香港チャンピオンズデーでラヴズオンリーユーとゴールデンシックスティが快挙(香港)[その他]
香港競馬シーズン最後のビッグデー、香港チャンピオンズデー(4月25日 シャティン競馬場)が開催された。新型コロナウイルスの感染防止策が取られていたものの、グランドスタンドにファンが戻ってきて素晴らしい国際的なスペクタクルが繰り広げられた。
ゴールデンシックスティは14連勝し、地元ファンに対して、なんとか優れた快挙を見せつけた。ダノンスマッシュとデアリングタクトは海外から遠征してきた陣営をがっかりさせたが、ラヴズオンリーユーが国際舞台での活躍を期待させるパフォーマンスで勝利を収め、見事にそれを補った。
また地元のジョッキー、ヴィンセント・ホー騎手は、この日施行されたG1・3競走のうち2つで勝利を挙げて主役の座を獲得した。
香港チャンピオンズデーは、大規模な競馬開催日としては今シーズン初めて一般ファンを迎えて実施された。新型コロナウイルス感染防止策により観客数は制限されていたが、香港ジョッキークラブ(HKJC)にとっては明るい兆しとなった。
HKJCのCEOウィンフリード・エンゲルブレヒト-ブレスケス氏はこう語った。「政府からの支援、HKJCへの信頼、そしてスポンサーからの支援により、ファンの皆さんに競馬場に戻ってきてもらうことができました。とりわけ日本の友人たちがHKJCの体制を十分に信頼して遠征して来てくれたことに満足しています」。
日本からの遠征馬は、クイーンエリザベス2世カップ(G1 芝2000m)で地元馬を完膚なきまでに打ち負かして1着~4着を独占し、国際舞台で活躍する本物の競走馬を作り出した。
クイーンエリザベス2世カップの序盤は、タイムワープが早くに先頭に立って同厩舎馬エグザルタントのためにお膳立てをするという筋書きにしたがって展開していた。エグゼルタントは昨シーズンの香港年度代表馬であり、このレースの前年の覇者である。
全7頭が向こう正面を走り切ろうとしていたとき、この日はエグゼルタントに勝ち目がないことが明らかになっていた。そのとき、ホー騎手がラヴズオンリーユー(牝5歳 父ディープインパクト)のエンジンをかけていた。ラヴズオンリーユーは最終コーナーを回って、ゴールに向かっているときに先頭を奪い、まったく危なげなく¾馬身差の勝利を達成した。2019年香港カップ優勝馬グローリーヴェイズが2020年最優秀3歳牝馬デアリンタクトを凌いで2着に入り、キセキは4着に終わった。
ホー騎手はこう語った。「ラヴズオンリーユーはたしかに好調ですね。残り800mの地点まで落ち着いて走っていて、その後フラットスポット(加速時にエンジンの出力がアクセルの踏み込みに応じなくなる点)に陥ったので、少し合図を送ろうと鞭を2回振ってみました。そしてもう一度促すと、彼女はゴールまでずっと素晴らしい反応を見せてくれました」。
「ゴールまであえて後ろを振り返らなかったのですが、彼女は驚異的でした。日本の関係者が騎乗を依頼してくれたことに感謝しています」。
ラヴズオンリーユーは5歳になって本領を発揮しているようだ。前走のドバイシーマクラシック(G1 3月27日 メイダン)では、ミシュリフとクロノジェネシスに次ぐ3着に入っている。優勝馬とはわずか「クビ+クビ差」だった。
岡勇策調教助手は、ラヴズオンリーユーは遠征をうまくこなすようになってきたので12月の香港カップ(G1)にも出走する可能性があるとし、「帰国後の様子を見て、調教師やオーナーと相談してみます。今後のことはそれから決めることになるでしょう。シャティンに戻ってくるという"大きな選択肢 "もあります」と語った。
デアリングタクトに騎乗した松山弘平騎手は、同馬がなぜ不発に終わったかについては言葉に窮しているとしながらも、「デアリングタクトはいつも通りいい走りをしてくれました。すごく人気していたことは知っていましたので、まず、申し訳ないと言わなければなりません。今日彼女がなぜ負けたかについては、ふさわしい言葉が見つかりません」と語った。
