イングリス社メルボルンセール2日目でロードカナロア牡駒が最高価格(オーストラリア)[生産]
著名なキアロン・マー調教師はイングリス社メルボルン・プレミア1歳セールの2日目においてロードカナロアの牡駒を90万豪ドル(約7,650万円)で落札するために、国際的な影響力をもつクールモアを頼りにした。同調教師は、このセリの活況は再活性化の真っただ中にあるヴィクトリア州の生産界にとって幸先の良い兆しだと信じている。
2月28日にリトゥンタイクーンの牡駒が110万豪ドル(約9,350万円)で落札され、このセールにおいて史上2頭目の100万ドル以上の購買馬となった。その翌日の3月1日には、20頭が30万豪ドル(約2,550万円)以上で取引され、現在までに30万豪ドル以上の購買馬は合計35頭に上っている。
高額価格馬の上位10頭のうち9頭は牡駒である。3月1日の最高価格馬はロードカナロアの牡駒であり、共同で厩舎を運営するマー調教師とデヴィッド・ユースタス調教師がクールモアと共同で購買した。2州で活動する2人の調教師は、すでにクールモアのために調教しており、その中には今シーズンのナーサリーS(L)を制したアクロバット(Acrobat)がいる。
マー&ユースタス厩舎とクールモアチームは強力な協力関係をすでに築いていたので、先週末にセリ場で双方が評価したうえで、2日目の最高価格馬となるロードカナロア牡駒を共同で手に入れることに合意していた。
マー調教師はこう語った。「クラニパークの上場馬の1頭だったこのロードカナロア牡駒を見ました。彼らは上場馬を仕上げるのに素晴らしい仕事をしており、この牡駒は美しく展示されていました。気性も素晴らしかったです。彼のすぐ後ろにいた馬はふざけていたのですが、彼は全く気にせず普段どおりに過ごしていました」。
「それこそ牡駒にとってとても大切なことです。競走を続けてゆくゆくは種牡馬になってほしいと思いますが、彼にはそのために必要な特性が備わっていると考えます。馬の性格を観察すると、プレッシャーにどう対処するかをいくぶん窺い知ることができます」。
「1歳馬はまだ若くて歩いているだけですが、まず牧場で見て、そして最初にセリに上場されるときに再び見ます。さらにとりわけ人気のある馬についてはそうですが、展示されるときに様子を何度も見られます。その様子を観察すると、馬がプレッシャーにどう対処しているのかを見ることができます」。
「クールモアと協力してまたこのような牡駒を購買できたことは良かったです。これまでクールモアとはマーチャントネイビー(Merchant Navy)のような馬を手に入れてきました。他にもとても質の高い馬が数頭入厩します。マジックミリオン社のセリではラビングギャビー(Loving Gaby)の全妹を手に入れましたので、これらの馬を出走させることは素晴らしいことであり、願わくは次のクールモアスタッドS(G1)優勝馬やロイヤルアスコット開催で勝てるような馬を見つけ出せればと思っています」。
クラニパークがアローフィールドスタッドの代理で上場番号504番として上場したこのロードカナロアの牡駒は、スウィートエンブレイスS優勝馬ビリーヴユアセルフ(Believe Yourself)の初仔である。
クラニパークのリース・スミス(Rhys Smith)氏はこれまで、アローフィールドスタッドからの"1歳馬を代理で販売してほしい"という申入れを断ってきたが、2021年のセリではそれに挑戦してみることにした。
スミス氏はロードカナロアの牡駒が落札された後にこう語った。「アローフィールドスタッドのマネージャーであるポール・メッサーラ氏が数年前にコンタクトをとってきたのですが、その申入れを受け入れませんでした。しかし今年は"それは得策ではないか"と思い、決心しました」。
「彼は見事な牡駒で、早くから仕上がっています。良質の筋肉をもち、あらゆる身のこなしが適切で、素晴らしい見栄えです。かなり多い200回以上も展示を行いました。クールモアが購買したので、きっと早くから彼に勝利を狙わせ、ゆくゆくは彼を種牡馬にするのではないでしょうか」。
「彼はあらゆるチャンスをつかむでしょう。キアロンは彼にふさわしい調教師だと思います。メルボルンであろうとシドニーであろうと、2歳シーズンの前半から出走すると確信しています」。
マー調教師はさまざまな協力者とともにこれまでにキアロン・マー・ブラッドストック社名義で16頭を購買している。そして今回のセリを"とても堅実"と表現し、こう語った。
「セリの前には、宿題をしっかりしなければいけません。気に入った馬がいれば、いつも1~2回競り合いをしなければなりません」。
「ここメルボルンでは市場はつねに強力です。アローフィールドスタッドのような牧場はクラニパークを通じて上場し、そうすることでヴィクトリア州の生産界を支援します。それは素晴らしいことであり、市場は毎年ますます強力になっていると思います」。
「ヴィクトリア州では生産者も増えており、トロナドやリトゥンタイクーンのような種牡馬が供用されています。ローズモントスタッド(メルボルンの西にある一流種馬場)は拡大してより活動的になっているので、ヴィクトリア州の将来はとても明るいです」。
「ヴィクトリア州はつねに、ハンターヴァレーに次ぐ2番目の生産地ですが、毎年確実に進歩しています」。
総売上額はすでに前年同期比で20%増加している。メルボルンセールでこれまでに取引された1歳馬の総売上額は5,699万1,500豪ドル(約48億4,428万円)であり、平均価格は14万3,195豪ドル(約1,217万円 前年比11%増)である。中間価格は11万ドル(約935万円)と堅調で、売却率86%は、市場に参加した膨大な数のバイヤーからの需要の高さを示している。
イングリス社のセリ・販売担当社長のセバスチャン・ハッチ氏は3月1日夜、プレミアセールの現時点までの進行状況を"立派な2日間"と言い表した。
「カタログを見て、数頭の優良馬が上場されることは知っていましたし、明日も素晴らしい馬が上場されることは分かっています。それでも、需要が高くて入手困難な馬を求める競争の本質は素晴らしいものでした」。
「ロードカナロアの牡駒を実際に見た人は皆、とりわけ驚いていました。この美しい牡駒の父は、すでにブルーダイヤモンドS(G1)優勝馬タガロアを送り出している名種牡馬であり、母も2歳で才能を開花させる仔を送り出しています」。
「この牡駒をカタログに載せたときはワクワクしました。彼の立ち振る舞いも評価に値する見事なものでした。そのため彼を手に入れるための競り合いは熾烈なものとなりました」。
By Tim Rowe of ANZ Bloodstock News
(1豪ドル=約85円)
[Racing Post 2021年3月1日「Lord Kanaloa colt attracts big players as momentum continues at Inglis」]