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海外競馬ニュース
2021年02月25日  - No.7 - 3

BHA、騎手への競走当日の唾液検査を計画(イギリス)[開催・運営]


 BHA(英国競馬統括機構)は、新たにフィリップ・プリンス(Philip Prince)騎手が薬物検査でコカイン陽性反応を示した状況において、禁止薬物使用について直ちに結果を出せる唾液検査の試行を展開しようとしている。

 昨年ウォルヴァーハンプトン競馬場での騎乗前に採取されたプリンス騎手の尿検体から、許容量の56倍のコカイン代謝物が検出された。懲罰委員会は2月18日、同騎手に6ヵ月間の騎手免許無効を言い渡した。

 プリンス騎手は騎手協会(PJA)を通じた声明において、ステップス・トゥギャザー薬物リハビリプログラムを受け始めたことを伝え、"失望させてしまった全ての人々と競馬界全体"に謝罪し、自らの人生の方向転換を図る決意を述べた。

 生まれつき片耳しか持たず顎に障害があるというハンデを乗り越えプロのジョッキーとなったプリンス騎手であったが、コカインの陽性反応が示される最新のケースとなった。PJAのCEOポール・ストラサーズ氏は昨年、薬物使用を減少させるために薬物検査と罰則の強化を要求していた。

 BHAは英国のメジャースポーツの統括機関として初めて、今春に唾液検査を導入しようとしている。禁止薬物が検出された騎手はアルコールの呼気検査に引っ掛かったときと同様に、その日の騎乗を控えなければならない。そして、さらなる調査もしくは懲戒処置のために、血液検査・尿検査を受けなければならない。

 BHAの最高規制責任者ブラント・ダンシー氏はこう語った。「これはわくわくするような革新的な提案です。禁止薬物の影響下で競走に参加する人々から競馬を守る私たちの能力に、大きな効果をもたらすでしょう。この提案の実現に向けて、PJAと一緒に取り組むことを嬉しく思っています」。

 「この試行が成功すれば、検査能力向上とともに競走当日の唾液検査を実施することによって、潜在的な違反者に対しての抑止力を強化しつつ、騎手に対しては"より安全に競える環境"を確約することができるようになると、私たちは期待しています」。

 プリンス騎手は11月16日、ウォルヴァーハンプトンのハンデ戦(約1400m)の前に尿検体を採取され、上司のマーク・ローナン調教師が管理するイットメイクスユーシンク(Itmakesyouthink)に騎乗して5着となった。その後、尿検体からコカイン代謝物であるベンゾイルエクゴニン(benzoylecgonine)が8,450ng/ml検出された。BHAが設けている閾値は150 ng/mlである。

 BHAは2月18日の懲罰委員会の審問で、このレベルは"心配なほど高い"と述べた。その審問において、プリンス騎手が気分を高揚させる"刺激剤"として2019年後半あたりから週に3~4回コカインを使用してきたことも明らかになった。

 プリンス騎手が薬物検査で引っ掛かることはこれまで一度もなかった。昨年7月のウォルヴァーハンプトンでの騎乗前に実施された直近の検査でも異常は見つからなかった。ローナン調教師は労働倫理と若年スタッフへの指導について記した書面において同騎手を褒め、懲罰委員会でも同騎手は立派な若者であると語った。

 プリンス騎手はこう述べた。「まず、失望させてしまったすべての人々と競馬界全体に謝罪したいと思います。そしてこの苦境において私を支えてくれた人々にお礼を言いたいです」。

 「ステップス・トゥギャザーのリハビリプログラムを受けている最中であり、このプログラムがなければまだ中毒状態にあったでしょう。競馬界に戻ること、そして中毒状態から脱して自分らしさを取り戻すことを待ち望んでいます。ようやく前向きな気持ちを取り戻し、将来に目を向けています。その将来は私にとって、少し前よりはずっと明るいものであるように思います」。

 BHAとPJAは、薬物検査とともにどのように教育と支援が実施されるか、その概略を述べた。オープンな環境が薬物使用を減少させることを望んでいるとして、ストラサーズ氏はこう語った。

 「どのような中毒症状でも恐ろしいものです。私たちは支援を要するメンバーを支えるためにいるのです。すべてのメンバーを守るためにあらゆる手を尽くすことも同様に重要です」。

 「それゆえ、まず第一に誤った決断を思いとどまらせ、中毒を進行させる機会を減らし、できる限り早い段階で支援を求めることを促す制度が必要です」。

 「検査を増やすことがそのような制度の1つの側面です。そういう理由から、PJAはこの数年、騎手により多くの検査を実施することを要求していました。私たちは提案されている唾液検査の試行についてBHAと緊密に取り組んでおり、それを大歓迎しています」。

 懲罰委員会はプリンス騎手が施行規程(K)49条に違反したと判断し、騎手免許が最初に停止された2020年11月20日から6ヵ月間の騎乗停止処分を言い渡した。すなわち、同騎手は5月19日まで騎手免許の再申請ができない。

 プリンス騎手は騎手免許の再申請の条件として、最長5年間にわたって競走当日および競技外の検査が強化される対象となるようだ。

 懲罰委員会のデヴィッド・フィッシュ(David Fish)議長は、プリンス騎手をその率直さゆえに称賛し、完全に回復することを願った。そして、「プリンス騎手が審問で全面的かつ率直に内容を認め、そして自らに損害を及ぼす意見開陳を行った勇気に、私たちは感銘を受けました。懲罰委員会はリハビリにより彼とその将来のキャリアが救われることを望んでいます」と語った。

By Peter Scargill 

[Racing Post 2021年2月18日「Instant drug testing planned as Prince is latest rider to be banned for cocaine」]

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