アイルランド競馬監理委員会のCEOイーガン氏、早期退職を発表(アイルランド)[開催・運営]
デニス・イーガン氏(60歳)は、アイルランド競馬監理委員会(IHRB)のCEOの地位を退くという自らの決断は、現在高まっている議論とは何の関係もないと主張した。IHRBは、注目を浴びている深刻なドーピング疑惑に関する騒動の真っただ中にある。
イーガン氏はIHRBに26年間勤務し、そのうち約20年間はCEOを務めてきた。同氏はIHRB理事会や競馬界関係者から圧力を掛けられているということを否定している。
同氏が"ただ早期退職制度によるもの"と説明する9月末での退職の決断は、IHRBが次々と生じる議論の対応に追われている中で発表された。最新の議論は、"違法薬物の使用はアイルランド競馬界の最大の問題であり、競馬界でランス・アームストロング事件のようなことが起きるだろう"というジム・ボルジャー調教師の扇情的な発言に関するものである。
イーガン氏は本紙(レーシングポスト紙)に対して、「今回の決断は早期退職制度の条件に沿ったものであり、私自身、深く考えてきたことでもあります。現時点では、ターフクラブとIHRBでの26年間の経験を経て、他の道を追求する段階に来ていると感じています」と語った。
また、「この発表のタイミングは早期退職制度に関連しています。新しいCEOの採用活動ができる機会を与えるために、余裕を持って発表しました。そうすれば、新たなCEOは実行可能なときに指揮権を受け継ぐ心構えができます」と述べた。
ボルジャー調教師とイーガン氏は、IHRB・ホースレーシングアイルランド(HRI)・アイルランド調教師協会・農業省の代表とともに、アイルランド競馬界における薬物不正疑惑について議論するために国民議会の農業委員会に招かれていた。
ボルジャー調教師は今週、法的なアドバイスを受けて出席できないことを委員会に伝えたが、イーガン氏はその招待を受けることになるだろう。
2018年にトラモア競馬場で出走前に鎮静剤を投与されていたバイキングホード(Viking Hoard)にエクスチェンジ賭事で負けるほうに大金が賭けられていたドーピング事件では、誰がその物質を投与したのかが明らかにならなかった。そしてIHRBがその年に競馬場の監視カメラへ予算をつけていたにもかかわらず、その投資を怠っていたことが明らかになった。
IHRBのドーピング防止体制の欠点と、透明性や説明責任の欠如は、長年にわたりIHRBを悩ませていた。また、発走手順や競走距離の正確性に関連した運営上の不手際もいくつかあった。
イーガン氏は1995年に経理財務部長としてターフクラブに入り、2001年にCEOに就任した。
2018年にターフクラブがIHRBとなった際、イーガン氏は新組織のCEOとしてその移行を監督する役割を担っていた。また、IFHA(国際競馬統括機関連盟)では執行協議会のメンバーとしてアイルランド競馬界を代表し、競走当日ルール統一委員会や欧州競馬科学連絡委員会のメンバーも務めている。さらに現在、欧州競馬医療当局者グループや騎手の健康・安全・福祉のための国際会議の議長も務めている。
イーガン氏は7月1日、「アイルランドの競馬はその公正さと誠実さで、世界中からうらやましがられる評価を得ており、国内だけでなく世界中で大きな成功を収めています」と述べた。
そして、「ターフクラブ、最近ではIHRBがこの点において重要な役割を果たしてきたことを誇りに思います。現在、将来を築き成長するための強力なプラットフォームを持っており、組織を次のレベルに引き上げるために後任者に引き渡す頃合いだと、私は信じています」と続けた。
また、「ターフクラブとアイルランド・ナショナルハント・スティープルチェイス委員会のメンバー、そしてとりわけIHRBのスタッフのプロ意識と長年にわたるサポートに感謝したいと思います」と付言した。
自らもその地位を退くHRIのCEOブライアン・カヴァナー氏は、IHRBのトップであるイーガン氏はアイルランド競馬の参加者をとても大切にしていたとし、敬意を表した。
「デニスはいつもアイルランド競馬界のために一生懸命働き、競馬の参加者をとても大切にしました。彼の医療と安全の分野での取組みは国際的に評価されており、特にアイルランド競馬界にこの側面で多くの改善をもたらした点は大きな称賛に値します。彼とジェラルディン夫人には、末永く幸せな引退生活を送っていただきたいと思います」。
また、アイルランド騎手協会(IJA)の事務局長であるアンドリュー・クーナン氏は、「騎手を代表してデニス・イーガン氏とテーブルをはさんで何度も議論を戦わせましたが、どのような結果であれ、彼はいつも変わらず礼儀正しく、快く対応してくれました。私は落馬した騎手や苦境に立たされている騎手のことでよく相談していましたが、そのとき彼が示す優しさと寛大さを知っている人はそう多くないだろうと思います」と語った。
By Brian Sheerin