葉巻販売店にいたるあらゆるビジネスの中には、この繁忙月を頼りにするものもあるでしょう。特にホテルにとって、毎年この時期はそのビジネスの大きな部分を占めています」。

　ルイビル観光局はイベントが中止・延期になる前に、2020年のケンタッキーダービー＆ケンタッキーオークス（G1）がこの町にもたらす直接的な経済効果は、昨年の3億5,650万ドル（約374億3,250万円）を上回る3億9,440万ドル（約414億1,200万円）になると試算していた。この額（2週間に及ぶKDFを含まない）は、ルイビルに経済効果をもたらすイベントの中でも最高となり、第2位の 全米リーダーシップ＆スキル会議（National Leadership and Skills Conference 今年は中止が決定）について試算された経済効果の14倍だった。

　イエーツ氏は「延期となったケンタッキーダービーの直接的な経済効果を見積もるのは時期尚早ですが、4億ドル（約420億円）ほどの経済効果は期待できないでしょう」と語った。

　当初4月25日に春開催を始める予定だったチャーチルダウンズ競馬場は、競馬を開始できる時期について、アンディ・ベシア州知事と対話を続けている。厩舎エリアのオープンは何度も先送りにされており、直近では5月5日以降に延期された。

　チャーチルダウンズ競馬場のケビン・フラナリー（Kevin Flanery）会長は、未曽有のパンデミックが起こっている中で責任ある決定を下すためにリアルタイムの情報に対応していると述べた。2019年のダービーウィークエンドの賭事売上げは記録を達成した。そのわずか1年後にコロナウイルスによる混乱がもたらされた。2019年のあらゆる賭事媒体を通じたケンタッキーダービー当日の賭事売上げは、それまでで最高だった2018年よりも11％増加して2億5,090万ドル（約263億4,450万円）を記録した。ケンタッキーダービーのみの賭事売上げは前年比10％増の1億6,550万ドル（約173億7,750万円）に上った。

　フラナリー会長は、「ケンタッキーダービーは、様々な意味でこの地域の活力源です。私たちは、 ケンタッキーダービーはルイビルのダービーであることを心得ています。経済効果は4億ドルと推定されていました。ケンタッキーダービーは2分間のレースですが、この州の人々にとってずっと貴重なものです」と語った。

　新型コロナウイルスの感染拡大とケンタッキーダービーの延期に対応し、KDFも70以上の関連イベントを延期した。KDFの広報担当のエイミー・ボイド（Aimee Boyd）氏は、KDFは推定1億2,800万ドル（約134億4,000万円）の経済効果をルイビルにもたらすと述べた。

　KDFの最も盛大なイベントは"サンダー・オーバー・ルイビル（Thunder Over Louisville）"で、オハイオ川のインディアナ州側とケンタッキー州側の両岸に観衆を集める航空ショーと北米最大の花火大会である。このイベントの日程は8月15日に変更された。また、ランナーがチャーチルダウンズ競馬場の馬場内を走る"ヒューマナミニマラソン（Humana miniMarathon）"の日程は8月22日に変更された。これらのイベントは当初、4月に予定されていた。KDFは"フェスティバル・アットホーム（Festival at Home、家で楽しむフェスティバル）"を制作し、ミニマラソンまたは自転車競技イベント"ツール・ド・ルー（Tour de Lou）"にバーチャルで参加する機会をファンに提供する。

　ルイビル観光局によると、KDFのオープニングである"サンダー・オーバー・ルイビル"は、今春約72万5,000人の観客が見込まれ、1,600万ドル（約16億8,000万円）以上の経済効果をもたらすと予想されていた。

　不安は今年中続きそうだが、チャーチルダウンズ競馬場はケンタッキーダービーに照準を定めている。

　フラナリー会長は、「ケンタッキー州の人々は立ち直りが早いことを知っています。私たちは短期間に現在やるべきことを全てやっています。この苦境を乗り越えることができれば、これまで以上に強くなれるでしょう。ケンタッキーダービーの146年の伝統を続けていくつもりです」と付言した。

By Christine Oser

（1ドル＝約105円）

［bloodhorse.com 2020年4月27日［Silent Spring: Delayed Derby's Impact on Louisville］］