オーセンティック、先行逃切りでBCクラシック優勝(アメリカ)[その他]
スペンドスリフトファームのオーナー、B・ウェイン・ヒューズ氏は9月5日、日程が延期されたケンタッキーダービー(G1 チャーチルダウンズ)でオーセンティックがゴール板を先頭で駆け抜ける姿を、自宅でくつろいで見ていた。新型コロナウイルスがケンタッキー州で猛威を振るい、ケンタッキーダービーの舞台への入場は制限されていたため、ベテラン馬主はその勝利の喜びを遠方で噛みしめていた。
その2ヵ月後の11月7日、オーセンティックは総賞金600万ドル(約6億3,000万円)のBCクラシック(G1 キーンランド)に出走することとなった。今回ばかりは継続するパンデミックの脅威でさえも、87歳のヒューズ氏を競馬場から引き離すことはできなかった。
スペンドスリフトファームの紫とオレンジの勝負服を背負ったオーセンティックは、お手本のような走りを披露した。キーンランドの本馬場で行われた約2000mのレースで、スタートからゴールまで終始先頭を走って楽勝を果たし、この距離の最強馬という高い評価を決定的なものにした。
スペンドスリフトファームの会長であるエリック・グスタフソン(Eric Gustavson)氏はこう語った。「これで頂点に到達しましたが、ひきつづき前進したいと思っています。誤解しないでください。それはウェインを別にした話です。彼は長年競馬界に多大な影響を与えてきました。50年以上も競馬界に身を置き、2004年にスペンドスリフトファームを購入し、大きな事業に発展させました。ウェインにとってスペンドスリフトファームはすべてであり、我々にとってはそのスペンドスリフトファームのチームが大切なのです。ウェインは頂点を極めています。私たちは彼のためにお祝いをしたいと思っています」。
オーセンティックはケンタッキーダービーで優勝したにもかかわらず、BCクラシックでは1番人気とならなかった。バファート厩舎の最有力馬インプロバブルはスタートがスムーズではなく、体勢を整えるまでに数頭と接触し、向こう正面でようやく落ち着いた。
オーセンティックはジョン・ベラスケス騎手を背に、ケンタッキーダービーのときと同じようなスタートを切り、まっすぐ進んで先頭に立ち、内ラチのすぐそばを速いペースで走った。もう1頭の同厩舎馬マキシマムセキュリティはオーセンティックのすぐ外側につけて2番手を走っていたが、3番手を走っていた1番人気馬ティズザローにより早くからプレッシャーをかけられていた。
オーセンティックは向う正面を楽に走っているように見えた。インプロバブルは発走時の遅れを取り戻そうと外側で追走し、グローバルキャンペーン(Global Campaign)に頭1つなんとか抜け出し、最後の直線の入口では2番手を走っていた。インプロバブルとマキシマムセキュリティからプレッシャーをかけられていたティズザローは最終コーナーを回ったころからスピードが落ち、5番手に後退した。
インプロバブルは直線でオーセンティックをとらえるためにベストを尽くしたが、オーセンティックがゴールを目指してダッシュして馬群をさらに引き離したときに、スピード能力で適わなかった。最後の数完歩で挑戦してくる馬はおらず、オーセンティックは2着馬に2¼馬身もの差をつけてゴール板を駆け抜けた。
インプロバブルは2着を確保し、グローバルキャンペーンは3着となった。その後に、タシトゥス、マキシマムセキュリティ、ティズザロー、タイトルレディ、バイマイスタンダーズ、トムズデター、ハイヤーパワーが続いた。
ボブ・バファート調教師はこう語った。「ジョンには"今週君が乗る馬は君がダービーで乗った馬だ。自信をもって乗れるし、攻めて行けるし、自在に乗れる。本当に優れた馬だ"と言いました」。
ベラスケス騎手はこう語った。「私たちはレースについて話し合いました。このコースが馬にとってかなり走りやすいものになると分かっていました。そして、その傾向を利用しようということになりました。彼を先頭に立たせて、内ラチ沿いを走らせ、"追いつけるものなら追いついてみろ"という状態に持っていきました。彼は私が思っていたとおりに走ってくれたと思います」。
「騎乗させ続けてくれたボブと馬主の方々のおかげです。私を信頼してこの馬に乗るチャンスを与えてくれたすべての人に感謝します。騎手として年季が入ってきましたが、今ではそれが良いことだと思っています。長年このレースでの勝利を求めてきました。BCクラシックを勝つのは初めてであり、ボブには感謝しています」。
走破タイムは1分59秒19。このタイムは2015年にアメリカンファラオ(ボブ・バファート厩舎)が打ち立てた2分00秒07を上回った。BCクラシックではタイム計測器がうまく作動せず、エクイベース社が手作業でタイムを計測した。ハロンタイムは明らかになっていない(訳注:後日走破タイムは1分59秒60に訂正され、通過タイムは2ハロン23秒20、4ハロン46秒84、6ハロン1分10秒32、8ハロン1分34秒64とされた)。
オーセンティックはアメリカンファラオと同様に、同じ年にケンタッキーダービーとBCクラシックを制した馬となった。この快挙を達成した馬は今や4頭となり、あとの2頭はサンデーサイレンスとアンブライドルドである。
オーセンティックは10月3日のプリークネスS(G1 ピムリコ)で、スイススカイダイバー(父デアデビル)との直線での大胆な競り合いの末に敗れた。スイススカイダイバーはブリーダーズカップ開催でBCディスタフ(G1)に挑んだがスタートで躓いて7着に終わり、オーセンティックほど活躍できなかった。
バファート調教師はプリークネスSで敗退を喫した後、オーセンティックの調教メニューをじっくりと練り直し、BCクラシックまでに調子を取り戻させるために必要な微調整を行うと述べていた。「これまでで彼がひどい失敗をしたのは、サンタアニタダービー(G1)とプリークネスS の2レースです。思うように彼を仕上げることができず、彼はその日に苦戦する結果になりました。しかし、私たちは彼を復活させました。素晴らしいチームに恵まれており、私たちはただオーセンティックの気合いを入れ直しただけです」。
ウィナーズサークルにヒューズ氏や共同馬主とともに現れたグスタフソン氏はこう語った。「オーセンティックが私たちに脚光を浴びせ、そして興奮や楽しみをもたらしてくれたと言うのは、あまりに控えめすぎます。延期されたケンタッキーダービーと例年どおりの日程のブリーダーズカップに参戦して、3歳でその2つを優勝できるなんてとても成し遂げられない快挙です」。
オーセンティックは通算成績を8戦6勝(2着2回)とした。その獲得賞金は619万1,200ドル(約6億5,008万円)に上る。
By Meredith Daugherty
(1ドル=約105円)
[bloodhorse.com 2020年11月7日「Authentic Wires Field to Win Breeders' Cup Classic 」]