湾岸戦争で荒廃した競走馬生産界の復興に向けて前進(クウェート)[生産]
英国・アイルランドからの輸入馬が、30年前の湾岸戦争でひどい破壊を受けたクウェートの競走馬生産界の復興に寄与している。
1990年8月から翌年2月まで続いたイラク軍の侵略により、非常に多くの馬が犠牲となった。しかし、近年の生産界再建の牽引役の1人ムフセン・アルムタイリ(Muhsen Almutairi)氏はアジア競馬会議(Asian Racing Conference:ARC 2月19日~21日にケープタウンで開催)において、クウェートには馬を守るために労を惜しまない馬主がいると述べた。
アルムタイリ氏はクウェートのファルワーニーヤ馬術クラブ(Farwaniyah Equestrian Club)の事務総長である。同クラブは第10代首長アフメド・アル・ジャービル・アッ・サバーハにちなんで名付けられた代表的な競馬場を運営している。
同氏はこう説明した。「クウェートの競馬史は長く、地元の生産界は1980年代に繁栄していました。サラブレッド競走もアラブ競走も施行されていました」。
「しかし湾岸戦争で多くの牧場が繁殖牝馬と種牡馬を失いました。それでも、馬を手放さないように最善を尽くした人々もいました。私の父はトルコから輸入したアニフ(Anif)という種牡馬を所有していましたが、その馬を7ヵ月間自宅で匿っていました」。
「解放後、私たちは馬の輸入を再開し、主にサウジアラビア・UAE・トルコからアラブ馬を輸入していました。しかしサラブレッドにも注目し、馬主と生産者はニューマーケットのタタソールズ社でも馬を購買するようになりました」。
クウェート人は2019年にタタソールズ社で合計220頭を購買し、その総額は500万ギニー(約7億6,125万円)を超えた。そして多くの馬がクウェートに渡ってきた。
クウェートへの輸入馬は2016年には82頭だった。しかし2018年には127頭に増え、そのうち18頭が英国・アイルランドから輸入されていた。ファルワーニーヤ県では年間25日の競馬開催が施行されており、出走馬(実頭数)は2016年には105頭だったが、2018年には141頭に上った。一方、国内各地にある小規模競馬場では週4日、レースが開催されている。
アルムタイリ氏はこう続けた。「この2~3年間で、ファルワーニーヤ馬術クラブは徐々に認知されてきて、政府から支援を受けるようになりました。それで頭数は増えています」。
「国際的なルールを定めようとしているので、次のステップとして他の競馬国で用いられているような馬へのレーティングを導入しようと考えています。ローカルルールを適用してローカルな競走を施行し続けるには限界があります。競馬は今では国際的なスポーツとなりました。私たちの意欲を示すために、アジア競馬連盟(Asian Racing Federation)に加盟したいと考えています」。
クウェートはすでに1つのことを達成している。昨年11月にクウェートの血統書が国際血統書委員会(ISBC)により承認されたのだ。
アルムタイリ氏はこう語った。「クウェートの繁殖牝馬はすべて評価され、私たちは今年20頭を登録しました。輸入繁殖牝馬もいるので、今年最多で25頭の仔馬が生まれることを期待しています。今後2年間においてクウェート産馬限定競走を15レース施行する予定です。これにより、馬主と生産者が質の良い牝馬を買うようになれば嬉しいです」。
ISBC副会長でありウェザビーズ社の理事であるサイモン・クーパー(Simon Cooper)氏は、ARCと同時開催されたアジア・オセアニア血統書委員会の総会において、クウェートの生産界の発展について報告した。
クーパー氏はこう語った。「特にアラブ馬に関わるクウェートの驚くべき馬遺産、そしてイラク軍の侵略により多く馬が失われたことを考えると、近年のクウェート生産界の発展はとても励みになります。家の中で馬を匿い養った話には心打たれます」。
「クウェート人は馬に夢中であり、彼らが湾岸戦争後にゼロから始めたことを考えれば、彼らが果たした進歩にはとても勇気づけられます。地元産馬への奨励策を導入することによりさらに馬の輸入が活発になることを確信しています」。
By Howard Wright
(1ポンド=約145円)
[Racing Post 2020年2月24日「Kuwait breeding and racing industries back on feet after devastation of Gulf War」]