パレスピア、ジャックルマロワ賞を制して最強マイラー候補に(フランス)[その他]
優良マイラーが活躍する今シーズン、パレスピア(Palace Pier)はジャックルマロワ賞(G1 ドーヴィル 直線1600m)で数々の一流馬を撃退する派手なパフォーマンスを披露し、最強マイラーをめぐる議論に名乗りを上げた。
同馬のこのような戦いぶりで、フランキー・デットーリ騎手の週末は完璧なものに仕上がった。同騎手は今週、イボアフェスティバル(ヨーク競馬場 8月19日~22日)に参加しない決定を後悔せずに、ノルマンディーを精いっぱい楽しめる。
ジョン・ゴスデン調教師は6年前、パレスピアの父キングマン(Kingman)でこの競走を圧勝しており、再び勝利を手にしたことに満足している。優秀なマイラーである父子はいずれも、夏場のドーヴィルにありがちな土砂降りによる重馬場を克服する格の違いを見せつけた。
渡仏には隔離措置が必要なために自宅でテレビ観戦したゴスデン調教師は、自らの目で馬場状態を判断できなかったが、パレスピアの奮闘ぶりを確認した。
「キングマンがこのレースを制した年よりもひどい馬場状態です。パレスピアはこのような馬場は初めてで、調教でも重い馬場を経験したことがありません。少しびっくりしただろうと思います」。
「彼の度胸には驚きました。才能のある馬だと分かっていましたが、ゴールまで残り600mの地点、すなわち引き込み線から本コースに入るところでフランキーがパレスピアをなだめているのを見て、"これはまずい"と思いました。(妻の)レイチェルに"彼はこの馬場に苦しめられている"と言いました。このような馬場が得意だとは到底思えなかったのです。しかし彼はそれを乗り切る格の違いと根性を見せつけました」。
アルパインスター(Alpine Star)が2着、サーカスマキシマム(Circus Maximus)が3着となった。今やパレスピアが文句なしの最強マイラーとなるかどうかは、モハーザー(Mohaather サセックスS優勝馬)の存在が鍵となる。ゴスデン調教師はシーズン閉幕までにパレスピアとモハーザーは必ず一度は対戦すると考えている。
「彼は私たちをワクワクさせてくれるに違いありません。また良好な馬場状態で走るのを見てみたいです。現在の大きな目標はクイーンエリザベス2世S(G1 10月17日)です」。
「BCマイルを狙えるかどうかは分かりません。1~1¼マイル(約1600m~2000m)を得意とする馬だと思っています。米国のタイトなコーナーをこなせるか疑わしいです。私が迷っているのはむしろ、ムーランドロンシャン賞(G1 1600m 9月6日)に挑ませるかどうかです。そして最終目標は断然、クイーンエリザベス2世Sです。率直に言えば、その後は来シーズンに向けてしっかり備えたいと思っています」。
「キーンランドの芝コースに良い思い出がありません。ゴールデンホーンに敗北を味あわせてしまいました」。[訳注:2015年英ダービー馬ゴールデンホーンは、愛チャンピオンS (G1)& 凱旋門賞(G1)を制した後にBCターフ(G1 キーンランド)に遠征したがファウンドに敗れて2着となった]
デットーリ騎手もパレスピアに心を奪われている。同馬はニューキャッスルで遅いデビューを果たしたが、その後G1で優勝するまでに成長し、今や5戦5勝の無敗馬である。
これでジャックルマロワ賞5勝目を果たしたデットーリ騎手はこう語った。「パレスピアが力強くダッシュすることは分かっていましたが、残り600mの地点で優良馬3頭が3馬身以上前を走っていました。まだスパートをかけたくはなく、"力をたくわえておこう"と彼に言いました。残り300ヤード(約270m)を切ったとき、先頭からまだ2馬身離されていましたが、彼がどれだけ優れているかを見せる場面となりました」。
「馬場状態を心配していたのですが、彼は見事にこなしました。彼は素晴らしい気性をしています。冷静沈着でなにごとにも慌てません」。
「とても落ち着いているのですが、内に力を秘めています。5戦しただけの馬にしてはかなりの奮闘ぶりで驚かされました。なぜなら、強いライバルを相手にこのような激しい競走をしたことがなかったからです」。
デットーリ騎手は、パレスピアの台頭は春の状態を考えると驚くべきものだと認めた。
「春にこの馬に騎乗して、私たちはギニー競走に挑戦させようとしていましたが、まったくやる気がありませんでした。とてものんびりしていました」。
「ニューキャッスルのレースで彼を目覚めさせたのですから、ジョンはやはり天才です。パレスピアは実戦することで大きな自信をつけ、見違えるような馬になって戻ってきました。だからセントジェームズパレス(G1 約1600m ロイヤルアスコット開催)に挑戦させることにしました。突然パレスピアのスイッチが入り、"私たちのところには強い馬がいる"と実感しました」。
アルパインスターはステファーヌ・パスキエ騎手に早めに促され、小さな体でそれに応えて力を振り絞り、2着の座を手に入れた。サーカスマキシマスは健闘したものの3着となった。
これら2頭はニアルコスファミリーの勝負服を背負って走った(サーカスマキシマスはクールモアとの共同所有)。レーシングマネージャーのアラン・クーパー(Alan Cooper)氏はこう振り返った。「どの馬にとっても走りにくい馬場でした。関係者は全員、より良い状態を望んでいたでしょうが、どのようなものであれその日の馬場状態に折り合わなければなりません。言い訳になりません」。
「サーカスマキシマス(牡4歳)はとてもタフな馬で、G1での成績は素晴らしいものです。今年の3歳馬も強そうですね。アルパインスターはこのレースでも実力を発揮しました。しかし一番強い馬が勝ちました」。
「アルパインスターはオペラ賞(G1)に向かうでしょう。サーカスマキシマスの今後の進路については関係者全員と話し合ってから決めます」。
ペルシアンキング(Persian King)は3着馬の3馬身後ろの4着となった。前回の覇者ローマナイズド(Romanised)は残り2ハロンでライバルを脅かしたが、うんざりするような馬場状態で加速できず5着となった。
アイルランドに帰国するために2週間隔離されるビリー・リー(Billy Lee)騎手はこう語った。「ローマナイズドの走りっぷりに満足しています。道中悠々と走り、残り2ハロンの標識のところではフランキーと同じぐらい勢いよく走っていました。3着の座は手に入れられるだろうと思いましたが、この馬場状態ですから最後の1ハロンが長く感じられました」。
By Scott Burton
[Racing Post 2020年8月16日「Unbeaten Palace Pier powers clear in Marois with QEII on the agenda」]