クイーンエリザベス2世カップがこの日のG1・3競走の中で最も激戦になると予想されていたとすれば、香港チャンピオンズマイル(G1)はゴールデンシックスティ(せん5歳 父メダグリアドロ)にとって朝飯前になると思われていた。14連勝を目指す香港の驚異的な馬に立ちはだかるのは、地元の馴染みのあるライバルだけだった。
ホー騎手がゴールデンシックスティを外に回して先行集団を追い抜かせ、他の5頭を大きく引き離して疾走したので、残り300mの地点で勝負はついたかのように見えた。しかしその数秒後、ジョアン・モレイラ騎手が騎乗していた同厩舎馬モアザンディスが急襲してきたために事態は一変した。それでもゴールドシックスティは頭1つのところで大逆転をまぬがれた。サザンレジェンドは香港調教馬だけが競ったこのレースで3着となった。
ホー騎手はゴールデンシックスティについて、「これまで追い込まれたことがありませんでしたが、自らが追い込むときだけでなく、追われる展開になっても良い勝負ができることが分かりました。これはいいことです」と語った。
フランシス・ルイ調教師は、「ゴールデンシックスティはそういう馬です。他馬を追い抜くと自分の仕事は終わったと思ってしまうのです。でも、他馬が迫ってくるのが視界に入ると、またスイッチが入りますね」と述べた。
ゴールデンシックスティは14連勝を果たしたことで、サイレントウィットネスが保持する香港レコードの17連勝にあと3勝と迫っている。ルイ調教師は、ゴールデンシックスティが5月23日の香港チャンピオンズ&チャターカップ(G1 2400m シャティン)に挑戦する可能性もあると語った。同馬はこのレースを勝てば香港トリプルクラウンシリーズを制した史上2頭目の馬となる。
ルイ調教師は、「距離は心配ないと思いますよ 。彼は何があろうと戦うような馬ですから。ただ、今回のレースでの疲れをどう回復させるかにかかっています」と述べた。
HKJCの競馬学校を卒業したホー騎手は、地元で訓練をうけたジョッキーとして初めて、香港で1日にG1・2勝を達成し、HKJCにとって大きな誇りとなった。
HKJCの競走担当専務理事のアンドリュー・ハーディング氏は、「香港ジョッキークラブは、地元の才能ある若者を発掘し育成するために深く関与し、多大な投資を行っています。なぜなら、香港に間違いなく存在する可能性を実現するために全身全霊を尽くしているからです」と語った。
香港チャンピオンズデーでの番狂わせは、チェアマンズスプリントプライズ(G1)で、日本の本命馬ダノンスマッシュが鞍上のモレイラ騎手にまったく協力しようとしなかったことだ。その代わりにアレクシス・バデル騎手が騎乗するウェリントンが終盤に先頭を奪い、1½馬身差の勝利を決めた。そしてコンピューターパッチがスカイフィールドを凌いで2着に入った。
昨年12月に香港スプリント(G1)で優勝し、高松宮記念(G1)を制してチェアマンズスプリントプライズに臨んだダノンスマッシュは、優勝馬から4馬身差の6着となった。モレイラ騎手は「残り600mの地点でまわりから圧力を掛けられ、そこで手ごたえがなくなってしまいました」と語った。
ウェリントン(せん4歳 父オールトゥーハード)は通算成績を10戦7勝とし、今や香港のスプリント路線に大きな影響を与えている。リチャード・ギブソン調教師は、香港の伝説的存在であるサイレントウィットネスとセイクリッドキングダムが、このレースを踏み台にして香港スプリント(G1)を制したことに触れ、ウェリントンにも同様の進路を歩ませようとしていると述べ、「彼には十分な休養をとらせるでしょう。12月にここでお会いしましょう」と語った。
その頃までにはおそらく、巨大なシャティンのグランドスタンドは再び満員となり、世界中の馬が競い合えるようになっているだろう。
By Bob Kieckhefer