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海外競馬ニュース
2020年08月20日  - No.32 - 4

チャーチルダウンズ社、アーリントンパーク競馬場の売却を検討(アメリカ)[開催・運営]


 チャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.:CDI)のCEOビル・カースタンジェン(Bill Carstanjen)氏は7月30日の第2四半期決算の電話会議中、CDIがイリノイ州シカゴに所有するアーリントンパーク競馬場の将来について聞かれ、直接的ではないが、「アーリントンパークについて長期的解決策はありません」と答えた。

 そして、「ある時期がくれば、その土地は他のもっと素晴らしい目的のために役立つでしょう。しかし、競馬運営免許を譲渡するか、あるいはイリノイ州で競馬を継続できるチャンスがあるかを見極めるため、支援者と建設的に取り組みたいと思います」と語った。

 アーリントン競馬場の将来についてのこのコメントに対し、SNSにはその夜厳しい批判が殺到し、翌朝も不満がくすぶっていた。

 アーリントン競馬場の将来も、新型コロナウイルスの"被害者"なのだろうか?ウイルスの感染拡大はいくつかの産業や企業の終焉を加速させたが、CDIは2020年よりも前からシカゴエリアで問題の火種を抱えていた。2019年夏にCDIが極めて重要なゲーミング運営免許を申請しなかったとき、おそらく最後の警告が発せられていた。

 コロナ禍において競馬を短縮日程で開催することを決定する時ですら、アーリントン競馬場とイリノイ州サラブレッドホースマン協会(Illinois Thoroughbred Horsemen's Association:ITHA)は数ヵ月にわたって協議を重ねなければならなかった。最終的に2021年まで競馬を継続することが合意された。

 ITHAは7月30日のカースタンジェン氏のコメントを受け、痛烈な声明を出した。その翌日、ITHAのマイケル・キャンベル(Michael Campbell)理事長は本誌(ブラッドホース誌)にこう語った。

 「CDIが漠然ではあるものの一応は立場を表明したことに感謝しています。しかし覚えておくべき点は、今年の年末か2021年末か分かりませんが、近い将来アーリントン競馬場での競馬に終止符が打たれるということです。CDIがゲーミング運営免許を申請しなかったときに、終わりが訪れることをうすうす感じて1年以上気を揉んでいました。それは重大な出来事でした。当時、米国第三の都市であるシカゴのアーリントン競馬場でのゲーミング運営免許を断る企業があるとは、誰も考えていませんでした」。

 「CDIはイリノイ州の競馬産業全体を危険にさらしています。世界トップレベルのアーリントン競馬場には場内と厩舎地区に数えきれないほどの職があり、言うまでもなくアーリントンハイツやその周りの地区にも多くの雇用があります。私たちは"競馬場がゲーミング運営免許を活用する"もしくは"ゲーミング運営業者にその免許を売却する"ように主張すべきです。CDIは企業利益や州外ゲーミング企業ではなく、競馬を一番に優先すべきです」。

 「現状では、数千もの人々が故郷を離れたり、家族と別れたり、離職しなければならず、私もその一人です。アーリントンでは賞金レベルが低すぎるので、バージニア州で馬を出走させています」。

 「イリノイ州のホウソーン競馬場やフェアマウント競馬場では、ゲーミング運営免許は十分な効果がありました。両競馬場はゲーミング収入を賞金体系で分配しなければならないという事実を受け入れました」。

 CDIにコメントを求めてメールしたが、回答はなかった。

 1983年にリチャード・L・ダチョソワ(Richard L. Duchossois)氏があるグループを率いてアーリントン競馬場を買収した。1985年に火災により同競馬場は解体され、1989年に正式名称「アーリントンインターナショナル競馬場(Arlington International Racecourse)」として再オープンした。観客を重視して設計されたことで、北米で最も愛される競馬場の1つとなった。1998年と1999年に、ダチョソワ氏は契約上のいざこざのために同競馬場を閉場した。

 2000年6月23日、CDIのCEOトム・ミーカー(Tom Meeker)氏はCDIがアーリントン競馬場を購入したことを発表した。

 今世紀の初めには"相乗効果(synergy)"や"集約(aggregation)"という言葉が流行し、それらは大規模なビジネスにおけるマントラ(呪文)となっていた。サラブレッド競馬界では統合合戦が行われ、競馬の背景は目まぐるしく変化した。

 それが始まるきっかけを作ったのは、フランク・ストロナック氏のマグナエンターテインメント社(Magna Entertainment Group:MEG)だ。MEGは1998年にサンタアニタパーク競馬場、1999年にガルフストリームパーク競馬場とゴールデンゲートフィールズ競馬場を買収した。その後、ベイメドウズ競馬場・レミントンパーク競馬場・ロンスターパーク競馬場・メリーランドジョッキークラブ(ローレルパーク競馬場&ピムリコ競馬場)・ポートランドメドウズ競馬場を戦略的に傘下に収めた。

 CDIは当時、エリスパーク競馬場(ケンタッキー州)とフージャーパーク競馬場(インディアナ州)を所有していたが、1999年にハリウッドパーク競馬場(カリフォルニア州)を1億4,000万ドル(約147億円)、コルダー競馬場(フロリダ州南部)を8,600万ドル(約90億3,000万円)で購入することでMEGに対抗した。CDIはその後、これらの競馬施設の大半を手放している。

 CDIは2007年にフージャーパーク競馬場を売却し、2006年にエリスパーク競馬場(1998年に購入)をロン・ギアリー(Ron Geary)氏に売却した。

 さらにCDIは2005年、ハリウッドパーク競馬場をベイメドウズランド社(Bay Meadows Land Company)に2億6,000万ドル(約273億円)で売却した。その土地にはソフィスタジアムが建設され、NFL(アメリカンフットボール)のロサンゼルス・ラムズとロサンゼルス・チャージャーズの本拠地となっている。

 コルダー競馬場は2010年にカジノ・ゲーミングの営業を開始し、2013年と2014年にストロナックグループが所有するガルフストリーム競馬場と競合していた。その後、ストロナックグループはコルダー競馬場の競馬運営権を買収した。2015年4月、CDIは再開発のために同競馬場の1,400馬房を取り壊し、グランドスタンドは2016年10月までに解体された。

 20年前に優れたビジネスセンスとされていたものは変化した。サラブレッド競馬の運営において、ゲーミングは20年前よりもずっと大きい部分を占めるようになった。どうやらCDIは、"中心的な商品に焦点を合わせるために"生産ラインや他の事業部門を切り離した多くの大企業と全く同じことを行ったようだ。

By Evan Hammonds

(1ドル=約105円)

[bloodhorse.com 2020年7月31日「Churchill Downs CEO: Sale of Arlington Park Possible」]

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