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海外競馬ニュース
2020年01月23日  - No.3 - 3

ITPPの陽性反応により、ドーピング戦争が新たなステージへ(フランス)[獣医・診療]


 フランスは、化合物質ITPP(ミオイノシトールトリスピロリン酸)の陽性反応が確認された初めての主要競馬国となった。これにより、昨年9月にパリロンシャン競馬場でG1を制した馬が失格となった。

 ITPPは純血アラブ限定のドラゴン賞(G1)の優勝馬アコヤ(Akoya)の尿検体から検出された。 1月中旬にフランスギャロ本部(パリ)で審議され、同馬は失格となり、オランダ人調教師のカリン・ヴァン・デン・ボス(Karin van den Bos)氏には1年間の調教停止処分が科された。

 ITPPは赤血球膜あるいはヘモグロビンに結合することで作用し、酸素の放出を促進する。

 ITPPは、治療目的の使用は許容されるが競技中に体内に残っていてならない薬剤とは違い、馬の生涯のどの段階においても使用が禁止されるドーピング剤のカテゴリーに入っている。しかし科学界の一部では、スポーツ選手および競走馬へのITPPの有効性について異議が唱えられている。

 ヴァン・デン・ボス調教師はいかなる不正行為も強く否定したが、アコヤの競走後の検体からITPPが検出されたことについての十分な説明はできなかった。

 フランス競馬界の公式検査機関である競馬研究所(Laboratoire des Course Hippiques: LCH)の検査によりITPPの陽性反応が出て、モーリシャスにあるカンティラブ研究所(Quantilab)によりそれが確認された。

 LCHには65名のスタッフがおり、毎年平地競馬と速歩競馬の3万頭から採取した検体を検査している。

 LCHのリュドヴィック・バイイ-シューリベリ(Ludovic Bailly-Chouriberry)所長はしばらく前からITPPに目を光らせてきたと述べた。

 「2012年と2013年にITPPを検査するための技術を開発しました。同時期に、香港の当局もこの物質について研究していました。その後、私たちは送られてきた全ての検体にこの技術を適用してきました」。

 「フランスで初めてのITPPの陽性反応であり、12月に香港で行われた会議でこのことを取り上げて世界中の検査機関の人々と話し合う機会が持てました。他のどの検査機関も陽性反応の事例を報告していません」。

 バイイ-シューリベリ氏はこう付言した。「ドーピングはかなり循環的です。ある薬物の陽性反応が立て続けに出ても、その後、それが下火になることがあります。インターネットの発達により、世界のどこからでも物質を取り寄せることができます。全ての検査機関は頻繁に連絡を取り、次に浮上する可能性のある脅威や、禁止薬物が押収された事例などを互いに警告し合っています」。

 英国競馬界も潜在的な違法薬物使用に対応するためにITPPの検査を準備している。

 最新の統計によれば、2018年にフランスで出走した22頭が禁止薬物の陽性反応を示し、調教場においてさらに5頭が陽性反応を示した。これは、実施された全検査の0.23%に当たる。

 アコヤの関係者は現在のところ訴訟を起こしていない。同馬の失格により、このレースの優勝馬はチャールズ・グルダン(Charles Gourdain)調教師が管理したアルシャムース(Al Shamoos)となった。

By Scott Burton

[Racing Post 2020年1月20日「New front in doping war as world first leads to Longchamp disqualification」]

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