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海外競馬ニュース
2021年02月04日  - No.4 - 3

賭事客への経済力チェックが競馬界に甚大な打撃を与える可能性(イギリス)[開催・運営]


 賭事客に対して厳密な経済力チェック(affordability checks)を行うという提案は、無観客開催により現在受けている経済的影響よりも甚大な打撃を英国競馬界に及ぼす可能性がある。

 それは、英国ジョッキークラブのグループCEOネヴィン・トゥルーズデール氏が2月1日に発した警告である。非合法市場に押しやられた賭事客が引き起しかねない競馬の公正確保に関する懸念、そして英国競馬が国際的な競争力を失う危険性についても、同氏は言及した。

 賭事委員会(Gambling Commission)は、ギャンブル障害に対処するための措置について取り組んでいる。その措置には、1ヵ月間の賭事損失額に対してわずか100ポンド(約1万4,500円)の閾値を課し、顧客にそれ以上の損失を出しても差支えがない証拠を提供させる提案が含まれている。

 英国競馬界のリーダーたちは、チェック強化によって賭事客が馬券購入を控えるようになれば、競馬界は賦課金・メディア権料の収入減で年間6,000万ポンド(約87億円)以上を失うことになるだろうと述べていた。一方、アリーナレーシング社のCEOマーティン・クラッダス氏は、実際の損失は年間1億ポンド(約145億円)にのぼるだろうと述べていた。トゥルーズデール氏も2月1日には、6,000万ポンド(約87億円)という数字は控えめなものであるということに同意し、「それが6,000万ポンドであろうと1億ポンドであろうと、その数字はとにかく莫大なものになると言うほかありません」と語った。

 英国の競馬場は2020年に無観客開催のために2億5,000万ポンド(約362億5,000万円)以上の収入を失ったと、競馬界は見積もっている。

 トゥルーズデール氏はこう続けた。「競馬産業はコロナ禍から立ち直るでしょうから、私たちはおそらく、コロナ禍による経済的影響についてよりも、この措置による打撃をもっと気に掛けるでしょう。世界はどのようなものであれニューノーマル(新しい常態)に戻ります。ところが、この措置による影響は永遠に続くでしょう。私たちが話している数字が年率換算で競馬界に継続的な影響を与え、競馬場・競馬場の職・生産界・馬の頭数および他のすべての指標に波及効果をもたらすでしょう」。

 同氏は、競馬場メディアグループ(Racecourse Media Group)がレーシングTV(Racing TV)の視聴者を対象に実施した調査を引合いに出した。その調査では、回答者の93%が「経済力を確認するために口座収支報告書を提出することに不満である」とした。一方、5人中4人が「その規制により賭事は非合法市場に追いやられるかもしれない」と考えていた。

 トゥルーズデール氏はまた、BHA(英国競馬統括機構)との情報共有協定がない状態で賭事が違法業​​者に流れてしまった場合に生じる公正確保に関する懸念についても語った。

 「海外賭事業者、実質的な違法賭事業者は、競馬の公正確保を重大なリスクにさらす立場にあります」。

 「それに国際的な観点もあります。賦課金制度改革について私たちが議論している重要なことの1つは、他の競馬管轄区に対する英国の高額賞金の競争力です。ここでもまったく同じ論理が当てはまります」。

 「賭金の減少が賦課金やメディア権料の収入減をもたらせば、高額を維持する賞金にも影響が及ぼされ、ひいては英国競馬の国際的な競争力を危ういものにします。そして、それは生産界の国際的な競争力や英国内での投資にも影響を及ぼすでしょう」。

 競馬界は、政府による賭事法の見直しとは別にこの提案が行われていること、議会が変更を精査する機会がないかもしれないことについても懸念している。競馬団体や関係者たちは、それらの懸念について下院議員と連絡を取ってきた。それらの議員の中にはリシ・スナック財務大臣がいる。

 トゥルーズデール氏が連絡を取る地元の下院議員はドミニク・ラーブ外務大臣である。その選挙区であるイーシャー&ウォルトンにはサンダウン競馬場がある。

 トゥルーズデール氏はこう語った。「有権者としてだけではなく、ジョッキークラブのグループCEOとしてラーブ大臣に手紙を送付しました。大臣はサンダウン競馬場からも同様の手紙を受け取っていたようで、他の数人の下院議員と同様に、私たちのために賭事委員会に書簡を送付してくれました」。

 同氏は、競馬界はギャンブル障害を克服するための行動の必要性を認識していると述べたが、賭事委員会の提案は予期せぬ結果をもたらすかもしれないと注意を喚起した。

 「競馬は透明性のあるものでなければなりません。英国においてギャンブル障害が対処されなければならない問題であることはもちろん認めており、賭事法の見直しを全面的に支持しています。しかしそれは、釣り合いのとれた理に適った方法で実行されなければなりません」。

 トゥルーズデール氏は顧客情報について言及したが、それはラドブロークス社とコーラル社を所有するエンテイン社(Entain)が2月1日に発表した調査結果と一致する。

 英国各地の1,500人を対象とした世論調査において、データ共有と潜在的なプライバシー問題について懸念を感じる人は73%に上り、常連賭事客の45%が収入証明書の提出を強制されるのであれば非合法市場での賭事を考えるだろうと答えた。

By Bill Barber

(1ポンド=約145円)

[Racing Post 2021年2月1日「Affordability checks a bigger threat than Covid impact, warns Jockey Club chief」]

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